「きっと、あなたのココロが走り出す。」“Your Heart Will Race.”そんなテーマをもつ東京モーターショー2015の見どころとして各メーカーのコンセプトカーたちは外せない。コンセプトカーは今すぐには手に入らないけれど、今買える車たちだって、その時代時代の人々が考えた素敵な未来を具現化するために生まれてきたのだ。今回は最新のコンセプトカーがもつテーマに通ずる「今、手に入る車たち」をセレクトした。

▲躍動的なモチーフを絞り込んだキャビンや研ぎ澄まされた面室から、テーマとしている「ダイナミック」と「ソリッド」を感じられる ▲躍動的なモチーフを絞り込んだキャビンや研ぎ澄まされた面室から、テーマとしている「ダイナミック」と「ソリッド」を感じられる

徹底した空力処理とクラスを超えたクオリティ感

ヴィジヴ フューチャー コンセプトに加えて、スバルのもう1台の世界初公開となるのが「SUBARU IMPREZA 5-DOOR CONCEPT(インプレッサ5ドアコンセプト)」。2014年5月に発表された中期経営ビジョン「際立とう2020」においてスバルの新世代モデル第一弾として位置づけられた次期インプレッサのデザインをイメージした5ドアスタイルのコンセプトモデルとして公開される。

スバルのデザイン哲学である「ダイナミック&ソリッド」を本格採用した車両で、スポーティさや先進性によってドライビングに対する期待感を向上させると同時に、安心感を高める機能価値を凝縮。前後を絞り込むボディ造形と軽快な走りを予感させるフェンダー造形の採用により徹底した空力処理を施すことで、クラスを超えた価値を表現するデザインになっているという。

シンメトリカルAWDもいいけど「クワトロ」も捨てがたい?

こちらは「あくまでもデザインコンセプトを示したモデル」ということで、搭載エンジンやその他メカニズムの詳細は発表されていないが、当然ながらスバル得意のシンメトリカルAWD(左右対称のフルタイム4WDシステム)は採用するはず。次期インプレッサにおいてはその切れ味や安定感もさらに増していることが容易に想像できるわけだが、インプレッサ5ドアコンセプトはまだまだその車名どおり「コンセプト」の状態であるため、実車のそれをリアルに味わうにはまだまだ時間がかかる。

現時点でインプレッサ5ドアコンセプトに近い味わいを持つ車を探したいなら、当然ながら14年8月まで販売された「インプレッサ ハッチバックSTI」あたりを選んでおけばまず間違いはない。

……それはそれでもちろん順当な選択だが、しかし「もうちょっと待てばまったくの新型が登場する」というこの時期に、同モデルの旧型世代を買うのは少々業腹だ(腹が立つ、しゃくにさわる)という人もいなくはないだろう。

そんな人にあえて注目してほしいのが、スバルと同じフルタイム4WDでも「クワトロ」を名乗るドイツの名門アウディが作るスポーツハッチバック、具体的には旧型アウディS3スポーツバックだ。

▲アウディA3スポーツバックの高性能バージョンである「S3スポーツバック」としては旧型にあたるモデル。エンジンは最高出力256psを発生する2L直4DOHCターボ。車としての出来はもちろん1世代後の現行モデルのほうが上だが、そちらは中古車相場がまだ激高。しかしこの旧型であれば200万円前後から探すことができる ▲アウディA3スポーツバックの高性能バージョンである「S3スポーツバック」としては旧型にあたるモデル。エンジンは最高出力256psを発生する2L直4DOHCターボ。車としての出来はもちろん1世代後の現行モデルのほうが上だが、そちらは中古車相場がまだ激高。しかしこの旧型であれば200万円前後から探すことができる
▲駆動方式は当然ながらアウディお得意のクワトロシステム(フルタイム4WD) ▲駆動方式は当然ながらアウディお得意のクワトロシステム(フルタイム4WD)

スバルの「無骨」とは対極にある何かを一度味わってみるのも悪くない

旧型アウディS3スポーツバックは09年2月から13年8月まで販売された高性能ハッチバック。ベースとなった同時代のA3スポーツバックが持つ5ドアハッチバックならではの機能性と、最高出力256psを発生する直列4気筒ターボエンジンの爆発力、そして「クワトロシステム」特有の安定性を併せ持ったスーパーハッチバックだった。

外観はシングルフレームグリルやアルミ調ドアミラー、18インチホイールなどのエクスクルーシブなアイテムを装着し、内装も本革とアルカンターラが組み合わされたスポーツシートやフラットボトム形状のパドル付き本革ステアリングなど、非常に上質でありながらスポーティでもある装備が奢られている。要するに「アウディのSモデルならではの特別感」が、機能面でもデザイン面でも強調されているフルタイム4WD5ドアハッチバックなわけだ。

ほめ言葉として「無骨」であるスバル車に傾倒し、それに忠誠を誓うのもステキな話だ。しかし人生のある時期、スバル車とはある意味対極の場所にある、しかしある意味同種のフルタイム4WDシステムを採用しているアウディに「浮気」をしてみるというのも、人間の幅を広げるうえではステキな話なのではないかと思うのだが、どうだろうか。

text/伊達軍曹
photo/アウディ、V8たろう