▲この車、なんだか分かる? チェイサー? パルサー? 否、初代ボルボ V70XCなのだ! ▲この車、なんだか分かる? チェイサー? パルサー? 否、初代ボルボ V70XCなのだ!

車選びには人それぞれストーリーがある

絶版、中古を含めると星の数ほどもある車のバリエーション。だから買い替えるときは普通、数多ある選択肢の中からデザインや性能の好みで選ぶものだけど、今回のワタクシが体験したのは「その1車種しかあり得なかった!」という話。

一見、奇妙なストーリーではあるんだけど、同じような体験した人、結構いるんじゃないの? って思います。

経緯をお話しますと、引っ越したんですよ、前居と同じ市内から。以前からマンション住まいで、今回も同じ。

なんで引っ越したのか、理由はいろいろあったんだけど、大きな変化のひとつが「1戸につき1台分の駐車スペースが付いていた」ことでした。

ここで、聡明な読者の皆さんならピンと来たことでしょう。そう、併設の駐車場が機械式立体型で、止められる車のサイズに制限があったのです。

ズコッ! そんな理由? とおっしゃらず、最後まで聞いていただければ幸いです。

その駐車場に収まるサイズは全長5000mm以下、全幅1800mm以下、全高1550mm以下。ひと昔前の機械式駐車場では一般的な寸法ながら、これが選択肢を極端に狭めてくれました。

当時、ワタクシが乗っていたのは1983年式の三菱 パジェロ スポーツターボという激シブなやつです。車自体は超気に入ってたのだけれど、高さが。

そのうえ以前から妻には「子供いるのに2シーターとか意味分かんないし!」と軽蔑されてたし(軽量化のため後席外してました)、せっかく駐車場付いてるのに月極を借りるのもアホなので、買い替えることにしたのです。
 

▲機械式駐車場に入る車のサイズはかなり限定的。5ナンバーサイズでもトールワゴンだと頭がつかえる。軽でもジムニーはNG! ▲機械式駐車場に入る車のサイズはかなり限定的。5ナンバーサイズでもトールワゴンだと頭がつかえる。軽でもジムニーはNG!

もちろん、予算なんかないよ! あるわけないじゃん、だって引っ越しのもろもろで出費がスゴイんだもの。できればパジェロの下取り(この年式でもわずかながら値段が付いちゃうのが四駆のすごいところ)+アルファ程度でなんとかしたいっ、否、せざるを得ない!

かなり厳しい条件であることは承知してます、だけれども何でもイイってわけじゃありません。ワタクシがこだわった条件はコチラ!

・4WDであること(仕事柄、雪道とか林道とか結構走るし)
・荷物がいっぱい積めること(キャンプとか波乗りとかするし)
・ある程度、ロードクリアランスがあること(極端な悪路走破性はなくてもいいけど、河原とか走ることあるし)

 

ポジティブな消去法から導き出された理想の1台

まあ、この条件を満たしている車をフツーに考えると、SUVになるわけです。

元本格四駆専門誌の編集者という肩書きはともかく、四駆のマルチパーパスな能力はこれまでの経験から身に染みついていて、もはやナシでは生きられない体になっているのです。

ところが、全高1550mmに収まる四駆なんて存在しない。車高低めのSUVだって1700mmくらいはあるから……。

そこでボク、思い出しました、ハイトワゴンというカテゴリーがあったことを。今では、軽自動車を思い浮かべる人が大多数でしょうが、かつては、AMC イーグル ワゴンに始まり、レガシィ アウトバック(グランドワゴン、ランカスター)、ステージアAR-Xなど。ステーションワゴンの車高をちょっとだけアップした派生モデルで、1990年代~2000年代初期にはかなりのバリエーションがありました。

しかしクロスオーバーSUVの台頭に伴い、カテゴリーそのものが消滅。今でも残っているのはアウディ A4オールロードクワトロくらいでしょう。こうしたカテゴリーも含めて、幅広いモデルから選べるのは、中古車の特権ですね!

ということでカテゴリーは決まったけど、予算はない。すると低年式になるのは必至。極端に年式が古くて、走行距離が進んでる場合、国産車より輸入車の方がクタビレ感が少ない(あくまで主観。もちろんメンテ次第ではある)ってことで、輸入車から候補を選びました。

でも、これがまた少ない。輸入車ってだいたい、全幅が広いんだもの。

……あれもダメ、……これもダメ、と削除していくうち、最後にたったひとつ残った選択肢が、初代ボルボ V70XCという超マニアックな車だったのです。
 

▲V70をベースに、フロントの車高を25mm、リアを35mm高くしたのがXCというモデル。ベース車との違いは他に、フロントグリルやバンパー、ツートーンのカラーリング、リアのダンパーにレベルコントロールが付いていたりなど ▲V70をベースに、フロントの車高を25mm、リアを35mm高くしたのがXCというモデル。ベース車との違いは他に、フロントグリルやバンパー、ツートーンのカラーリング、リアのダンパーにレベルコントロールが付いていたりなど

消えたカテゴリーにもデキの良い車はあるのね

1997~2000年のわずか2年間しか製造されなかった、なかなかのレアモデル。現行車だった当時、ワタクシはすでにこの業界に入っていましたが、今では完全に存在を忘れておりました(;。;)。

だって存在感が薄かったから。ベースモデルとなったV70と車高の違いはわずか25~35mmしかないし、見た目はチェイサーをワゴンにしたみたいで輸入車感ゼロだった。

でも状況が変われば、同じ車も違って見えるもの。角張ったスタイリングは現在でこそ新鮮に見えるし、当時は意味分かんなかった微妙な車高も、この数cmの差が活動範囲を広げるのだよ、と納得できる。

もはや、“オレのために生まれてきた車”としか思えなかった。見つけたときは本気でそう感じたのです!

でも、こんなレアモデル、さすがのカーセンサーでも載ってないでしょ? とダメ元で探し始めたら、ソッコーで見つかった奇跡! すぐに買いに走りました。

1999年式でボディカラーはエメラルドグリーンパール。外装や内装は年式が年式だから確かにボロイけど、走りには意外にもシャッキリ感が残ってる。もともとがユッタリした乗り味なので、そんなに疲労感を感じないし。

2.5Lターボについても、まあまあ力強くて不満ありません。一般道での平均燃費6km/L以下ってのはちょっと引いたけど、そもそも今まで燃費のいい車に乗ったことないから。

荷物は大量に積めるし、家族全員がちゃんと同乗できるようになったから、妻も子供も大満足です。
 

▲うまい具合にスッポリ収まった。というか、この車格でギリギリ。ちなみに同じV70XCでも後継モデルは幅と高さがオーバーしてしまう ▲うまい具合にスッポリ収まった。というか、この車格でギリギリ。ちなみに同じV70XCでも後継モデルは幅と高さがオーバーしてしまう

正直、スカンジナビアな香りは全然しないけど、車全体としてのデキは悪くないです。

現在ではクロスオーバーSUVにポジションを譲ったハイトワゴンだけれど、荷物がいっぱい積める、乗用車感覚で多少の不整地も走れるという長所は他にない魅力! ということに、この車に乗ってあらためて気づかされました。

さてこの記事、2018年5月に執筆しておりますが、実は乗り替えてから約1年たっとります。

これまでタイヤを新品に換えたり、オルタネーターとバッテリーを交換したけど、走行不能になるような致命的トラブルはなし。この年式にしたら上出来でしょ。

古いだけにこれからもトラブルは出ると思うけど、ちょっとずつ直しながら、購入時よりも良いコンディションにもっていけるのも中古車の醍醐味ですな(本当か?)。ということで、マンションに暮らすアウトドア派の方には、ハイトワゴンをオススメしますっ、という話でした!?
 

▲4WD機構はFFをベースとしたビスカスカップリング方式(ハルデックスじゃないよ)。当時のボルボとしては新しい機構だった ▲4WD機構はFFをベースとしたビスカスカップリング方式(ハルデックスじゃないよ)。当時のボルボとしては新しい機構だった
▲ベースモデルとの車高の違いをアピールするため、当時の広報用写真はローアングルが多め。たった数cmの違いだけど、河原や深雪路では走破性能に大きな差が出よう ▲ベースモデルとの車高の違いをアピールするため、当時の広報用写真はローアングルが多め。たった数cmの違いだけど、河原や深雪路では走破性能に大きな差が出よう
▲コントラバス(だよね、違う? 誰か詳しい人!)も積めちゃう長大な荷室は何といっても魅力的! ▲コントラバス(だよね、違う? 誰か詳しい人!)も積めちゃう長大な荷室は何といっても魅力的!
text/田端邦彦
photo/田端邦彦、ボルボ