SUVスタイルが好きな人には理想的な乗用車

M・ベンツにとってはGクラス、GLクラス、Mクラス、Rクラスに次ぐ5つ目のSUV/クロスオーバーモデル、GLKクラス。Kとはドイツ語のコンパクトの頭文字だ。SL→SLK、CL→CLK、と同じ理屈である。日本車によって開拓されたコンパクトSUV市場。なかでもプレミアムクラスはBMW X3とランドローバーディスカバリーの独占状態だったが、プレミアムブランドの雄、M・ベンツが黙っているわけがない。満を持してのコンパクトSUVの投入となった。

日本仕様はGLK300(本国名280)のみの設定。3LのV6エンジンに7Gトロニック、そして4マチック(4WDシステム)で700万円近い価格になった。オプションを何か選んでしまうとC300アバンギャルドSとほぼ変わらない価格になる。どころか、ML350にももう一息…。名車Gクラスを彷彿とさせるスタイルはいまどき珍しく角張っていて逆に新鮮だ。写真で見るよりも実物のほうが立派に見えるが、全長は4.5mちょいと扱いやすいサイズに収まった。プラットフォームはCクラスベース。そこに専用の4WDシャーシを組み合わせてSUVクロスオーバーワゴンとした。

インテリアも、もちろん専用デザイン。最近のM・ベンツの流儀に従って、直線基調の立体的なダッシュボード回りが独特の雰囲気を醸し出している。試乗車は上級グレードのGLK300とあって、HDDナビやオーディオ、レザーシートなど欲しい装備や機能はほぼ標準で備わった。コマンドシステムももちろん標準。なお、4WDシステムの関係から右ハンドルはなく、左ハンドル仕様のみの導入となった。ワゴンとしての使い勝手も良好だ。5名乗車状態450L、後席をフォールドダウンすれば最大1550Lの積載量が確保されており、ステーションワゴンとまではいかないが、十分に使える容量と言っていい。

至って今風M・ベンツ流のライドフィールである。しなやかさの中にも適度な節目があって、がっちりとした印象だ。しかも、SUVっぽくない。デイリーユースの乗用車として模範的なCクラスの乗り味の良さを残しつつ、ただ単にSUVらしく見えるよう背を高くしてみました、という感じ。背の高い車にありがちなロールも抑えられ、不安を感じさせないのだ。SUVをドライブしていることを忘れさせるほど乗用車ライクな走りをみせる。もっとも、走り出しのときだけ、わずかにフロントがよじれる。これを消すのは物理的に難しいか。

さすがV6搭載だけあって、動力性能は申し分なし。7Gトロニックのおかげでスタート時も追い越し時も、加速フィールは極めてスムーズで力強い。かったるさなど微塵も感じなかった。角張ったスタイリングとコンパクトなサイズのおかげで、街中での取り回しもいい。Aピラー方向の視界がもう少し開けていると嬉しいが。全体的に見てCクラスワゴンと同様の実力、機能をもつオールマイティなデイリーユースカーだと言っていい。

今回登場した車、メーカーたち

M・ベンツGLK

Cクラスワゴンの背を高くしたようなしっかりした走りが特徴

ライバルの車たち

BMW X3

コンパクトで走りは3シリーズ譲りのスポーティさも漂う

ランドローバーフリーランダー2

旧型とはぜんぜん違う高級感たっぷりのコンパクトSUV

三菱アウトランダー

海外メーカーにOEM供給されているほどの実力派で三菱の稼ぎ頭

トヨタハリアーハイブリッド

動力源としてのハイブリッドシステムの可能性を見出したSUV

トヨタヴァンガード

クルーガーの実質的な後継車ですべてが上質にまとまっている

日産ムラーノ

スタイリッシュなデザインでグローバル市場をターゲットにしているSUV

フォトコレクション

写真:背の高いCクラスワゴンといっていい|試乗by西川淳

背の高いCクラスワゴンと言っていい

デイリーユースの乗用車として模範的なCクラスの乗り味の良さを残しつつ、ただ単にSUVらしく見えるよう背を高くしてみました、という感じ。背の高い車にありがちなロールも抑えられ、不安を感じさせない

写真:威風堂々としていながらコンパクト|試乗by西川淳

威風堂々としていながらコンパクト

名車Gクラスを彷彿とさせるスタイルは、いまどき珍しく角張っていて逆に新鮮に感じられる。写真で見るよりも実物のほうが立派に見えるが、全長は4.5mちょいと扱いやすいサイズに収まっている

写真:ちょっと近未来的なデザイン|試乗by西川淳

ちょっと近未来的なデザイン

最近のM・ベンツの流儀に従って、直線基調の立体的なダッシュボード回りが独特の雰囲気を醸し出している。上級グレードのGLK300とあって、HDDナビやオーディオ、レザーシートなど欲しい装備や機能はほぼ標準

写真:可倒式シートを使った自由自在な荷室|試乗by西川淳

可倒式シートを使った自由自在な荷室

ワゴンとしての使い勝手も良好だ。5名乗車状態450L、後席をフォールドダウンすれば最大1550Lの積載量が確保されており、ステーションワゴンとまではいかないが、十分に使える容量をもつ

写真:最新のコマンドシステムも搭載|試乗by西川淳

最新のコマンドシステムも搭載

センターコンソールのこのダイヤル式ボタンが、コマンドシステムを操作するデバイス。車両のあらゆることを設定できる。なお、4WDシステムの関係から右ハンドルはなく、左ハンドル仕様のみの導入となった

Report / 西川 淳