ミニ ミニクロスオーバー

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?

家族のためにミニクロスオーバーを増車

「ビートニク」という言葉がある。1950年代の保守的なアメリカの体制に異を唱え、言葉を武器に個を貫くことを求めたウィリアム・バロウズなど「ビート・ジェネレーション」のメンバーや、その思想と行動様式に影響を受けたライフスタイルを実践する者たちのことを呼び表した言葉だ。

若き日の仁科晴雄さんはビートニクならぬ「ビーチニク」を自称し、友人たちとフルサイズバンで海へ行き、1日中サーフィンをし続ける……というようなライフスタイルを送っていた。

そしてそのライフスタイルは、社会人となってからもそう大きくは変わらなかった。

当時の愛車であったダッジ バンで夏はサーフィン、冬はスノーボードにいそしみ、そして仕事はサーフィンやスケボー、スノボなど“横乗りスポーツ”用ボードの開発や販売を、それら横乗りスポーツならではのカウンターカルチャー的な側面も含めながら行う――というスタイルを長らく続けてきたのだ。

ミニ ミニクロスオーバー

だが結婚して子供が生まれ、その子供が小学1年生になって「……僕もスノボ、やってみたいな」と言うようになると、仁科さんの車選びは若干の路線変更を求められることになった。

「スノーボードをしていると、どうしても雪が深い方、深い方へと行きたくなるものなんです。でもそうすると、ダッジバンではどうしてもスタックしてしまう場面も出てきます。また、現場で車から外に出てみると猛烈に吹雪いていて、ほぼホワイトアウトみたいなこともあったりしましたし……」

自分ひとりであれば、スタックもさほど気にはならない。いやもちろん雪道でのスタックはしないに越したことはないが、「でもまあ何とかなるといえばなるから、ダッジ バンでも俺は大丈夫」というのが正直なところだった。

しかし当時まだ小学1年生だった息子氏を、スタックや故障のリスクと隣り合わせの古いバンで、猛烈な雪が降る山中へ連れて行くわけにはいかない。

ミニ ミニクロスオーバー

どこにでも行ける自由を得た

またそれだけではなく、「時間」という問題もあった。

「若い頃は、それこそ売るほどの時間がありましたから、友人連中と“ビーチニク”などと自称してバンで海へ行き、1日中サーフィンをして、バンの車内で昼寝して、腹が減ったら浜辺でBBQをする――なんて生き方ができていました」

「でも僕を含めてみんな大人になり、仕事や家庭を持つようになると、さすがに“ビーチニク”的な時間の使い方はできなくなるんですよね」

売るほどあったはずの「自分の時間」は日を追うごとに減っていき、それと反比例するかのように、仕事や家族などに対して使うべき時間が、いや使いたくなる時間が、増えていく。

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「そうなると、のんびり時間をかけて海や雪山まで行って、広い車内で昼寝して……というような車ではなく、行けるときにサッと行って、またサッと帰ってこられる車、それも『安全に、なおかつ疲労することなく往復できる車』が欲しくなってくるんです」

海ないしは雪山というフィールドを愛するマインドに変化はないが、フィールドとの接し方を変える必要性を自覚したタイミングで仁科さんがたまたま出合ったのがこの車、2014年に45台のみが限定発売されたミニクロスオーバーの特別仕様車「ジョン・クーパー・ワークス ブラックナイト」だった。

ミニ ミニクロスオーバー

「このモデルを探していたわけではなく、自動車販売業をしている友人に『仁科に向いてそうな面白いやつがあるよ』と言われ、たまたま見に行ったわけですが――これが僕にとっては本当に大正解な1台でした」

忙しい日々の中でもスピーディなフィールドへの到着を可能にする、最高出力218psのオーバーブースト機能付きツインスクロールターボエンジンと、ひたすら優秀なシャシー。

車幅を気にせず運転や駐車ができる程良いサイズ。

愛する息子氏の身の安全をおおむね保証する、高年式車ならではの各種安全装備と、機械的な信頼性。

フィールドでの確実な機動性を担保してくれるフルタイム4WDシステム「ALL4」。

そしてミニクロスオーバー ジョン・クーパー・ワークスならではの、そもそも車好き&運転好きである仁科さんの欲求を満たしてくれるシャープな運動性能と、洒落者としての仁科さんを満足させる、特別なマットブラックのボディカラー「フローズン・ブラック」。

ミニ ミニクロスオーバー

「……それらのすべてが今の自分と、自分の家族にピタリと合っているんですよね。それでも何か不満な点はあるんじゃないか、ですって? いや、何もありませんよ。あくまで今の僕にとってはですが、100点満点の車だと思っています」

“ビーチニク”を自称していた20代の頃と比べて、時間の使い方と同行者は大きく変わった。スノーボードに行く機会とモチベーションも、息子氏が「スノボをやってみたい」と言い出す前は正直、やや減っていたともいう。

だが、Black Knightすなわち黒騎士の助けを得たことで仁科さんのフィールド通いは完全復活し、そして、これからも続いていくのだ。

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ミニ ミニクロスオーバー(初代) × 全国
文/伊達軍曹、写真/田中宏幸
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仁科さんのマイカーレビュー

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●購入金額/約300万円
●走行距離/5万km
●マイカーの好きなところ/フィールドを選ばない走行性能
●マイカーの愛すべきダメなところ/特になし
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/ハンドメイド感のある車が好きな人

伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。