▲空気入りタイヤは、スコットランドの獣医師ジョン・ボイド・ダンロップが1888年に実現。現在のダンロップがタイヤの歴史を切り開いた。写真はイメージ(「Enzo Ferrari」の標準装着タイヤ ブリヂストンの「POTENZA RE050 SCUDERIA」) ▲空気入りタイヤは、スコットランドの獣医師ジョン・ボイド・ダンロップが1888年に実現。現在のダンロップがタイヤの歴史を切り開いた。写真はイメージ(「Enzo Ferrari」の標準装着タイヤ ブリヂストンの「POTENZA RE050 SCUDERIA」)

スタッドレスタイヤは降雪の有無に関わらず履くべき!?

まだまだ寒さが続く今日この頃。首都圏ではむしろ、これからの時期に大雪に見舞われたりすることがあります。雪が少ない地域で大雪になると、ニュースで取り扱われるのが自動車用品店。慌てて「スタッドレスタイヤ」に履き替えるドライバーの映像をよく見ます。しかし、スタッドレスタイヤって、雪用タイヤではないってご存じでしたか?

スタッドレスタイヤは、路面が凍結したアイスバーンを想定して開発されました。例え雪が降っていなくても、標高が高かったり、橋の上など風を遮るところがなかったりすると、雨上がりの早朝などは道路が凍ってしまいます。そんなときにスリップを抑え、威力を発揮するんです。

道が凍結した状況で、タイヤが滑る理由は大きく分けて2つ。

(1)タイヤが発する摩擦熱によって溶けた氷や雪が路面とタイヤの間に水膜をつくるから
(2)冬の道路は温度が低く、タイヤのゴムが硬くなり接地面積が少なくなるから


結果、グリップ力が落ち、タイヤが滑りやすくなります。

しかし、この問題をスタッドレスタイヤは解決してくれます。水膜を除去する溝や柔らかくアイスバーンの凹凸にしっかりと密着するゴムを採用することで、タイヤと路面の間に水膜を入れないようにし、道路にピッタリと接地するんです。

ですので、雪の有無に関係なく、路面の温度が低く雨で道路が凍ることがある冬の季節は、スタッドレスタイヤを履いておくとより安全性が増します。

▲スタッドレスタイヤとは、その名のとおり「スタッド」がないタイヤ。「スタッド」とは「鋲」のことで、1990年以前は、タイヤ表面に金属などの滑り止めの鋲を打ち込んだタイヤが存在した(現在は法律で規制) ▲スタッドレスタイヤとは、その名のとおり「スタッド」がないタイヤ。「スタッド」とは「鋲」のことで、1990年以前は、タイヤ表面に金属などの滑り止めの鋲を打ち込んだタイヤが存在した(現在は法律で規制)

エコタイヤの秘密。どうして燃費が良くなる?

さて、次にお話しするのは最近よく耳にする低燃費タイヤ。タイヤによって、なぜ燃費が変わるのでしょうか? キーワードは「転がり抵抗」です。

転がり抵抗とは、進行方向と逆向きに働く力のこと。当然、抵抗が少ない方がタイヤはスムーズに転がるので、燃費も良くなります。そして、転がり抵抗の約9割は、路面とタイヤの摩擦熱によるタイヤの変形によるものなのです。

そう、低燃費タイヤは、簡単にいえば転がりやすいタイヤなんです。ただ転がり抵抗を抑えたら、摩擦力が軽減して濡れた路面などでスリップしやすくなります。そこで各社ともゴムをナノレベルで解析し、発熱や摩擦を抑える素材を導入。さらに、水はけの良い溝を設けることで、転がりやすいけれど滑りにくいタイヤを生み出しました。

そんな低燃費タイヤを購入する際には、日本自動車タイヤ協会が定めたタイヤラベリングが参考になります。転がり抵抗性能を「AAA、AA、A、B、C」の5段階、ウェットグリップ性能を「a~d」の4段階で表示。転がり抵抗が A以上、ウェットグリップ性能が、a~dの範囲内にあるタイヤが低燃費タイヤと呼ばれ、現在では「AAA/a」というものも発売されています。

ちなみに、俗に言われるスポーツタイヤは、地面とタイヤの接地性を高めることで摩擦力を高めたタイヤ。低燃費タイヤとは、逆の考え方です。

▲条件によるが、従来のタイヤからAAAの低燃費タイヤに変えた場合、5%前後の燃費向上が見込めるともいわれている ▲条件によるが、従来のタイヤからAAAの低燃費タイヤに変えた場合、5%前後の燃費向上が見込めるともいわれている

未来のタイヤにはパンクがなくなるかも!?

現在、パンクをしても一定距離(JAFによると時速80kmで80km程度)を走れるタイヤといえば「ランフラットタイヤ」です。日本では2001年にトヨタ ソアラにオプションで設定され、BMWなどの高級車メーカーが採用。スペアタイヤを積まなくていいので、トランクを広く使えるといった利点があります。

今後登場が期待されるユニークなものでは、ブリヂストンが発表した「エアフリーコンセプト」があります。タイヤ側面に張り巡らせた特殊なスポークが荷重を支えることで、空気の充てんが不要。空気を用いてないので、もちろんパンクもありません。超小型モビリティを用いて60km/hの走行にも成功しており、現在実用化に向けて研究が進んでいます。

車好きの皆さま、自動車の進化だけでなく、タイヤの進化にも目を向けてみるのもおもしろいと思いますよ。

▲こちらがエアフリーコンセプト。タイヤトレッド部のゴムを含め、リサイクル可能な材料を使用している ▲こちらがエアフリーコンセプト。タイヤトレッド部のゴムを含め、リサイクル可能な材料を使用している
text/コージー林田