マツダ ロードスター

【連載:クルマ“女子”き(くるまずき)】
自動車に移動手段以上の価値を見いだし、時間もお金も費やする、いわゆる「車好き」はほとんどが男性である。ゆえに大変貴重な「女性の車好き」、しかも男性顔負け(?)の偏愛ぶりを見せる女性を取材する企画。カーセンサーは車好き女子を、応援しています!
 

希少種であるサーキット女子

もはや「男はこうで、女はこう」みたいな時代でないことは十分承知している。だが、とはいえ「スポーツカーに乗る女性」の絶対数は少なく、「そのスポーツカーでサーキットを走りまくっている」という女性はさらに少ない。言ってみれば希少種である。

「男だから、女だから」といった問題以前の「希少性」に興味を抱かざるを得なかった筆者は、俗にNBと呼ばれる2代目マツダ ロードスターで筑波サーキットでの練習走行を終えたばかりの大学4年生、ちひろさんに取材マイクを向けた。
 

ちひろさん ▲こちらがちひろさん
マツダ ロードスター ▲そしてこちらが愛車のマツダ ロードスター



伊達軍曹
伊達軍曹

こんにちは。オレンジのホイールがカッコいいですね。

ちひろさん
ちひろさん

あ、このホイールとタイヤは借り物なんです。自分のサーキット用タイヤがツルツルになっちゃったんで、お世話になってる車屋さんから急きょお借りした感じで……。

伊達軍曹
伊達軍曹

(ツルツルになるまで走り込んでるのかよ! と思いながら)どのぐらいの頻度でサーキットに来てるんですか?

ちひろさん
ちひろさん

ん~、多いときで週2、少ないときで月3回ぐらいでしょうか? 週イチで来てない週はないですね。卒業式は中止になっちゃったのですが、この春からは就職しますので、「4月以降は週末しか走れない……どうしよう!」って、軽くパニクってるとこです(笑)。

マツダ ロードスター
マツダ ロードスター
伊達軍曹
伊達軍曹

……週末に走れれば十分な気もしますが、それはさておき、なんでサーキット走ってるんですか? 失礼な質問かもしれませんが。

ちひろさん
ちひろさん

父に無理やりサーキットに連れてこられたんです。そこで父の6MTのND(4代目マツダ ロードスター)を運転して……。

伊達軍曹
伊達軍曹

はあはあ、わかりました。お父さんが大のサーキット走行好きなんですね?

ちひろさん
ちひろさん

いえ。父は「大のロードスター好き」ではあるんですが、サーキット走行はぜんぜんやらないタイプです。なんというか、車というものの怖さとか、女性は苦手だとされている「フルブレーキングをしてABSを作動させる感覚」とかを体験させたかったそうです。で、マツダさん主催のドライビングレッスンに無理やり連れて行かれ……。

マツダ ロードスター
伊達軍曹
伊達軍曹

無理やりって、今のちひろさんを見てると「どの口が言うか?」って感じですが。

ちひろさん
ちひろさん

当時はホント興味なくて(笑)。で、そのドライビングレッスンで「あれ? なんか楽しいかも?」って気づいちゃったんです。

伊達軍曹
伊達軍曹

はあはあ、わかりました。そこでサーキット走行の魅力にどハマりして、以来、順調に腕を上げ続けている、と。

ちひろさん
ちひろさん

や、実はそうでもなくて……。まあ「楽しい!」とは思って、オートマのNC(3代目マツダ ロードスター)を購入し、実際にサーキットに行きました。でも、2回目の筑波サーキットでなんとクラッシュしちゃったんですよ……。ケガはぜんぜんなかったのですが。

伊達軍曹
伊達軍曹

ビギナー状態のときにクラッシュすると、普通は怖くなってやめちゃいますよね?

ちひろさん
ちひろさん

ですよね。わたしも、午前中にコース2000(筑波サーキットの本コース)でクラッシュした後は怖くなってました。でも、当時も今もお世話になってる「ガレージ 123」の社長さんから「ここでやめるとトラウマだけが残る。今日の午後、とりあえずコース1000(筑波サーキットのショートコース)を走ってみた方がいい」と言われて……。

マツダ ロードスター▲走行後のちひろさんに、熱心に指導されていたこちらの方が「ガレージ 123」の代表取締役である根岸さん
伊達軍曹
伊達軍曹

走ったんですね? 傷心のまま。

ちひろさん
ちひろさん

はい。やっぱりちょっと怖かったんですが、結論としては「あ、当日中に走ってみて良かったな」と心底思えました。おかげさまでトラウマもないようですし。そしてその後、「やっぱりちゃんと走りたい!」と思って今の車、MTの2代目ロードスターを買ったんです。

マツダ ロードスター
伊達軍曹
伊達軍曹

ド根性物語ですねぇ……。どこでそんなド根性を獲得したんですか?

ちひろさん
ちひろさん

ん~、関係あるかどうかわかりませんが、わたし大学で応援団に入ってたんです。

伊達軍曹
伊達軍曹

はあはあ、わかります。あのチアリーディングってやつですね? ポンポン持ってジャンプとかする。

ちひろさん
ちひろさん

そっちじゃなくて、長ラン着て大きな旗とかを持つ、あっちの応援団。

伊達軍曹
伊達軍曹

……はい?

ちひろさん
ちひろさん

埼玉の寮から都内の大学まで、毎日長ラン姿で通ってたんですよ。日々の練習で疲労が蓄積してしまったのか腰を壊してしまい、半年間休学するハメにもなりましたが(笑)。

伊達軍曹
伊達軍曹

そ、そ、そうでしたか。

ちひろさん
ちひろさん

そうなんですよ。でもまぁ応援団員だったことが、サーキットと関係してるかどうかはわかりませんけど。

伊達軍曹
伊達軍曹

根本的なことをお聞きします。サーキット走行の、何がそんなに楽しいんですか?

ちひろさん
ちひろさん

何なんでしょうねぇ……。自分の努力やその時点での実力が、「タイム」というものに如実に反映されるのがサーキット走行だと思ってます。で、誰と戦うわけでもなく「自分」と戦って、結果が出れば嬉しいし、出なければ悔しいし……みたいな部分が好きなのかもしれませんね。

マツダ ロードスター
伊達軍曹
伊達軍曹

昔からそんな感じのストイックな性格なんですか?

ちひろさん
ちひろさん

自分がストイックかどうかはわかりませんが、5歳から19歳までやっていたクラシックバレエも結局は「自分との戦い」でしたから、そんな感じのスポーツが性に合ってるんでしょうね。サーキットも、もう少し上手になったらロードスター・パーティレース(編注・ナンバー付きのマツダ ロードスターNR-Aによるワンメイクレース)に出たいと思ってます。

マツダ ロードスター



「飽き性だから、いつまでサーキット走行を続けるかはわかりません」と言うちひろさん。

だが14年間クラシック・バレエを続け、そして高校時代から大学3年生まで応援団員であり続けた彼女のド根性と、「好きになったらどっぷりハマる」という傾向を見るにつけ、まぁ数年後もマツダ ロードスターで――しかもワンメイクレース仕様のロードスターNR-Aで、日本各地のサーキットをビシビシ走っていることは、ほぼ間違いないだろう。
 

マツダ ロードスター
文/伊達軍曹、写真/篠原晃一
伊達軍曹(だてぐんそう)

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。