週末はサーキットへ! クルマだから味わえる「非日常」な世界
2017/03/31
ゴルフ、サーフィン、カメ……。趣味を始めるのに早いも遅いもない。思い立ったときがジャストタイミング。もともとクルマが好きだった埼玉県在住のG.Hさん(55歳)と東京都在住のA.Iさん(47歳)は、ひょんなきっかけからサーキットに魅入られる。ライセンスを所得した彼らは、ついにピットロードのアクセルを踏み出した。
この物語は、取材を通して聞いた実話をベースにしたもの。クルマにまつわる、人間ドラマだ。
サーキット走行が運転を繊細にする
なんて美しい場所なんだ。
初めてサーキットを訪れたとき、そう思った。有名なゴルフコースや、標高の高い尾根にあるゲレンデと同じ。そこにいて、空気を吸っただけで気分が変わった。
ひょんなことから訪れたサーキット。体験走行を受け付けていた。費用は数千円。普段着のままヘルメットもいらないというから、軽い気持ちで申し込んだ。
ピットレーンに並ぶと鼓動が高まった。テレビで見た本物のサーキット。先導車の後を追いかける。コースの幅は思っていたよりずっと広い。外側にはエスケープゾーンも広がっている。場所によってはコースの幅より広いくらい。すべてが刺激的だった。
あのときの体験は思い出すだけでも痛快で、本格的に走ってみたくなった。近所のディーラーやショップに相談すると、彼らが主催する走行会や、サーキット走行にふさわしい装備とチューニングがあることがわかった。
私が乗るトヨタ 86の場合、「AREA 86」という場がディーラーに設定されており、専門のスタッフもいる。彼らと話すたび、クルマの奥深さを思い知らされる。少しずつステップアップすることにした。
1番を争いたいわけじゃない。戦う相手は昨日の自分、先週の自分、先月の自分。あのときより、コンマ何秒速くなったのか? だから記録を付けている。ラップタイムだけじゃない。外気温、天気、タイヤの空気圧。セクションごとの通過タイムもだ。
タイヤを替えて何秒、サスペンションを替えて何秒、ひとつひとつのチューニングがタイムにどれほど影響を与えるかも確認したい。だから、クルマは一気にイジらない。
そういった情報を交換する仲間ができた。同じく86に乗っている。ショップのイベントやSNSでつながり、今ではLINEグループでも盛り上がる。そういえば社会に出てから、仕事に関係のないところで友達ができることがなくなっていた。
クルマを通して、ひとまわり以上年の違う仲間と熱くなって話したり、笑ったり。
サーキット走行は自分との戦いだけど、やっぱり友達のラップタイムも気になる。友達であり、ライバル。負けるのは正直、悔しい(笑)。
アクセルペダルを床まで踏み込む。サーキットなら誰だってペダルをベタ踏みできる。しかし、大事なのは、ペダルを目いっぱい踏むことより、どれくらい繊細に踏めるか。
今まではアクセルを踏むことをあまり意識をしたことはなかった。サーキットで走るようになって、今まで公道を大ざっぱな感じで走っていたことを痛感した。
だけど今は違う。ミリ単位の操作を意識する。ペダル操作が以前よりずっと緻密になり、クルマとの“対話”も濃厚になった。それはアクセルだけじゃなく、ブレーキも、ステアリング操作もそうだ。
ホームストレートの直線では、公道では到底経験できないスピードに達する。サーキットが広いためもあって、それほどスピード感はない。少し不思議な感覚だ。
スピードを出すより、いかに自分の思いどおりにクルマを動かすか。試行錯誤を繰り返し、自己ベストを出したときの達成感はたまらない。
「スピード狂になっちゃ嫌よ(笑)」。妻は笑っていたが、少しだけ心配そうだった。
むしろ公道でスピードを出すことはなくなった。そこに興奮することもなければ、カッコいいとも思わない。
ノンビリ走っていても濃厚になったクルマとの対話は、十分に楽しめる。今までと同じ速度で走っていても、余裕があるからか周囲への洞察力が高くなった。公道でより安全に走れている実感がある。
サーキットで運転技術を磨いたら、生活そのものが変わった。日ごろの運転もさることながら、この年になって、こんな夢中になれることができるなんて思ってもみなかった。
妻と出かける機会も増えた。「あそこに行きましょう」「こっちも良いわね」。趣味にのめり込む私を容認してくれる彼女には頭が上がらない。それは昔からだけども。
スポーツ走行を楽しむためのクルマは実はなんでもいいが……
サーキットのスポーツ走行はラップタイムを計測こそすれ、誰かと1番を争うわけではない。だから、運転技術を向上させることで、そのクルマの性能を引き出すことに醍醐味がある。とはいえ、ドライバーの意図に忠実なクルマはやはり気持ちがいい。これから選ぶのなら、打てば響くようなモデルを選びたい。
CREDIT
MAN:ジャケット3万2000円、パンツ1万6000円/ともにビクトリノックス、腕時計7万円/ビクトリノックス・スイスアーミー(ビクトリノックス・ジャパン03-3796-0951)、スニーカー7900円/ポニー(丸大052-220-5361) ※その他スタイリスト私物
MAN(ディーラーにて):スニーカー6000円/コンバース(コンバースインフォメーションセンター0120-819-217)、腕時計7万円/ビクトリノックス・スイスアーミー(ビクトリノックス・ジャパン03-3796-0951) ※その他スタイリスト私物 MAN(サーキットにて):レーシングスーツ14万円、グローブ1万8000円、シューズ2万3000円/すべてシルバーストン、ヘルメット5万6000円/アライ(ともにアールエーシー レーシングギアショップ03-5653-0770)
FRIEND:デニムパンツ1万9000円/ビクトリノックス(ビクトリノックス・ジャパン03-3796-0951) ※その他スタイリスト私物
FRIEND(サーキットにて):レーシングスーツ8万4000円、グローブ1万8000円/ともにシルバーストン、ヘルメット5万6000円/アライ(ともにアールエーシー レーシングギアショップ03-5653-0770
WOMAN:トップス6900円、カーディガン7500円/ともにマシュカシュ(GSIクレオス06-4977-6097)、スニーカー7000円/コンバース(コンバースインフォメーションセンター0120-819-217) ※その他スタイリスト私物
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