カーセンサーnet上には40万台以上の物件が掲載されている。物件チェックを日課とする筆者が、その中から偶然見つけた「なんだこの中古車は!!」という物件を紹介しよう!

▲今回紹介するのはこちら! 後ろから見ると、思わず「ナニコレ!?」と声を上げてしまいそうなダッジ バイパーのカスタムカーだ ▲今回紹介するのはこちら! 後ろから見ると、思わず「ナニコレ!?」と声を上げてしまいそうなダッジ バイパーのカスタムカーだ

ノーマルでも十分モンスターなバイパー

ダッジ バイパーのコンセプトカーは、1989年1月のデトロイトモーターショーにてお披露目された。

まだソーシャルメディアがない時代、ティザー広告も今ほど盛んに行われていなかった当時、バイパーのコンセプトカーはセンセーショナルに取り上げられた。

誰も見たことのないサイズ感、アグレッシブなデザイン、8L(!)V10エンジンは、当時のクライスラーのイメージを一新するものであった。

コンセプトカーはクライスラー社内の有志が、使われなくなった倉庫に集って開発が極秘裏に進められた。

プロトタイプ開発への着手は素早かった。消費者が製品化を求める声が大きかったのだ。とはいえ、この頃のクライスラーが許容できる開発資金には限度があった。

そこでクライスラーの余剰設備を最大限活用し、85名という少数精鋭で部署の垣根を越えた、巨大な会社としては異例な体制で開発が進められたという。

また当時、ランボルギーニはクライスラー傘下だったこともあって、バイパーへのランボルギーニエンジン供給が噂された。

だが、実際はランボルギーニがもつアルミ鋳造技術でシリンダーヘッドやブロックの軽量化が図られたにとどまった。

1990年5月にはプロトタイプが完成し、すぐさま市販化が決定された。発売当初は安っぽいインテリア、皆無だった安全装備など批判もあったが、クライスラーのイメージリーダーを担い、進化することを忘れなかった。

ちなみにクライスラーを率いていたボブ・ラッツは、バイパーのデビュー当初「四輪ステアリング搭載しているよ……、ドライバーのアクセル操作とも言うけどね」という名言を残していた。

そんな初代バイパーを思いっきり、圧巻のカスタマイズを施したオーナーがいたようだ。カーセンサーnetで掲載写真を見た際……、筆者は思わず唸ってしまった。

もはやカスタムされていないところはないのでは!?

▲「オリーブドラブ」に染められたこちらの物件、パッと見るだけでもかなりのカスタムが施されていることがわかる ▲「オリーブドラブ」に染められたこちらの物件、パッと見るだけでもかなりのカスタムが施されていることがわかる

カスタマイズのコンセプトは“US ARMY STAFF CAR”。

つまりは米軍スタッフの移動車両、ということだ。あくまでも移動車両であって、戦闘車両ではない、というこだわりが徹底している。

「オリーブドラブ」という、軍用車や軍服などに用いられるボディカラーにオールペイントされている。

日の当たり具合で色あいが変わっているのは、お見事。文字やマークなどはあとで取り外すこともできるカッティングシートではなく、あえてペイントされている、こだわりぶり。

「STARK INDUSTRIES」は、マーベル・コミックの“アイアンマン”が由来だろう。

ひとたび、このバイパーのステアリングを握れば、気分は主人公のトニー・スタークだ。

ボディは、ありとあらゆる場所に手が加えられているようだ。

フロントノーズは延長され、フロントノーズ下にはアルミ製のアンダーパネルを装着。

フェンダーはブリスター化され、とにかくワイドさが目立つ。

フロントフェンダーに収まるタイヤサイズは……、345/25R20インチ、リアにいたっては255/35R22インチのダブルタイヤになっているではないか!

恐らく、ダッジ ラム デューリーあたりのダブルホイールを流用しているのではないだろうか……。

▲ボンネットを上げた姿も……ただ者ではない ▲ボンネットを上げた姿も……ただ者ではない
▲こちらはカッティングシートではなく、しっかりとペイントされているようだ ▲こちらはカッティングシートではなく、しっかりとペイントされているようだ
▲極太タイヤを収めるフェンダーの張り出し方がすさまじい ▲極太タイヤを収めるフェンダーの張り出し方がすさまじい
▲なんといっても特徴的なのがリアのダブルタイヤ。超ハイパワーを受け止めるためだろうか ▲なんといっても特徴的なのがリアのダブルタイヤ。超ハイパワーを受け止めるためだろうか

まるで映画『Mad Max2』に登場した劇中車のような雰囲気は、ただただ圧巻。

リアのダブルホイールのおかげで全幅はなんと244cm! 乗用車でこれほどワイドな車、他に探してもそうそう見つかるまい。

サスペンションも強化され、もちろん、車検は改造申請したうえで正規取得しているようだ。

内装はステアリングホイールが交換されていたり、シフトノブが“スカル”になっていたりするがエクステリアと比べると……、落ち着いている(笑)。

「車両価格950万円」はたしかに、中古車相場の観点で語るなら“高い”と思ってしまうだろう。しかし、同じものを作ろうとしても、車両代を含めて950万円で収まるだろうか?

そして、どんなフェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェなどの輸入スポーツカーよりも、当該バイパーの方が注目を集めることは容易に想像できる。

当該車両を語るうえで、金額はナンセンスなのかもしれない。

ズバリ、前オーナーのカスタマイズを気に入るか否か、に尽きる。

前オーナーの想像力、こだわりにはただただ脱帽する。この車が気になった猛者はぜひ、在庫の有無をチェックしてみてほしい。

それにしても奥が深いぜ、中古車!

▲サスペンション写真の説明には「超強化サス」と記載されている ▲サスペンション写真の説明には「超強化サス」と記載されている
▲インテリアは過激な外観から想像できないほど落ち着いている ▲インテリアは過激な外観から想像できないほど落ち着いている
text/古賀貴司(自動車王国)
photo/カーセンサーnet