ベントレー ターボRさすがにこのベントレーは「人生初の車」ではないが、初めての車が英国のジャガーXJだったという愛知県在住の会社員、DYさん。22歳

19歳でジャガーXJを購入。そして現在はベントレー他、数台を所有

以前、こちらカーセンサーnetにて「人生初の車が輸入車で何が悪い?」と題するシリーズ物を何話か書かせていただいた。

それはそれでまずまず好評だったと聞いているが、そのシリーズは「中高年である筆者が(妄想の中で)若者に説教する」というスタイルをとっていたため、話のキーとなるポイントが「若者がリアルに考えていること」とは微妙に、あるいは大幅にズレていた可能性もある。

「それはマズいかもしれない!」ということで今回、実際に「人生初の車として輸入車を買った若者」数人にヒアリングを敢行した。まずはこの人、現在は90年式のベントレー ターボRに乗る愛知県在住の22歳、DYさんである。

とあるイベント会場でお会いしたDYさんは、乗ってる車が車なだけに、最初は「どこかの御曹司か、もしくは株か仮想通貨で大儲けした若者か?」と思った筆者だった。

しかし、ご本人にによれば「ぜんぜん普通の家庭で育った普通の会社員で、しかも今年春からの新社会人です」とのこと。

だがDYさんの車生活は英国の「ジャガーXJ」から始まり、今となっては数えきれないほどXJを買い替え、そして現在はこのベントレー ターボRの他にジャガー XJRを所有、さらに間も無くXJ-Sが納車される予定だという。

そんなDYさんの口から、きわめてリアルな「人生初の車が輸入車で何が悪い!」の理由およびその他もろもろを語っていただくことにしよう。

「気合」さえあればたいていの問題は乗り越えられる

▲「お父さんのベントレーを借りて乗り回している裕福な家の息子さん」といった感じのビジュアルだが、このベントレー ターボRは「お父さんの車」ではなく正真正銘、DYさんが自分で買ったものだ▲「お父さんのベントレーを借りて乗り回している裕福な家の息子さん」といった感じのビジュアルだが、このベントレー ターボRは「お父さんの車」ではなく正真正銘、DYさんが自分で買ったものだ

えーとこんにちは、DYと申す者です。現在22歳ですが、19歳の頃からジャガー XJに乗っていて、僕にとっては「初めての車」でした。ジャガー XJのことは子供の頃から大好きで、高校生ぐらいからは「免許取ったら絶対買うぞ!」と思ってたんですよね。

好きになったきっかけは、自宅近所にある居酒屋の大将がある日X308(1998~2003年まで販売されたジャガーXJ)を買い、そのカッコ良さに衝撃を受けたことです。「うおっ! な、な、なんてカッコいい車なんだ! 将来は絶対アレに乗りたい!」って強烈に思ったんですよ。

そして高校生ぐらいになると「お金のこと」もある程度わかってくるじゃないですか? で、調べてみると中古のジャガー XJというのはどうやら100万円前後で買えるらしいので、「……頑張れば買えなくもないな」と確信したんです。

そのため、大学生になってからは死ぬほどアルバイトをして、無駄な出費も完膚なきまでに抑えました。それこそ白米とふりかけだけで生活するみたいな(笑)。

そしてある程度お金が貯まったところで、親に「僕は中古のジャガー XJを買おうと思ってる」と宣言したんですが、まあそれはそれは猛反対されまして(笑)。

それであきらめたかって? まさか。自分はそのとき、親にこう言ったんです。

「わかった。そこまで反対するなら、僕はすぐそこの中古車屋さんで売ってる8000円のセルシオを買うよ」

なにせ8000円のセルシオですから、当然いわゆる「ヤン車」ですよね。しかも地上最低レベルにコンディションとセンスが悪い(笑)。

「で、それを買って僕はこれからヤンキーになる、裏社会に行く。……それでいいよね?」

みたいなことを言ったら、まあ呆れたのかあきらめたのか、ジャガーを買うことを許してくれました。

要するにアレですよ、お金にしても何にしても「本当の気合」さえあればどうにかなるというのが、まず根底としてあると僕は思っています。

▲DYさんが「大好きなポイントのひとつです」というフライングBボンネットマスコット▲DYさんが「大好きなポイントのひとつです」というフライングBボンネットマスコット
▲ベントレーを購入したきっかけは、とあるジャガー系のミーティング会場でベントレーを運転させてもらえる機会に恵まれ、そのジャガーをも圧倒的に上回る上質っぷりに感動したからだという。この個体は個人間売買で購入した▲ベントレーを購入したきっかけは、とあるジャガー系のミーティング会場でベントレーを運転させてもらえる機会に恵まれ、そのジャガーをも圧倒的に上回る上質っぷりに感動したからだという。この個体は個人間売買で購入した

部品供給は国産車より輸入車の方がむしろ安心

「輸入車は、特に中古の輸入車はしょっちゅう壊れるらしいから」みたいなことを心配している同世代の人もいるのでしょうが、そこについても話は同じですね。「気合」があればどうとでもなりますよ。

正確には、気合というより「本当にそれが好きかどうか」でしょうか。

僕の場合は本当の本当にジャガーやベントレーが好きなんです。で、好きだから、メンテナス代などのためにその他いろいろの生活費用を削ることがぜんぜん苦にならないんですよ。

「……買おうかな、でもどうしようかな?」みたいに迷うということは、たぶん本当はそれがそこまで好きではないのかもしれません。その場合は、無理に買わない方がいいかもしれませんよね。その人も車も、お互い不幸ですし。

でも本当に好きならば買えばいいんですよ。買っちゃえば後はなんとかなるというか、なんとかするしかないわけで(笑)。

もう少し具体的なことを言うのであれば、「パーツの供給」に関しては、国産車より古めの輸入車の方がむしろ安心だと思いますよ。

国産車の場合は割とすぐにあちこちの部品が「欠品」になっちゃいますが、今日乗ってきたベントレーであれば「100年は部品供給を続ける」とメーカーが言ってますし、ジャガーにしても、サードパーティ製を含む数多くの部品が北米で流通してます。また、もともとの弱点をカバーする「対策部品」もたくさん出てますしね。なので、僕の場合は「国産車に乗る方がむしろ不安!」ぐらいに思っています。

会社への通勤はさすがにベントレーではなくジャガーで行ってますが、先輩や上司から嫌味を言われたりすることも特にないですよ。そもそも皆さん車に興味がないので、僕がどんな車に乗っていようがどうでもいいみたいです(笑)。

ということで、欲しくもない人に無理に勧めるつもりはまったくありませんが、もしも本当に輸入車に乗りたいのであれば、まわりの人が何を言おうが自分の意思をしっかりもって、それを買えばいいんじゃないですか? 買っちゃえば、そして「本気」であれば、あとはどうにかなりますよ。大丈夫です。

▲なめらかすぎるほどなめらかに回るベントレー ターボRのV型8気筒ターボエンジン。購入時の総距離は2.8万kmで、現在は3.1万kmとのこと▲なめらかすぎるほどなめらかに回るベントレー ターボRのV型8気筒ターボエンジン。購入時の総距離は2.8万kmで、現在は3.1万kmとのこと
▲上質なウッドとレザーがあふれているベントレー ターボRのインテリア▲上質なウッドとレザーがあふれているベントレー ターボRのインテリア
▲純正オプションだったと思しき4個の小ぶりなスコッチグラスが。もちろんDYさんが運転中にスコッチを飲むことはないが、このグラスからも、この車の生い立ちというか背景を感じてグッとくるという▲純正オプションだったと思しき4個の小ぶりなスコッチグラスが。もちろんDYさんが運転中にスコッチを飲むことはないが、このグラスからも、この車の生い立ちというか背景を感じてグッとくるという
文/伊達軍曹、写真/稲葉 真
伊達軍曹(だてぐんそう)

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。