アウディ S1▲旧型A1/A1スポーツバックのトップモデルとして2014年11月に加えられたS1/S1スポーツバック。2Lターボ×クワトロ×6速MTが搭載され、0-100km/h加速はS1が5.8秒、写真のS1スポーツバックが5.9秒

もはやRSモデルにもない、絶滅危惧種のアウディMTモデル

今年7月、EUがハイブリッドを含むガソリン・ディーゼル車の新車販売を2035年に終了する方針を打ち出した。EU内外からも異論が出るなど、その実行までは紆余曲折ありそうだが、電動化への動きは着実に、しかも力強く進んでいる。

この発表以前に電動化宣言をしたメーカーも数多く、今回取り上げるアウディもそのひとつだ。

2020年代の終わりまでには、ハイパフォーマンスセグメントのすべてを電動化(電気自動車およびハイパフォーマンス プラグインハイブリッド)する予定だという。

つまり、並外れたパフォーマンスを求めるには、もう電気なしのアウディは選べなくなるということ。それもあと10年経たずに、だ。

しかも、実はアウディの現行型モデルに、MT搭載車はラインナップされていない。すでにデュアルクラッチ式MTであるSトロニックに置き換わっていて、2017年12月のS1/S1スポーツバックの販売終了とともにMTのアウディが消滅した。

つまり、アウディをMTで操るには、現状中古車しか選べないのだ。

かつて同社の名を世界に知らしめた名車・アウディ スポーツクワトロは、2144ccの直列5気筒ターボに画期的な4WDシステムのクワトロと、5速MTが組み合わされた。その活躍で、WRCは新しい時代へと突入していった。

だからといって「昔はよかった」なんて言っているヒマはない。中古車のコンディションは年々下がっていく。つまり、賞味期限が迫っているのだ。

今回は中古車の状態的にも、価格的にもまだまだおいしく味わえそうな物件が見つかりそうな3シリーズ、6モデルを紹介。

今ならまだ間に合う! 乗れるうちにアウディの「内燃機関×クワトロ×MT車」に、乗ってみないか?

アウディMT車のラストモデル!? 今なら新車時の半額で狙える
アウディS1(初代)

アウディ S1▲スポーツクワトロの後継モデルとして、1985年シーズンから投入されたラリーマシン「アウディ スポーツクワトロS1」。その名車と同じ名が授けられた「S1」は、A1シリーズのトップモデルとして登場した
アウディ S1スポーツバック▲写真はS1スポーツバック。全長3990mmはS1と同じだが全幅が+5mmの1745mm、全高は+15mmの1440mmとなる
アウディ S1スポーツバック▲フラットボトムのステアリングやバックレストにS1の文字が刻まれたスポーツシートが備わる。日本仕様は右ハンドルのみ

アウディのエントリーモデルを担うA1/A1スポーツバック。この高性能モデルとなるS1/S1スポーツバックは、2014年11月に追加された。

A1/A1スポーツバック同様、S1が3ドア、S1スポーツバックが5ドアのハッチバックとなる。現在のところ新型A1スポーツバックにS1は、本国も含め用意されていない。

搭載されたエンジンは直列4気筒の2Lターボ。これに6速MTのみが組み合わされた。もちろんフルタイム4WDのクワトロが備わり、リアサスペンションがベース車のトーションビームから4リンクに改められるなど、サスペンションやステアリングはSモデルにふさわしいものに全面改良されている。

2Lターボエンジンは最高出力231ps、最大トルク370N・mを発揮。アイドリングストップ機構などの採用で、JC08モード燃費は14.4km/Lと、スポーツモデルながら低燃費も実現している。

また、アウディドライブセレクトにより、エンジンレスポンスや可変ショックアブソーバーの設定を変更することも可能だ。

デビュー時の車両本体価格はS1が410万円、S1スポーツバックが430万円。原稿執筆時点(2021年8月5日現在)でS1が14台、S1スポーツバックが19台見つかった。

いずれも支払総額200万円前後からと、新車時の半額ほどに値落ちが進んでいる。とはいえ、これが最後のアウディのMT車となれば、いずれ値上がりする可能性も!? お手頃になった今のうちに狙いたい。

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自然吸気の4.2L V8エンジンを6MTで操る快感!
アウディRS4アバント(2代目)/RS4(初代)

アウディ RS4アバント▲RSはレーシングスポーツの頭文字に由来。アウディの高性能モデル開発を担当するクワトロGmbH(現アウディスポーツGmbH)が手がけている、S(スポーツ)モデルよりも高性能なモデル。大きく張り出した前後のホイールアーチに255/35R19タイヤが収まる
アウディ RS4▲セダンのRS4は今のところこの1代限りと、希少モデルになっている
アウディ RS4アバント▲レカロ製シートやボトムフラットなステアリング、など、インテリアにも専用パーツが与えられている

アウディ最強モデル「RS」が日本で初めて販売されたのは2001年のこと。当時のA4アバントをベースにした超弩級のステーションワゴン、初代RS4アバントが「RS」モデルの第1弾だ。

これを継承するのが今回紹介する旧型・2代目RS4アバントで、2006年7月にデビューした。また、同時期にセダンモデルのRS4も登場した。

心臓部は最高出力420ps/最大トルク430N・mを発揮する自然吸気の4.2L V8エンジン。7800rpmで最高出力を発生、高回転までスムーズに回せる自然吸気V8を、6速MTのみで味わうというラインナップだ。

もちろん、同社の4WD「クワトロ」が組み込まれ、通常時で前60:後40(従来は50:50)と、後輪により多くのトルクを配分することで従来よりもスポーティなハンドリングを実現した。

サスペンションには四輪のダンバーを対角線上に連結して車両の姿勢変化を抑える、DRC(ダイナミック・ライド・コントロール)が装着され、ロールやピッチングが抑えられている。これは、先に登場していたRS6と同じシステムだ。

デビュー時の車両本体価格はアバントが1008万円、セダンが990万円。原稿執筆時点でアバントが5台、セダンが6台と絶滅危惧種で、走行距離10万km超もちらほら出てきた。

走行距離5万km未満で、どちらも支払総額600万円近くからという感じだ。そもそも1Lあたり100psをたたき出す自然吸気のV8エンジンというのも絶滅危惧種ゆえ、欲しい人は早めの行動をオススメする。

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今後も名車のひとつに数えられるに違いないデザインも大きな魅力
アウディ TT/TTロードスター(初代)

アウディ TT▲イタリアやフランスの車とは違う、ドイツ車らしい質実剛健さがあるものの、従来のドイツ車とは明らかに異なる丸みを帯びたデザインは、かつてドイツのモダン建築をけん引した革進的な建築の学校「バウハウス」的だと評された
アウディ TTロードスター▲TTロードスターの幌は電動ソフトトップ。1.8Lターボ×クワトロモデルのロードスターには、野球のグローブのようなシートが備わる
アウディ TT▲TTのベースはA3だが、センターコンソールのオーディオを隠す、「TT」と刻まれたアルミ削り出しのパネルが配されるなど、上質なインテリアにまとめられている

1995年のフランクフルト・モーターショーで発表されたデザインスタディモデルほぼそのままで、1998年に登場したのが初代アウディ TT。以降、アウディのデザインアイコンとして3代にわたり2020年まで生産された。

特に余計な装飾を廃した初代TTのデザインインパクトは、当時衝撃的だった。

日本にはクーペが1999年10月から、オープンカーのロードスターが2000年5月から販売された。いずれもデビュー時は最高出力225psを発生する1.8Lターボに、5速MTが組み合わされ、4WDシステムの「クワトロ」を備えていた。

2001年1月にクーペ/ロードスターどちらにもFFモデルも追加されたが、同じ1.8Lターボながら最高出力は180psに抑えられた。ただし、最初はFFモデルも5速MTのみが組み合わされた。

しかしFFモデルは、クーペが2002年10月に、ロードスターは2003年1月に6速ATに切り替わった。同時にロードスターのラインナップから4WDモデル、つまり5速MT車が外された。

さらに、2003年9月に最高出力250psの3.2Lにクワトロと6速の2ペダルMT(DSG)が組み合わされたモデルがクーペのみに追加されたが、それに伴い、クーペでも1.8Lターボ×4WD×5速MTがラインナップから外された。つまり、MTモデルは初期モデルにのみ存在した、希少モデルなのだ。

なお、生産終了間近の2005年6月に150台限定販売されたクーペの特別仕様車「クワトロスポーツ」には6速MTが与えられた。最高出力240psにチューンされた1.8Lターボにクワトロが組み合わされ、リアシートを外して50kg軽量化が図られた。専用サスペンションやタワーバーも備えた戦闘モデルだ。

デビュー時の1.8Lターボ×4WD×5速MTの車両本体価格はクーペが470万円、ロードスターが500万円。ちなみに、1.8Lターボ×FF×5速MTはクーペが390万円、ロードスターが400万円、クワトロスポーツは529万円。

原稿執筆時点でクーペのMT車が16台、ロードスターが4台見つかった。クーペは支払総額100万円以下で十分狙えるが、クワトロスポーツは200万円以上となる。一方のロードスターは、FFなら100万円以下で狙えるが、4WD(クワトロ)モデルは150万円以上の予算が必要だ。

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文/ぴえいる、写真/アウディ

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。