クーペ史上、最も個性的なサイドスタイルをもつモデル!?

ハイブリッド車が話題の昨今では、クーペなど趣味性の高い車が話題に上ることはあまりありません。特に国産車は、クーペ自体ラインナップされている数も販売台数も減り、街中で見かける機会もずいぶんと少なくなりました。そうなると目が向くのが輸入クーペですが、アルファロメオ8Cやシボレーカマロなど話題の車は価格が高く、なかなか一般には手の届きにくいのが現状です。

しかし中古車なら、街中で目立ち、走りが楽しく、個性的であり、かつ100万円の予算で狙えるモデルが数多く存在します。その中で、自動車デザイン史上もっとも個性的といえるサイドスタイルをもつのが、今回ご紹介するクーペフィアット。スポーツイメージ一色のフェラーリやアルファロメオに対し、大衆車のイメージが強いフィアットが自社の名前を冠した、数少ないクーペボディの車です。

本国での生産は1994年に開始。日本へは翌1995年から正規輸入されました。当時の新車価格は345万円。ランチア デルタ インテグラーレと同じ2Lの直4DOHCターボエンジンを搭載したワングレードのみをラインナップ。駆動方式はFFで、ミッションは5MT、ハンドルは左ハンドルのみ。同社のコンパクトハッチバックであるティーポのプラットフォームを使用しています。
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1997年4月にマイナーチェンジ。エンジンが直4から直5になり、最高出力は195psから220psへアップしています。同時にタイヤを15インチから16インチへ大径化。1998年11月には右ハンドル化され、1999年3月にはブレンボのブレーキキャリパーやレカロのレザーシート、スパルコ製のストラットタワーバーを装備した特別仕様車「リミテッド」が、同年11月にはさらにメッシュグリルなどを追加した「ターボプラス」が発売されています。

クーペフィアットの最大の特徴はやはりデザイン。特に前述した、彫刻刀で削り取ったかのようなウエッジラインが目を引くサイドデザインは強烈です。このエクステリアは、デザインコンペでフィアット・チェントロ・スティーレ(社内デザインセンター)とピニンファリーナが競合。結果、現在ではBMWのデザインを手がけているクリス・バングルの手による社内デザインが採用されました。

一方で、インテリアデザインはピニンファリーナが担当。こちらも、メーター回りからサイドまでつながる外装色と同色のスチールパネルが配されるなど、実に個性的なスタイリングに仕上がっています。独創的なデザインは日本でも評価され、1995年のグッドデザイン賞金賞を受賞しています。

走行面での特性は、過給圧が高まるとぐぐっとトルクがかかる傾向があります。いわゆる「どっかんターボ」で、これはかなり好みが分かれるところ。またトルクステアの傾向が強く、ウエット路画ではホイールスピンを起こしやすくなっています。ハンドリングは切れ角が非常に少ないため、市街地での取り回しには苦労を強いられるでしょう。さらにコーナリングもかなりピーキーなので、購入前にはぜひ試乗をオススメします。ロングツアラーとしての使い勝手は上々なので、高速道路を中心に使用する人には、その点は問題ないかもしれません。
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原稿執筆時点でカーセンサーnetに掲載されているクーペフィアットの物件数は9台。最高値は128万円、最安値は39.8万円となっています。このうち、100万円以上の物件はすべて、最終仕様のターボプラス。豪華装備にこだわりがなければ、総額100万円以内で手に入れられる物件がたくさんあります。

しかし残念なのが、走行距離が5万kmを下回る物件がわずか1台しかないこと。修復歴車がないのは嬉しいところですが、年代的にセンサーなどの電装系不良が起きやすい車種なので、購入前のチェックと記録簿の確認はぜひともしておきたいところ。幸い整備料金込みの物件が多いので、気になる部分はしっかり指摘して、納車前にきっちり直してもらいましょう。

イタリアのスポーツカーといえばフェラーリやマセラティ、アルファロメオにランチアなどがあまりにも有名です。フィアットというと、どうしても大衆車のイメージがついて回りますが、その中でクーペフィアットは突然変異的に現れた超個性車。程度上々の物件を買うためには、そろそろ賞味期限が迫っています。まさに「即買い」にピッタリの一台といえるでしょう。興味をもった方は、下の検索窓に「クーペフィアット」と入力してみてください。


Text/渡瀬基樹