1シリーズ ▲2019年の発売以来、大人気をキープしている現行型BMW 1シリーズの中古車平均価格が、この1年で30万円以上ダウンし300万円を切ってきました。これを機に、現行型1シリーズの上手な選び方について考えてみることにしましょう!

もしも買うなら何年式のどのグレードがベストか?

それまでのFRからFFへと基本駆動方式を変更したものの、依然としてBMWらしいシュアでファンなハンドリング性能と、痛快かつ精緻なエンジンフィールを堪能できる3代目(現行型)BMW 1シリーズ。プレミアムでスポーティな5ドアハッチバックを探している人にとっては「最適!」と評しても決して大げさではない1台です。

そんな現行型BMW 1シリーズの中古車平均価格が、この1年で30万円以上ダウンし、2024年4月17日時点で300万円を切ってきました。

1シリーズ▲2024年4月17日時点での中古車平均価格は295万円。前年同月比で約31万円下がっている

比較的買いやすい状況となってきた現行型1シリーズの中古車をこれから購入するとしたら、何年式のどんなグレードを、いくらぐらいで狙ってみるのが得策なのでしょうか?

次章以降、じっくり検討してまいります。
 

▼検索条件

BMW 1シリーズ(現行型) × 全国
 

モデル概要:FFプラットフォームへと変身したプレミアム5ドアハッチバック

日本では2019年8月に発売された現行型BMW 1シリーズはプラットフォームを完全刷新し、基本駆動方式をFRからFFへと変更した3代目の1シリーズ。型式名は「F40」です。

ボディ形状は5ドアハッチバックで、サイズは全長4355mm×全幅1800mm×全高1465mm。ホイールベースは先代より20mm短くなりましたが、FF用のプラットフォームの採用により室内スペースは拡大しています。
 

1シリーズ▲こちらが現行型BMW 1シリーズ
1シリーズ▲LEDのリアコンビネーションランプは、BMW各車で用いられているL字をモチーフとした立体的デザインを採用
1シリーズ▲「BMWライブ・コックピット」と呼ばれる10.25インチメーターパネルは、M135i xドライブを除きオプション装備。パーキングブレーキは、従来型の機械式から電動式に変更されている
1シリーズ▲5人乗車時の荷室容量は380L。後席を倒せば最大1200Lまで拡大可能。荷室床下にはサブトランクが備わる
 

当初導入されたのはベーシックな「118i」系の3モデルと、ハイパフォーマンスグレードである「M135i xDrive」の計4モデル。118i系は最高出力140ps/最大トルク220N・mの1.5L直3ターボを搭載するFF車で、M135i xDriveは同306ps/同450N・mの2L直4ターボを搭載する4WD車。組み合わされるトランスミッションは118i系が7速DCTで、M135iが8速ATです。

運転支援機能は「ドライビングアシスト」が、最廉価グレードである118iを除く全グレードに標準装備され、直近50mの軌跡を記憶し、その軌跡どおりに後退する際にステアリング操作を自動で行う「パーキングアシスト」も全車に採用。

また、日本仕様のBMW車としては初めて、タイヤスリップコントロールシステム「ARB」も搭載されました。これはエンジンコントロールユニットで直接スリップを感知し、従来の約3倍の速さで信号を直接エンジンに伝達する機能。アンダーステアの大幅抑制に貢献しています。
 

1シリーズ▲様々なセッティングと電子デバイスにより、FF車でしばしば見られるアンダーステアなどはしっかり抑制されている。「FFだから云々」というのはまったく考えなくていいはずだ
 

2020年4月には最高出力150ps/最大トルク350N・mの2L直4ディーゼルターボエンジンに8速ATを組み合わせた「118d」系を追加。2021年6月には、それまでオプション扱いだったアダプティブクルーズコントロールやオートマチックテールゲートオペレーション、電動フロントシート(運転席メモリー機能付き)を標準装備化するなどの一部変更を行っています。

そして2022年9月には、新たなエントリーグレードとして「116i」を設定。これは1.5L直3ターボエンジンを最高出力109ps/最大トルク190N・mに抑えている仕様ですが、ストップ&ゴー機能付きアダプティブクルーズコントロールや「ドライビングアシスト」「パーキングアシスト」などの安全機能と運転支援機能は標準装備されています。

以上が、やや駆け足にはなりましたが、現行型BMW 1シリーズの大まかなモデル概要です。
 

 

考察:平均価格下落は、単なる経年による「自然現象」か

中古車の平均価格が1年間で比較的大きめにダウンした場合、ときには「ネガティブな要因」が価格ダウンの理由であったりもします。例えばですが、採用された新型トランスミッションなどに深刻なトラブルが頻発してしまうと、そのモデルの平均価格はあっという間に大きく下がります。

しかし、現行型BMW 1シリーズにおいては、そういったネガティブな話も特にはありません。もちろん機械製品ですから、ときにマイナートラブルが発生したりはしますが、「◯◯という部品が徹底的に弱い」みたいなことはありません。

そのため今回の比較的大きめな平均価格ダウンは、単に「売れ筋ゆえ大量に流通しているモデルが、2回目車検の年を迎えるにあたって自然落下的に価格を落とした」というだけの話でしょう。

世の中にはごく希に「歳月の経過とともに平均価格が上がる車種」もありますが、ほとんどすべての車は、時間の経過とともに平均的な価格が下がっていきます。そういった自然現象が、発売から4年以上が経過した現行型BMW 1シリーズにも起こったということです。

それでは次章、具体的なオススメを考えてまいります。
 

1シリーズ▲「118i」で公道試乗を行った際の様子
 

コスパ重視で選ぶなら?:200万円台前半の118iプレイまたはMスポーツ

現行型BMW 1シリーズをコスパ重視で、つまり「いいモノをなるべく安く」という精神でもって探すとしたら、狙い目は1.5L直3ガソリンターボエンジンを搭載する「118i」系で、その中でも「118i プレイ」または「118i Mスポーツ」を総額210万~250万円付近で狙うというのがモデルケースとなります。
 

1シリーズ▲こちらは日本仕様の118iプレイに相当する本国仕様
1シリーズ▲こちらが118i Mスポーツ(写真は英国仕様)
 

118i系は「スタンダード」と「プレイ」「Mスポーツ」の3種類に分かれていて、最もお安く狙えるのは、最廉価グレードだった「スタンダード(表記的には118i)」です。しかし、118i スタンダードは装備内容が貧弱であるため、「安い」のは確かですが「高コスパ」とはいえない選択肢です。また、118iスタンダードはそもそも中古車の数が少ないため、あえて探す意義もあまりありません。

となると残るのは、中間グレードである「118i プレイ」と、スポーティグレードである「118i Mスポーツ」の2つになります。

価格的には118i Mスポーツの方が若干高めではあるのですが、大局的に見ると両者の中古車価格は「だいたい同じぐらい」とも言えます。そのため、ここはもう好みで選ぶしかありません。

両者とも装備内容は普通に充実していますが、見た目と乗り味は若干異なります。118i プレイが「標準内外装+標準サスペンション」であるのに対し、118i Mスポーツは専用の空力パーツやMスポーツ・サスペンションなどを採用しています。
 

1シリーズ▲スタンダードとプレイのエクステリアはこのようなデザイン(写真は本国仕様)
1シリーズ▲「Mエアロダイナミクス・パッケージ」などが装着され、「Mスポーツ・サスペンション」も標準となる118i Mスポーツ(写真は英国仕様)
1シリーズ▲Mスポーツはインテリアでも「マルチファンクション Mスポーツ・レザー・ステアリング・ホイール」が標準で、シートもスポーツシートが装着されている
 

落ち着いた印象の「プレイ」とスポーティな「Mスポーツ」のどちらを選ぶかはお好み次第ですが、いずれの場合でも、総額210万~250万円付近で高コスパな1台が見つかるはずです。

ただし、この時代の118i プレイと118i Mスポーツは、アダプティブクルーズコントロールが標準ではなくオプション扱いでした。そのため高速道路を走る機会が多い人は、物件情報に「ACC」という文字が入っているかどうかを確認しながら探すことをオススメします。
 

▼検索条件

BMW 1シリーズ(現行型) × 118i プレイ × 全国

▼検索条件

BMW 1シリーズ(現行型) × 118i Mスポーツ × 全国
 

ディーゼル車を狙うなら?:総額220万~280万円を目安として柔軟に検討する

2020年4月に追加されたディーゼルターボ車、つまり「118d」は、これまでに下記の4グレードが販売されました。

●118d プレイ|新車時価格430万円
●118d プレイ エディション ジョイ プラス|新車時価格385万円
●118d Mスポーツ|新車時価格451万円
●118d Mスポーツ エディション ジョイ プラス|新車時価格423万円

上記のうち車名に「エディション ジョイ プラス」と付いているものの中身は、付いていないものとまったく同じです。例えば「118d プレイ」と「118d プレイ エディション ジョイ プラス」は、新車価格は45万円違いましたが、中身的には同じなのです。

エディション ジョイ プラスというのは、BMWジャパンがクリーンディーゼル車とプラグインハイブリッド車、そしてEVの販売を促進するために戦略的な大幅値下げを行ったグレードで、1シリーズ以外にも「エディション ジョイ プラス」はラインナップされていました。
 

1シリーズ▲車名に「エディション ジョイ プラス」と付いていてもいなくても、中身は変わらない
 

となると、現在の中古車価格も「エディション ジョイ プラス」の方が安いのではないか――と思うわけですが、実はあまり差がありません。もちろん安い“傾向”はありますが、あくまで傾向でしかなく、実際の価格は物件のコンディションやオプション装備の内容によりけりです。

そのため「ディーゼルターボエンジンの現行型1シリーズが欲しい」と考えた場合は、まずはスポーティなMスポーツでいくか、それとも落ち着いたプレイにするかという大まかな方向性を決めます。そしてそのうえで、エディション ジョイ プラスと「通常のやつ」の双方から、自身の条件に合う物件を幅広く吟味する――という探し方を採用するべきでしょう。その際の予算目安は「総額220万~280万円ぐらい」といった線になるはずです。

Mスポーツ系にするかプレイ系にするかは、ガソリンターボの場合と同じく「お好み次第」ですが、価格的にはプレイ系の方が若干お安い傾向はあります。ただし、車というのは「安けりゃいい」というものでもないため、あくまでもご自身的にグッとくる方を選ぶべきかとは思います。
 

▼検索条件

BMW 1シリーズ(現行型) × 118d Mスポーツ系 × 総額200万~280万円 × 全国

▼検索条件

BMW 1シリーズ(現行型) × 118d プレイ系 × 総額200万~280万円 × 全国

▼検索条件

BMW 1シリーズ(現行型) × 全国
文/伊達軍曹 写真/BMW、尾形和美
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツR EX Black Interior Selection。