▲アウトバーンで270km/h巡航することを想定し開発されたVW トゥアレグ(初代)。原稿執筆時点(2015年5月25日現在)でのカーセンサー net掲載台数は113台 ▲アウトバーンで270km/h巡航することを想定し開発されたVW トゥアレグ(初代)。原稿執筆時点(2015年5月25日現在)でのカーセンサー net掲載台数は113台

同じ車体でも中古車相場はトゥアレグが破格

プラットフォームシェアリング(車体共有化)は、何も目新しいことではありません。アメ車では70年代くらいから盛んに行われていたことで、今ではほぼ全ての自動車メーカーが行っていることです。

中でも個人的に気になっているのがドイツの高級SUV初代三兄弟、VW トゥアレグ、ポルシェ カイエン、アウディ Q7です。正直ここまで人気を博すとは思わなかったカイエンですが、中古車市場でも依然人気です。もう新車時登録から12年以上が経過している初代でも、中古車の車両価格帯は約138万円~約1280万円(2015年5月25日現在)。平均車両価格/平均走行距離は約329万円/約5万5000kmとなっています。

▲高級SUV人気の波を見事に乗った ポルシェ カイエン(初代)は瞬く間に大ヒット。原稿執筆時点でのカーセンサー net掲載台数は215台 ▲高級SUV人気の波を見事に乗った ポルシェ カイエン(初代)は瞬く間に大ヒット。原稿執筆時点でのカーセンサー net掲載台数は215台

対する兄弟車であるVW トゥアレグは、カイエンの半分以下ほどから狙えます。車両価格帯は約70万円~約346万円で、平均車両価格/平均走行距離は約186万円/約5万9000km。乱暴な言い方ですが「基本的に“同じ”車なのに……」です。

しかしながらトゥアレグの内装は、明らかに高級SUVセグメントをターゲットにした精緻さと高級感が漂っています。“大衆の車”を意味するVWらしからぬ高級車というギャップも、個人的にはグッときます。

▲こちらはトゥアレグの内装。精緻な雰囲気を醸し出すデザインは、トゥアレグが高級車であることを認識させてくれます ▲こちらはトゥアレグの内装。精緻な雰囲気を醸し出すデザインは、トゥアレグが高級車であることを認識させてくれます

アウディ Q7は導入予定が当初なかったのか、前車2台から2年遅れで投入されました。カイエンやトゥアレグにはない3列目シートが設定されており、開発に時間が必要だったのかもしれません。

中古車市場においては、Q7はカイエンとトゥアレグと比べて流通台数が少なめ。とはいえ、同年式、同様の走行距離という条件で比較すると、カイエンと大差ありません。車両価格帯は約218万円~約698万円で、平均車両価格/平均走行距離は約455万円/約4万4000km。こちらもブランド力を感じさせる相場となっています。

▲3列目シートを有するという差別化が図られた、アウディQ7。原稿執筆時点でのカーセンサー net掲載台数は65台 ▲3列目シートを有するという差別化が図られた、アウディQ7。原稿執筆時点でのカーセンサー net掲載台数は65台

そう考えると、トゥアレグの中古車相場の破格ぶりがいっそう目立ちます。デビューから5年ほどは高値を維持していましたが、もう欲しいという層は一巡した模様。三兄弟の中でみるみる相場が下落しています。

いずれも同じスロバキアのVW工場で組み立てられ、ポルシェのみドイツで仕上げ工程が施されます。細かいセッティングが異なるとはいえ、スポーティなハンドリングは3車に共通のセールスポイントです。カイエンには他にはない大排気量やターボエンジンが設定されていますが、トゥアレグも負けてはいません。6L W12という当時のベントレー コンチネンタルGTのエンジンからターボを抜いたようなモノが搭載された、スペシャルモデルもありました。

中古トゥアレグのベースモデルが100万円未満で狙えるのですが、W12モデルは300万円台前半~と絶対金額は高め。新車時価格が1090万円もしたこと、世界限定500台であることが高値の理由でしょう。カイエンの上級グレードや、年式が新しめのQ7を狙う予算ですから、相対的に“格安”だと思います。

三兄弟の中で最も不遇な相場となっているトゥアレグですが、そんなワケで最もお買い得な気がしてなりません。ベーシックなモデルでも、中級グレードでも、はたまた限定モデルでも、どれでも欲しくなる今日この頃です。

text/古賀貴司(自動車王国)