2代目日産ムラーノはFFモデル待ちが正解か? 【試乗by西川淳】
2008/11/10
初代の出来映えが良かっただけに、残念
4年でモデルチェンジは通常のサイクルだが、SUVスペシャリティカーとしては、「え?もう?」という気がしないでもない。実際、初代ムラーノのデザインは決して陳腐化していないし、今でも独特の存在感を放ったままだ。アメリカ市場メインの車(初代は9割が北米で売れた)で、日本導入が2年遅れだったことも影響しているのだろう。それほどの台数が街にあふれていないのも、古くならない要因の一つかもしれない。
さて、2代目となったムラーノは初代とまるで違う雰囲気に見えるが、実は前後のディテールデザインが大幅に変わっただけである。コンセプトはもちろん、実車のパッケージングなども基本的にはキープコンセプトと言っていい。ムラーノらしいサイドウィンドウフォルムはそのままに、従来よりもグラマラスなボディデザインを与えているが、サイズ的にはほとんど変わらず。室内も後席のニールームスペースがやや改善されたほかはほぼ同じ。
日産の最新LサイズFF用Dプラットフォーム(ティアナと同じ)こそ使っているが、3.5LのV6と日本専用の2.5Lの直4の2本立てエンジンにCVTを組み合わせることも初代から継承した。2.5Lはレギュラーガソリン対応。いずれにもオールモード4×4-iと呼ばれる日産最新の4WDシステムを搭載する。FFモデルの用意は、今のところない(北米用にはアリ)。
えぐい顔つきだけが印象に残るが、フェンダーの膨らみやスタイリッシュガラスルーフなど、ほかにも見どころの多いスタイリングである。後ろから見た雰囲気は、弟分のデュアリスとの“血のつながり”を感じるものだ。非対称形のダッシュボード、ファインビジョン方式の3眼メーター、本アルミとメッキをあしらったセンタークラスター、クルーザーのようなデッキセンターコンソールなど、インテリアイメージはスペシャリティ感いっぱい。
樹脂製の軽量バックドアはオプションで電動開閉も可能。メインスイッチオフ時には手動で開閉できるから、ラゲージルームを多用するユーザーには便利な装備だろう。また、後席は6:4分割可倒式で、レバー1つで倒すことができる。背もたれを電動で起こすことができるのも便利。荷室容量も通常時で約400Lを確保と、このクラスでは十分だ。
スペシャリティカーとしてスタイリングやインテリアを中心に磨きをかけ、実用車としての側面もより充実したものに。それが進化したムラーノだと言っていい。初代はそもそも北米市場だけを見据えて企画された車で、その大きさゆえ日本市場への導入には懐疑的な意見も多かった。が、実際に乗ってみると、さほど大きさを感じさせることもなく、意外に日本の街でも乗りこなせたものだった。それだけ、まとまりのある車だったということだ。
新しいプラットフォームをベースにしたからと言って、必ずしも車が良くなるわけではない。その乗り味は、同じ日産のデュアリスやFR系モデルと比べると、今一つまとまりにかけ、質感でも劣るものだった。まるで、ティアナの負の要素が、背を高くしたことで強調されたかのようである。
特に、V6モデルが気になった。シャーシと上屋の一体感に欠けている上、アクセルレスポンスを含め動きもちょっと粗雑だ。低速域でのドタバタとした乗り心地も何とかしたい。同じクラスで最近乗ったリンカーンMKXのほうがまだしっとりとした走りで、気持ちのいいパフォーマンスをみせてくれたように思う。
直4モデルのほうが全体的にはまだ印象が良かった。動力性能のもの足りなさこそ隠し切れないし、やや発散気味のテイストではあったけれど、静かさや乗り心地はV6よりもいい。
ひょっとすると新型ムラーノは、FFモデルの出現を待ったほうがいいのかもしれない。
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