▲チンクが100%我儘。そのイメージでチンクXを語ると、良さがうまく伝わらない。とはいえ国産ハイブリッド車のような分かりやすさもなく、日本向け装備が充実しているわけでもない。そういう意味ではチンクの半分程度に我儘。イタ車好き以外の方にも、ぜひ ▲チンクが100%我儘。そのイメージでチンクXを語ると、良さがうまく伝わらない。とはいえ国産ハイブリッド車のような分かりやすさもなく、日本向け装備が充実しているわけでもない。そういう意味ではチンクの半分程度に我儘。イタ車好き以外の方にも、ぜひ

チンクライクかつ実用性も高い500X

「でっかいチンクなんでしょ」、と思わせるのがこの車のミソかもしれないが、実際に乗ってみれば、これが実によくできた実用車なので、なんだか“チンク”につきまとうニッチなイメージがかえってもったいない。

よくできた“普段着”だと思う。先進装備や環境性能の最新性ばかりを競うのではなく、身のこなしやオシャレを背伸びせずに楽しみながら、ありきたりの日常をカラフルにしてくれる。そんな感じ。昔から日本でイタリア車(およびフランス車)に乗る意味ってそういうことだったわけで、この500Xでなら、以前ほどの気合いを入れなくても、また、500(チンク)ほどの限定的なユーザープロフィールでなくても、誰もが気軽にチャレンジできる。そういうわけだから、“チンクのでっかいの”というイメージがかえって邪魔だと思った次第。“チンクの世界観をもった使える車”というならまだしも……。

それから、流行りだからといってSUVに括ってしまうことにも違和感があった。最低地上高はハッキリ高く、四駆もあって、ジープが親戚(レネゲードと兄弟)、というから、フィアット初のスモールSUVと謳いたい気持ちは分かる。分かるけれども、この車には流行のスモール&コンパクトSUVに特徴的な強面で威圧的な印象がまるでない。ミニクロスオーバーと同様、“偉大な弟分の世界観をもったファミリーカー”いう魅力が優る。

だからというわけではないが、個人的には見た目より乗用車ライクなFF系グレードで性能的にも十分だと感じた。骨格がかっちりとしていて機敏に動くというチンク感覚を少なからず残しつつ、総合的な性能は完全にグローバルレベル。イタ車好き・欧州車好き以外にもオススメできる1台だ。

▲4WDのクロスプラスに加え、6速デュアルクラッチを積む2WD(FF)の2モデルをラインナップ ▲4WDのクロスプラスに加え、6速デュアルクラッチを積む2WD(FF)の2モデルをラインナップ
▲ピラー上の音響ディフレクターをはじめ、吸音材を多用し室内の静粛性を大幅に高めた ▲ピラー上の音響ディフレクターをはじめ、吸音材を多用し室内の静粛性を大幅に高めた
▲エントリーグレードのポップスター以外にはレザーシートを装着。500のロゴをあしらった ▲エントリーグレードのポップスター以外にはレザーシートを装着。500のロゴをあしらった

【SPECIFICATIONS】
■グレード:Cross Plus ■乗車定員:5名
■エンジン種類:直4SOHCターボ ■総排気量:1368cc
■最高出力:170/5500[ps/rpm]
■最大トルク:250/2500[N・m/rpm]
■駆動方式:4WD ■トランスミッション:9AT
■全長×全幅×全高:4270×1795×1625(mm) ■ホイールベース:2570mm
■車両重量:1460kg
■車両本体価格:334.8万円(税込)

text/西川淳 photo/向後一宏