▲日本で初めてリトラクタブルヘッドライトを採用したトヨタ 2000GT。グリル横のライトはフォグランプです。写真は1966年のスピードトライアル“レプリカ” ▲日本で初めてリトラクタブルヘッドライトを採用したトヨタ 2000GT。グリル横のライトはフォグランプです。写真は1966年のスピードトライアル“レプリカ”

リトラクタブルの本格的な歴史はRX-7に始まりRX-7に終わる

自動車メーカーの研究開発により、毎年新たな技術や機能が生まれています。一方で歴史をひも解くと圧倒的な支持を受けながらも時代の変化とともに無くなったものもあります。新車では手に入らないので、もし今欲しいと思ったらカーセンサーで探すしかありません。

リトラクタブルヘッドライトもそのひとつ。

ヘッドライトを車体の中に格納するリトラクタブルヘッドライトにはボンネットを低くし空気抵抗を軽減できるというメリットがありました。そのため主にスポーツカーで採用され、リトラクタブルヘッドライトのスーパーカーが多かったことから“パカライ”(スーパーカーライト)とも呼ばれました。

国産で初めてリトラクタブルヘッドライトを搭載した量産車は1967年デビューのトヨタ 2000GT。ロングノーズでボンネットを思いきり低くしたため当時の法規で定められた位置にヘッドライトを装着できませんでした。そこで必要なときだけライトを出すことになったのです。

2000GTは1970年に生産終了され、その後日本車でリトラクタブルヘッドライトを採用するモデルはしばらく現れませんでした。次に採用したのは、1978年にデビューし“和製スーパーカー”と称されたマツダ サバンナRX-7です。

▲2ローターのロータリーエンジン12Aを搭載するマツダ サバンナRX-7。初代から最終型のFDまでリトラクタブルヘッドライトを貫きました ▲2ローターのロータリーエンジン12Aを搭載するマツダ サバンナRX-7。初代から最終型のFDまでリトラクタブルヘッドライトを貫きました

RX-7登場後、日本でのスーパーカーブームの盛り上がりもあり、リトラクタブルヘッドライトが本格的に普及していきます。有名なところでは三菱 スタリオン(1982年)、ホンダ プレリュード(1982年)、日産 シルビア/ガゼール(1983年)などがあります。

また、1981年デビューの3代目トヨタ セリカは1983年のマイナーチェンジでリトラクタブルヘッドライトになりましたが、それ以前は斜め上を向いたライトが使用時に置き上がるポップアップライトでした。

▲2ローターのロータリーエンジン12Aを搭載するマツダ サバンナRX-7。初代から最終型のFDまでリトラクタブルヘッドライトを貫きました ▲ジャッキー・チェンが出演した映画『キャノンボール2』で登場したことでも知られる三菱 スタリオン。ブリスターフェンダーを採用したワイドなボディラインはアメリカでも人気となりました
▲こちらはシルビアの兄弟車である日産 ガゼール。1983年に登場したS12型はシルビア、ガゼールともにリトラクタブルヘッドライトで登場しました。しかし、ガゼールは1986年で生産終了、シルビアもS13でプロジェクターヘッドライトを採用します ▲こちらはシルビアの兄弟車である日産 ガゼール。1983年に登場したS12型はシルビア、ガゼールともにリトラクタブルヘッドライトで登場しました。しかし、ガゼールは1986年で生産終了、シルビアもS13でプロジェクターヘッドライトを採用します
▲1983年、ホンダCR-Xは半分だけライトが格納されたセミリトラクタブルヘッドライトで登場。このタイプは他にいすゞ ピアッツァが採用していました ▲1983年、ホンダ バラードスポーツCR-Xは半分だけライトが格納されたセミリトラクタブルヘッドライトで登場。このタイプは他にいすゞ ピアッツァが採用していました

80年代後半になると、トヨタ カローラⅡやマツダ ファミリアエスティナ、ホンダ アコードエアロデッキなど、スポーツカー以外でもリトラクタブルヘッドライトを搭載したモデルが現れます。このライトがいかに人気だったかが伺えますね。

▲ホンダ アコードのハッチバックバージョンであるエアロデッキ。この時代は4ドアセダンのアコード/ビガーもリトラクタブルヘッドライトを採用しています ▲ホンダ アコードのハッチバックバージョンであるエアロデッキ。この時代は4ドアセダンのアコード/ビガーもリトラクタブルヘッドライトを採用しています
▲80年代後半~90年代を代表するリトラクタブルモデルといえば、89年デビューのマツダ ユーノスロードスターでしょう。2シーターのライトウェイトスポーツは世界中でヒット。98年のフルモデルチェンジでリトラクタブルライトではなくなりました ▲80年代後半~90年代を代表するリトラクタブルモデルといえば、89年デビューのマツダ ユーノスロードスターでしょう。2シーターのライトウェイトスポーツは世界中でヒット。98年のフルモデルチェンジでリトラクタブルライトではなくなりました

格納時には空気抵抗の軽減が期待されたリトラクタブルヘッドライトでしたが、一方でデメリットもありました。

「ライト使用時には大きな突起物が現れるためかえって空気抵抗が悪くなる」「ライトを動かすためのパーツが必要なので重量増に繋がる他、故障すると出し入れできなくなる(片方だけ出ている状態を“ウインク”と言いました)」「ライト使用時に歩行者事故を起こすと相手に大きな怪我を負わせる恐れがある」などがデメリットとして挙げられました。

さらに北米でライト最低地上高の規制が緩和されたこともあり、90年代中ごろからリトラクタブルヘッドライトは急速に姿を消していきます。日本車における最後のリトラクタブルヘッドライト搭載車は2002年8月まで生産されたマツダ RX-7(FD)。世界に目を向けるとシボレー コルベットが2005年にC6へとフルモデルチェンジし、リトラクタブルヘッドライトは新車市場から姿を消しました。

▲1963年のC2以来リトラクタブルヘッドライトを採用していたコルベットもC6でリトラクタブルヘッドライトを廃止。C5が世界最後のリトラクタブルモデルとなりました ▲1963年のC2以来リトラクタブルヘッドライトを採用していたコルベットもC6でリトラクタブルヘッドライトを廃止。C5が世界最後のリトラクタブルモデルとなりました
text/高橋 満(BRIDGE MAN)