【図説で愛でる劇中車 第14回】映画「カーズ」シリーズに登場するキャラクターのモチーフとなった車たち
2020/06/03
国内外問わず様々な映像作品(アニメも含め!?)に登場したあんな車やこんな車を、イラストレーター遠藤イヅルが愛情たっぷりに図説する不定期連載!
第14回は、2006年の初公開以来、高い人気を誇るアメリカの映画「カーズ」と、その続編に登場する「擬人化された車たち」から4台をご紹介します。
「カーズ」シリーズの登場人物は、全員擬人化された車
ピクサー・アニメーション・スタジオが手がけるディズニー映画「カーズ」シリーズ。人間が一切登場しない代わりに、車が擬人化して登場するアニメです。
2006年公開の第1作「カーズ」以降、映画3作・スピンアウト作品が多数製作されており、日本でも大ヒットとなりました。
登場するキャラの多くは、実在の車をモチーフにデフォルメを行い、フロントウインドウ部の目、バンパー付近の口、さらに車体全体の動きで、本来無機質な車に豊かな感情表現を与えています。
今回は、登場キャラから推測される、モチーフになった実際の車を描きました。
真っ赤なレーシングカーがモチーフの主人公「マックィーン」
第1作で主人公ライトニング・マックィーンは、劇中内のレース「ピストン・カップ」初優勝を狙うルーキーとして登場します。ピストン・カップは、アメリカの人気レースカテゴリー「NASCAR」の最高峰レース「ウィンストン・カップ」(映画製作時の名称)から命名したと思われます。
そのためマックィーンも、NASCARを走るパイプフレームシャシー+市販車に模したボディの純レーシングカー「ストックカー」をイメージ。でも特定の車種は存在せず、NASCARストックカーと様々なスポーツカーを掛け合わせたことで、主人公らしい抑揚あるデザインになった、とのことです。
今回の連載では実在車種に寄せるため、モチーフ車に第1作公開時2006年のNASCARストックカーで、実際に当時カーズとのコラボカラー車も出場した「シボレー モンテカルロSS」を描いてみました。
舞台がNASCARを基本とするため、登場キャラには実在したストックカーがたくさん出演します。ゼッケンNo.43番の青いレーシングカー・キング(本名ストリップ・ウェザーズ)は、ピストン・カップ最多優勝を誇ります。
モチーフとなった車は「プリムス・ロードランナー・スーパーバード」。英語版の声優を務めた「リチャード・ペティ」は、なんと実際にNo.43のスーパーバードでチャンピオンに7回も輝いたNASCAR伝説のドライバーなのです! あだ名も「キング」でした。
オンボロだけど心優しい「メーター」は、マックィーンの大親友
第1作では、勝利のみを求め自己中心的だったマックィーンが、多くの友人に触れて成長する姿が描かれます。彼を変えた一人が、「メーター」です。
ボンネットフードも失い、元色がわからないほどサビサビのレッカー車ですが、マックィーンの良き理解者・大親友としてシリーズ内で大活躍します。
メーターの元になった車種については諸説ありますが、キャブやライトまわりの造形から察すると、1955年から1959年に販売されたシボレーのピックアップトラック「タスクフォース」シリーズのようです。
カーズシリーズのキャラを実在車で再現することは本場アメリカでもよく行われていますが、メーターはタスクフォースをベースに改造されていることが多いです。
マニアックな車種もモチーフに ツウも唸らされる車種選択
前述の「キング」が実在の名ドライバーと車をモチーフにしていたように、カーズシリーズは車好きも唸らせます。
2011年公開の続編「カーズ2」では、敵役としてザンダップ教授率いる「レモン・ファミリー」が暗躍しますが、ザンダップ教授とその手下たちのモチーフがこれまたマニアック。映画作っている人、車好きなんだろうなあ!
ザンダップ教授は「前後対称」というすごい設計の「ツェンダップ ヤヌス」、手下の一人グレムは「AMC グレムリン」、エーサーは「AMC ペーサー」がモチーフです。いずれも今はなきメーカーのマニアックな車種ばかり。
ちなみに「レモン・ファミリー」のレモンとは英語で「粗悪品、故障・欠陥品」の意味ももちます。そんな認定を劇中でされてしまっていますが(涙)、グレムリンは、斬新なテールエンドが特徴の小型車(といってもエンジンは3L以上あった)で、1974年には17万台を売るヒット車でした。
ペーサーは本来ロータリー・エンジンを積む予定だったモデル。大きな窓の画期的なデザインを誇りました。なお、それが災いして販売は苦戦しました。なお、日本語版では「レモン」ではなく「故障=胡椒」をもじった「ペッパー」に変わっています。
マイナー車からスポーツカーなど、登場キャラは他にもいっぱい
この他、カーズシリーズには数え切れないほどたくさんのキャラが設定されています。
実在のレーサーやレーシングカー、シボレー インパラ、ポルシェ 911(996)、フィアット 500、VW タイプ2、マツダ MX-5ミアータ(ユーノス・ロードスター)、ウイリス ジープ、アストンマーチン DB9などモチーフは様々。消防車、トラクター、コンバインや架空のレーシングカーや車も数多く登場します。
マーキュリー コロニーパーク、ダッジ ダートやA100バンなど、アメリカ車ファンならうれしい車も出てくるのは、アメリカ製作の映画らしいポイントです。
現在もなお、ミニカーなどの玩具が売られているカーズシリーズ。続編製作の予定は今のところないということですが、今後に期待して待ちたいと思います。そのときはどんな車がモチーフになるのでしょうか。
イラストレーター/ライター
遠藤イヅル
1971年生まれ。大学卒業後カーデザイン専門学校を経て、メーカー系レース部門のデザイナーとして勤務。その後転職して交通系デザイナーとして働いたのち独立、各種自動車メディアにイラストレーター/ライターとしてコンテンツを寄稿中。特にトラックやバス、商用車、実用的な車を好む。愛車はサーブ900、VWサンタナほか実用的な車ばかり。
【関連リンク】
日刊カーセンサーの厳選情報をSNSで受け取る
あわせて読みたい
- 車は自宅の拡張スペース? ラゲージ活用が車所有のメリットに【中古車購入実態調査】
- 中古車選びは最新が最良!? 年式へのこだわりは減少傾向に【中古車購入実態調査】
- 世界耐久選手権のチャンピオン争いも佳境! 最も強く、最も速いマシンはどれだ!?【EDGE Motorsports】
- サーキット民が増加中!? 中古車で手軽にスポーツ走行を楽しもう!【中古車購入実態調査】
- 不人気だったモデルが人気者に!? 最新最高に捉われない選択が可能な中古車市場【中古車購入実態調査】
- 車中泊需要も関連商品購入も増加中! 日常の延長で手に入る自由な世界【中古車購入実態調査】
- 乗りたい車は乗れるうちに! 乗り替えに対する意識が全世代で変化中【中古車購入実態調査】
- SUV人気はアウトドアブームと相関しない? 日々の生活でも大活躍な車に変身中!【中古車購入実態調査】
- 走行距離の短さを重視する人が減少傾向! 若者ほど気にせず欲しい車を選ぶ!?【中古車購入実態調査】
- “最後” V8自然吸気エンジン【カーセンサーEDGE 2024年6月号】