【名車への道】’01 マセラティ 3200GT
2019/11/30
■これから価値が上がるネオクラシックカーの魅力に迫る【名車への道】
クラシックカーになる直前の80、90年代の車たちにも、これから価値が上がる車、クラシックカー予備軍は多数存在する。そんな車たちの登場背景、歴史的価値、製法や素材の素晴らしさを自動車テクノロジーライター・松本英雄さんと探っていく企画「名車への道」。
自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。
フェラーリとは異なる上品さを持った素晴らしいGTモデルだね
――松本さん、今回もずっと探していた車を見つけてきましたよ! マセラティ 3200GTです!
――他に似た車がないですしね。
それでいてどこか繊細な感じもある。ハイパワーユニットを収めながらも外観からはそういったそぶりを見せない。とても品がいいと思うんだよね。
――マセラティ! って感じがしますね。
それにクオーターパネルのエンボス部分。ここはデザインのアクセントにもなっているけど、ジウジアーロがデザインしたマセラティ ギブリ(*1)のクオーターパネルのオマージュが入っているのがよくわかる。デザインでダイナミックな動きを表現したかったんだろうね。
――あれ? 3200GTも確かジウジアーロの作品でしたよね?
――個性的な車ばかりですね……。
――この頃からぐっと品質が上がったっていわれてますよね? どうなんですか?
フィアット傘下以前のデ・トマソ時代(*4)のマセラティと比べるとしっかりとした作りになっているし、インテリアは近代化した感じが強くなったね。手で組み付けた生産ラインからロボットを使ったシステムに変わってエンジンルームからボディパネル、インテリアを含めてこうも変わるんだと思ったよ。
――乗った印象はどうなんですか?
3200GTは今じゃ当たり前になってる電子スロットルを使ったドライブバイワイヤーの先駆者的な存在なんだ。それにアルミ合金をふんだんに採用したサスペンションとブレンボ製のブレーキシステムと走りに関しても豪華そのものだね。四輪すべてのブレーキパッドを制御してコーナリングを助ける装置まで装着されていたんだよ。
――見た目の印象が強くて走りのイメージが確かに湧きにくい車ですよね。
例えばエンジンからディファレンシャルまで一直線状に作られていてプロペラシャフトはアルミ製。V型8気筒ユニットは車名に由来した3200㏄のキャパシティとツインターボ(ビトゥルボ)で370馬力、トルクは50kgm。すごく優秀なGTだって数字からもわかるよ。
でも、コーナーの脱出では緊張感があったね(笑)。
――実はハイテクGTなんですね。
フェラーリとは異なる上品なエッセンスを十分に含んだ素晴らしい名車になる1台だと思うよ。
■注釈
*1 マセラティ ギブリ
1992年から1997年まで発売された2代目ギブリ。当時のマセラティデザインの象徴ともいえるモデルでジウジアーロが担当。
*2 エンリコ・フミア
1948年生まれのイタリア人カーデザイナー。ピニンファリーナに在籍した時代に164、GTVやスパイダーを手がけた。
*3 ランチア イプシロン
エンリコ・フミアの代表モデルのひとつ。コンパクトモデルとは思えない贅沢な作り、そして個性的なルックスが特徴。
*4 デ・トマソ時代
いくつもの提携先を経てきたマセラティ。1975年から1990年代前半まではイタリアのデ・トマソ傘下となっていた。
マセラティ 3200GT(初代)
1998年から2001年までと短い期間で発売されたマセラティのGTモデル。フェラーリ傘下に収まって初めて発売されたモデルで、強い個性を求めるマセラティ側の要望を取り入れブーメラン型テールランプを採用した。エンジンは90度V型8気筒のツインターボで、高級GTに見合う動力性能を有していた。
【関連リンク】
※カーセンサーEDGE 2019年6月号(2019年4月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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