若き父親としての責任感と、若者ならではの熱い思いを満たしてくれたのは、マツダ RX-8
2019/08/02
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
2年間で3つの若葉マークを手にしたオーナー
最初は、それがなにか気づかなかった。
取材場所に止められた、黒いRX-8に歩み寄っていく。
ん? オリジナルの端正な立ち姿のどこかに、なにやら違和感を覚える。なんだろう? と思いながら、よく見たら……。
それは、初心者マークだった。
オーナーの渡邊泰寛さんは、20歳。
助手席に座る奥さまの風香さんは中学の同級生で、後部座席のチャイルドシートの主は、もうすぐ1歳になるご長男である(この日は炎天下の取材となったので、ご実家に)。
渡邊さんは、高校を卒業するとすぐに夫になり、やがて父となり、そして子育てのために運転免許を取得して、つまりこの2年間で3つの若葉マークを手にしたことになる。
「まるで、ジェットコースターに乗っているような2年間でした」と風香さん。楽しく幸せそうな若い2人の笑顔がまぶしい。
ジェットコースターではなく、マツダのRX-8を選んだ渡邊さんは、もともとそれほど車好きというわけではなかったらしい。しかし、自分のスタイルにはこだわりがあった。
「条件はMTのスポーツタイプで、チャイルドシートを装着できること。それから、他の人とかぶらないのも車選びのポイントでした」
そんなとき、カーセンサーでRX-8と出合った。その個性的な4ドアクーペは、まさにすべての条件を満たしていた。
実用的でありながら、趣味性も満たされる車
便利さや経済性だけを優先させるなら、軽自動車という選択もあったはずである。むしろ、その方が自然のような気がしないでもない。
「軽自動車も考えましたが、新車だとそれなりに高いですしね。それなら実用的でありながら趣味性も満たされる車を中古で探そう、と」
巡り合ったRX-8は、程度のいい2005年式のタイプS。
ロータリーエンジンに特にこだわりがあったわけではない。タイプSが250psもあることさえ購入後に知った。
チャイルドシートを積めて、走りが楽しめて、人とかぶらないカッコいい車を探したら、この車にたどり着いた。斜め後ろから眺めたときのフェンダーの膨らみも気に入った。
決め手は、フルノーマルであったこと。初心者だからといって、いつぶつけてもいいような車に妥協して乗るのは嫌だった。
そして初心者だからこそ、まずはオリジナルの状態からカーライフをスタートしたかったのだ。
若き父親としての責任感と、若者ならではの熱い思い……。RX-8は、その両方を満たしてくれたのである。
「新車の軽自動車よりも、ずいぶん安く手に入れることができました。ぶつけてもいいような車は嫌だと言いながら、納車早々、お気に入りのリアフェンダーをこすっちゃいましたけど(笑)」
長い旅路には、いつも車があるに違いない
RX-8を手に入れて、MTを操りながらドライビングの面白さに目覚めた渡邊さんは、納車後数ヵ月で5000kmを走行し、さっそくマフラーを交換。次は車高調を、と密かに企んでいらっしゃる。
そんな夫を、優しく微笑みながら見つめる風香さん。
「この車は私も気に入っています。狭そうに見えるけど、後ろのドアが観音開きだからチャイルドシートの脱着がすごく楽なんですよ。なにより運転する彼の楽しそうな顔がうれしい」
「子共が大きくなったら私も免許を取って、そのときはR32型のGT-Rが欲しい!」
じつは風香さんの方は、お父さまの影響で小さな頃から車がお好きだったのだ。まさにRX-8は、そんな若い夫婦の新たな門出にぴったりだったようだ。
3枚の若葉は4枚のドアとなり、もっと大きな幸せの樹へ。
その長い旅路には、愛する家族とともにいつも車があるに違いない。
渡邊泰寛さんのマイカーレビュー
マツダ RX-8(初代)
●購入金額/約110万円
●年間走行距離/約10000㎞
●マイカーの好きなところ/斜め右後ろから見たリアビュー
●マイカーの愛すべきダメなところ/大食いでちょっとツンデレなところ
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/家族がいるけど、どうしてもスポーツカーに乗りたい! って人やロータリーエンジンに興味がある人、車をいじって楽しみたい人などいろんな人にオススメできる車だと思います
インタビュアー
夢野忠則
自他ともに認めるクルマ馬鹿であり、「座右の銘は、夢のタダ乗り」と語る謎のエッセイスト兼自動車ロマン文筆家。愛車は1万円で買った90年式のフォルクスワーゲン ゴルフ2と、数台のビンテージバイク(自転車)。
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