ポルシェカイエン ▲愛車であるカイエンが収まるのは車2台分の間口をもつガレージ。その奥は1階にあるセカンドリビングとフラットにつながっている。手前には施主の希望でヤシの木が植栽された

仲間とのひとときを楽しむための場所

映画館のスクリーンに映し出された『イージー・ライダー』は、多感な少年の心を一瞬でつかんだ。

以降、Kさんはアメリカンカルチャーに憧れるようになり、いつかはハーレーを、ガレージハウスのあるライフスタイルを、と胸に抱くようになった。

都心で暮らしていた頃はなかなか叶わなかったが、約3年前に念願のガレージハウスを海の近くに建てた。

65歳を過ぎた今でも、週末はサーフボードを抱えて、歩いて海へ向かう。

長い年月の中で、モノづくりの趣味も増えた。

釣り竿、ルアー、カスタムナイフ、カヌー……ログハウス作りではテレビ番組に出演した経験もある。

「人が人を呼び、いろんな達人と巡り合え、一流のモノづくりの技を教えてもらえました」

こうした仲間の中から、今も一緒にサーフィンを楽しむ友人がたくさんできたという。

だから1階は、そんな気のおけない友を迎えるゲストハウスにしたい。

愛車はどこからでも眺められ、ハーレーはセカンドリビングにも入れたい。

そんな数多のリクエストは、設計を担当したフリーダムアーキテクツデザインの川西隆広さんと田村優美さんの2人によって、素材感と塩害対策を両立させながらカタチにしていった。

ガレージ裏には、海から上がった体を洗うシャワールームと、サーフボードを置く収納が用意された。

「もう65歳を越えたからね、楽しめるうちに楽しんでおかないと」

そう、このガレージハウスは、念願を叶えた記念碑ではなく、これからの人生を謳歌するための布石にすぎないのだ。
 

ポルシェカイエン ▲1階セカンドリビングの床と右側の壁は、格調が高く水や汚れにも強いセラミックタイル。写真右に見えるガラス張りはエタノール暖炉
ポルシェカイエン ▲中庭からも(写真手前に位置する)ガレージやセカンドリビングが見えるように全面ガラス張りに。中庭で家族や友人たちとバーベキューを楽しむことも多いそう。最近、寒い日も過ごせるようにとヒーター付きパラソルも備えた。写真奥の階段はガレージ上のテラスへと通じている

施主の希望:
いくつもの要望を融合して週末が楽しみになるガレージに

ガレージから1階リビングへハーレーが入れられるようにしたい、家のどこからでも愛車が眺められるようにしたい、中庭でバーベキューがしたいなど、たくさん要望を出しましたが、設計担当の川西さんと田村さんが上手くまとめてくれました。おかげで今でも週末が楽しみだと思える、そんなガレージハウスになりました。
 

建築家のこだわり:
ハイグレードな空間を目指して素材とディテールにこだわる

Kさんは多趣味な方ですが、ラフではなくスマートでハイグレードな生活空間にしようと考えました。1階にあるセカンドリビングの床のタイルも、半端な一片が出ないよう、見た目が美しくなるように目地割りを行い、中庭からも愛車が美しく映えるようガレージのライティングを工夫。ステンレス階段のディテールにもこだわりました。
 

ポルシェカイエン ▲家族と過ごすのは2階のリビングがメイン。7.1chのオーディオシステムを備え「音量を上げて楽しんでいる」とか
ポルシェカイエン ▲階段回りをすべてガラス張りにしたので、ガレージを覗くこともできる
ポルシェカイエン ▲外からは見えないがガレージ上や母屋の屋上にもテラスがある。「天気の良い日は、そこで朝食を食べるのが楽しみ」

■主要用途:専用住宅
■構造:木造軸組構法
■敷地面積:247.06㎡
■建築面積:124.42㎡
■延床面積:193.13㎡
■設計・監理:フリーダムアーキテクツデザイン
■TEL:0120-489-175

※カーセンサーEDGE 2020年8月号(2020年6月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
 

文/籠島康弘、写真/フリーダムアーキテクツデザイン