▲カーセンサー5月20日発売号の本誌の表紙の車はエレメント! といってもエレメントがどこにいるかわかりますか? ▲カーセンサー5月20日発売号の本誌の表紙の車はエレメント! といってもエレメントがどこにいるかわかりますか?

現在大人気のSUVだが、一昔前にもブームがあった!?

昨今、急激に街中で見かけるようになった車が「SUV」です。

背が高くてタフな車……といえば、かつては三菱 ジープやパジェロ、日産 サファリなどの、ラダーフレームというトラックのような強いシャシーをもち、道なき道を突き進む本格的な4WD車で、「RV」「クロカン(クロスカントリー)」と呼ばれて親しまれていました。
 

▲かつてのブームをけん引した人気モデルの代表は「三菱 パジェロ」。パリダカで砂漠を爆走するパジェロのすさまじさが印象的でした▲かつてのブームをけん引した人気モデルの代表は「三菱 パジェロ」。パリダカで砂漠を爆走するパジェロのすさまじさが印象的でした

また、ランドローバー レンジローバー、トヨタ ランドクルーザーなど高級なモデルもありますが、前者はやはりどことなく「男らしいタフな車」というイメージがあります。

そんなRVブーム真っ盛りの中、1994年に斬新な1台が登場し、時代が大きく変わり始めます。

それが、初代トヨタ RAV4でした。
 

▲通常の乗用車同様のモノコックボディにRVのような大きなタイヤ、高い最低地上高、アクティブな印象を与えるデザインが与えられていたRAV4は、ハンドリングも乗り心地も乗用車感覚そのもの▲通常の乗用車同様のモノコックボディにRVのような大きなタイヤ、高い最低地上高、アクティブな印象を与えるデザインが与えられていたRAV4は、ハンドリングも乗り心地も乗用車感覚そのもの

当時は「ライトクロカン」とも呼ばれ、続いて登場した初代ホンダ CR-Vとともに大ヒットとなりました。

RVのもつ悪路走破性能は、実際には日常生活ではあまり必要ではありません。

でも、どこかしら「新しい生活が始まりそう」「アクティブなことを始めたい」と思わせるRVの「キャラクター」は欲しい。そんなユーザーの思いがぴったり合ったのでした。

その後日本市場では、ご存じのとおりSUVの種類は着実に増え続け、世界各国の主要メーカーはSUVを必ずラインナップするまでになりました。

現在は、ボルボのようにSUVが販売の主力になっているメーカーもあるほどです。そのため、中古車でもSUVの台数が増加しているのです。
 

人とかぶらないSUVを探すならマーケットの「端っこ」に注目!

流通量が多い人気のSUVを選ぶと、「他の人とかぶっちゃう」可能性がものすごく高まります。

全く同じモデルと横並びになってしまった瞬間の気まずさに加え、街で何台も同じモデルを見かけることになれば、こだわって選んだのであればあるほど、何とも言えない残念さを感じるかもしれません。

人気のジャンル、または人気車ゆえの現象かもしれませんね。

ただ、人気のSUVにも「人とかぶらない」車があるのです。

車の出来は良いのに、日本市場狙いではなかったために絶対的な販売台数が少なかったモデル。またはコンセプトが斬新すぎて浮いてしまい、当時はあまり売れなかったモデルなどは、そもそも流通量が多くありません。

また、一世を風靡したような人気車でも、絶版となり年数をへたモデルも現存数は少なくなっています。

こうした人とかぶる可能性の低い希少さを増したモデルが、中古車マーケットの端っこにはたくさん探せるのです。そんな「端っこモデル」の中から見つけるSUVならば、人とかぶらないですよね。

あるんです。人とかぶらない希少性はもちろん、今乗っていたらカッコいいSUVが。しかも安く買えるモデルが!

それが、端っこモデルのSUV代表「ホンダ エレメント」です。
 

ホンダ エレメントとは……

▲エレメントは2002年に登場した、CR-Vをベースにした北米向けSUV。2.4Lエンジンを搭載した4WD。原稿執筆時点の平均価格は83万円、流通台数は約40台と安い希少車となる▲エレメントは2002年に登場した、CR-Vをベースにした北米向けSUV。2.4Lエンジンを搭載した4WD。原稿執筆時点の平均価格は83万円、流通台数は約40台と安い希少車となる

デザインもカリフォルニアなら、生産もオハイオという、純北米向けの“アメリカ車”なエレメントは、ボディの前後を樹脂で覆った“タフな道具”感が際立っています。

また、斬新な観音開き式ドア、上下に分割するテールゲート、サイドに跳ねあげられるリアシート、汚れに強い内装など「アクティブユーザーに最高な使い勝手の良さ」を備えています。

北米ではこれが高評価を得ました。2011年まで9年間も販売したロングセラー&ヒットモデルなのです。
 

北米の雰囲気と空気感がたっぷり味わえるエレメントが美味しい

しかし、当時の日本のSUV市場はまだ発展途上でした。

それゆえにエレメントはいささか「突飛な車」として捉えられてしまったのでしょう。売れ行きはあまり伸びず、販売期間も2年ちょっとで終了してしまったのです。ところがSUVブームの現在、あらためてエレメントを見ると、発売開始から18年たっています。

ですが、古くさいどころかむしろ新鮮なデザインとシンプルなコンセプト、そしてアメリカの空気をそのまま運んで来そうな存在感も備えていて、現在のSUVよりも魅力的に映ります。

ようやく時代がエレメントに追いついたのです。
 

食パンの耳のような、隅っこの美味しい中古車

なぜ表紙が食パンなの? という声が聞こえてきました(笑)。

食パンを食べる人で、耳に注目していたりこだわっている人はどれくらいいるでしょう。あまり多くはないですよね。

でも、わざわざ食パン専門店に足を運んででも、目当ての食パンを買い求める食パン好きもいるのです。

グルメな彼らは口を揃えてこう言います。

「ココの食パンは耳が美味しいんです!」

そうです! グルメたちはパンの耳の美味しさを知っているんですね。

一方中古車では、多くの人がマーケットの中央に注目しています。そこには街でよく見かけたり、TVCMで見るような人気モデルがいっぱい集まっています。

間違いなく中古車の主役、食パンに例えれば「みんなが大好き」白いふわふわの部分ですね。

ただ、一部の車好きや中古車マニアが好んで物色しているゾーンは、中央から大きく外れた中古車マーケットの端っこ。希少車が集まるそこは、まさに食パンに例えると耳の部分です。

端っこゾーンは食パンの耳のごとく一般的には注目度が低く、よほどの車好き以外はそこにあるモデルに気づくこともないかもしれません。

だからこそ、端っこモデルには人とかぶらない希少性に加え、注目度の低さから価格が安いモデルが流通しているのです。

そんな希少さと安さを併せ持ったSUVが、エレメントなのです。

だけど、残念ながらこの魅力に気づいた人の多くは、エレメントを手に入ることはできません。

なぜなら、現在の流通量は40台前後しかないのですから。

逆に手に入れられた人は、その希少性の高さから街での注目度は高いし、人とかぶることはない希少性もピカイチ、しかも安いという超美味しいモデルなのです。

つまり、「人気のSUVが欲しいけど、人とかぶるのは嫌だなぁ。しかも安く買えたらうれしいなぁ」という、人気車では決してありえない条件が整った、“美味しいモデル”なのです。

端っこモデルの美味しさを知ったみなさんならもうおわかりですね。食パンの耳の焼き印がエレメントなのです。
 

文・絵/遠藤イヅル、写真/ホンダ、三菱、トヨタ

遠藤イヅル(えんどういづる)

イラストレーター/ライター

遠藤イヅル

1971年生まれ。大学卒業後カーデザイン専門学校を経て、メーカー系レース部門のデザイナーとして勤務。その後転職して交通系デザイナーとして働いたのち独立、各種自動車メディアにイラストレーター/ライターとしてコンテンツを寄稿中。特にトラックやバス、商用車、実用的な車を好む。愛車はプジョー 309とサーブ 900。