▲MIRAIはトヨタが世界で初めて市販した水素自動車。水素を燃料にして発電し、その電気でモーターを動かして走る。水素の満充填にかかる時間は3分程度で、走行距離の参考値は約650km(JC08モード)。価格は723万6000円(税込み) ▲MIRAIはトヨタが世界で初めて市販した水素自動車。水素を燃料にして発電し、その電気でモーターを動かして走る。水素の満充填にかかる時間は3分程度で、走行距離の参考値は約650km(JC08モード)。価格は723万6000円(税込み)

MIRAIによって開かれた水素社会の第一歩

鳴り物入りで発売されたトヨタの水素自動車、MIRAI。走行中に排出するのは水だけでCO2を排出しないことから“究極のエコカー”とも呼ばれ、水素社会の実現にむけた第一歩として注目を集めている。しかし、その一方で燃料である水素について「エコではない」といった議論も存在する。

その理由が、水素の製造方法。一般的には天然ガスや石油など化石燃料から製造するが、その過程でCO2が排出されるというのだ。そのことを考慮すると、水素自動車が排出するCO2はガソリン車のそれに近いともいわれている。

もちろん、その懸念を払拭するような技術の研究も進んでいる。福岡市では下水処理場で発生するバイオガスから水素を製造する実証実験が行われており、三菱日立パワーシステムズは温暖化ガスの排出が少ない水素タービンの実用化を進めている。

自然エネルギーでCO2排出ゼロの水素を作る

中でも、CO2を全く排出しない水素製造として期待されているのが自然エネルギーの活用だ。ドイツでは、風力発電で発生する余剰電力を使い水を分解して水素を製造するプロジェクトが進む。日本でも、川崎市と東芝が再生可能エネルギーと水素を用いた自立型エネルギー供給システムの共同実証を行うことを決めた。

このシステムは、太陽光発電の電気で水を分解して水素を製造。水素はタンクに貯蔵し、電気と温水を供給する燃料電池の燃料として活用する。水と太陽光のみで稼働できるので、災害時にライフラインが寸断された場合においても、自立して電気と温水を供給できるという。

▲宮崎市では国内最大級のメガソーラーの建設工事が着工。140万平方mの土地に太陽光パネル約30万枚を設置し、発電能力は96.2MWに達する(写真はイメージです) ▲宮崎市では国内最大級のメガソーラーの建設工事が着工。140万平方mの土地に太陽光パネル約30万枚を設置し、発電能力は96.2MWに達する(写真はイメージです)

水素の大きな利点は電気を貯蔵・持ち運びできること

太陽光などの自然エネルギーで作られた電気を水素に変換するのには、CO2ゼロ以外にも大きな利点がある。それは、貯蔵の問題だ。電気は貯蔵と輸送が難しい。東日本大震災後の節電でピーク時の電力不足が問題になったのも、電気を大量に貯蔵できないからだ。しかし、電気を水素に変換してしまえば、貯蔵も輸送ができるようになる。貯蔵している水素は酸素と反応させれば、電気に変換されるというわけだ。また、水力や風力、太陽光など自然豊かな場所で稼働する自然エネルギーによる電気を水素に換えて、必要な場所に輸送することもできる。

とはいえ、自然エネルギーによる水素の製造、そして輸送・貯蔵は簡単なことではない。経済産業省の「水素・燃料電池戦略ロードマップ」によると、CO2フリー水素の製造、輸送・貯蔵の本格化(フェーズ3)は2040年頃と見込まれている。

▲写真はトヨタの水素自動車、MIRAIの水素タンク。炭素繊維を使用して強度を高めている ▲写真はトヨタの水素自動車、MIRAIの水素タンク。炭素繊維を使用して強度を高めている

2025年にはMIRAIとプリウスが同価格帯になるかも?

現在はフェーズ1の状態だ。足元で実現しつつある燃料電池自動車の活用を大きく広げて、世界に先行する水素・燃料電池分野の世界市場を獲得することが経産省の目標だ。2020年頃にハイブリッド車の燃料代と同等以下の水素価格を実現し、2025年頃には同車格のハイブリッド車と同価格帯の水素自動車を実現することを目指しているという。

今後は、製造方法も重要になる水素。日本でもCO2フリーの水素製造の実証が始まりつつあるが、本格的に広まったときに“究極の水素社会”が実現するはずだ。

▲写真はホンダの燃料電池自動車、FCV。水素自動車の普及にはメーカー間の健全な競争も必要だ ▲写真はホンダの燃料電池自動車、FCV。水素自動車の普及にはメーカー間の健全な競争も必要だ
text/笹林司