▲高度経済成長も終わりに差し掛かっていた1970年、各社がレジャーユースのオープンモデルを発売。バモスホンダもそのひとつ ▲高度経済成長も終わりに差し掛かっていた1970年、各社がレジャーユースのオープンモデルを発売。バモスホンダもそのひとつ

軽だってオープンエアを楽しみたい!という欲求は昔から存在

2015年4月2日に発売開始となったホンダ S660。そしてコペン第3のモデルとなる丸目のダイハツ コペンセロの登場で、軽オープンカーが盛り上がっています。

軽オープンというジャンル、その歴史は意外に古いことをご存じですか? S660やコペンのような2シーターオープンスポーツ以外にも、バラエティ豊かなモデルがあった軽オープン。過去のモデルを振り返ってみましょう!

レジャーを意識したモデルが相次いで登場した1970年代

1950年代、高度経済成長を支えたオート三輪にはルーフ部分の幌が取り外せるものがありました。その後1968年にはGNPで世界2位となり、レジャー志向が高まったこの時期にユニークな軽自動車が登場します。

まずは、皆さんご存じのスズキ ジムニー。1960年代にホープ自動車が製造したホープスターON型4WDの製造権をスズキが買い取り、1970年にジムニーとして世に送り出しました。ジムニーの発売と同時期、ダイハツは軽乗用車フェローの派生モデルとして、2人乗りのフェローバギーを北海道と東北を除き100台限定で発売しました。

もう1台、忘れてはならないのがバモスホンダです。カテゴリーは軽トラックになり、幌を外すと完全なオープンモデルに。ドアがないゴルフカートのようなスタイルは、現在でもファンが存在するカルトなモデルです。

▲1970年デビューのスズキ ジムニーLJ10型。屋根とドアは幌式で取り外し可能。フロントガラスも前に倒すことができた ▲1970年デビューのスズキ ジムニーLJ10型。屋根とドアは幌式で取り外し可能。フロントガラスも前に倒すことができた
▲ハイゼットピックアップをベースに作られたフェローバギー。ボディはFRP製で2人乗り。バギータイプなのでドアが付いていない ▲ハイゼットピックアップをベースに作られたフェローバギー。ボディはFRP製で2人乗り。バギータイプなのでドアが付いていない
▲ミリタリーモデルのような雰囲気すら漂うバモスホンダ。2人乗りと4人乗りが存在し、幌も居住スペースのみかかるもの以外に、荷台まで覆えるものもあった ▲ミリタリーモデルのような雰囲気すら漂うバモスホンダ。2人乗りと4人乗りが存在し、幌も居住スペースのみかかるもの以外に、荷台まで覆えるものもあった

軽自動車の派生モデルでオープンカーが登場

1980年代後半はアルトワークスやミニカダンガンなど、軽スポーツがブームになります。そして1990年代に入ると軽乗用車の派生モデルとして、ルーフを切り取ったオープンモデルが登場しました。

1991年には3ドアハッチバックのダイハツ リーザをオープンモデルにしたリーザスパイダーが登場。乗車定員は2名。リーザスパイダーは残念ながら短命に終わり、わずか2年で生産終了となりました。リーザと入れ替わるように登場したのが、スバル ヴィヴィオT-Topです。1992年にレックスの後継モデルであるヴィヴィオの追加グレードで1993年に発売。ルーフはタルガトップで、リアウインドウは電動格納できました。

▲クーペのような形状だったリーザの屋根をカットしたリーザスパイダーは、フロントガラスが大きく傾斜しているのが特徴。エンジンはターボのみ ▲クーペのような形状だったリーザの屋根をカットしたリーザスパイダーは、フロントガラスが大きく傾斜しているのが特徴。エンジンはターボのみ
▲富士重工業の40周年記念モデルとして登場したヴィヴィオT-top。カラフルなインテリアやトランク上のキャリアがお洒落! ▲富士重工業の40周年記念モデルとして登場したヴィヴィオT-top。カラフルなインテリアやトランク上のキャリアがお洒落!

軽自動車にオープン専用スポーツモデルが誕生!

1990年代前半、軽自動車に「ABC」と呼ばれるスポーツモデルが登場! マツダ オートザムAZ-1、ホンダ ビート、スズキ カプチーノです。このうちビートとカプチーノはオープンモデルでした。ハッチバックの派生モデルではなくオープン専用車として登場した2台は現在でも中古車市場で人気があり、状態のいいものは100万円以上の値がついています。

ビートが1996年、カプチーノが1998年に生産終了となった後、しばらく軽自動車のオープン2シーターは存在しませんでした。しかし2002年、ダイハツがコペンを発売。再び軽オープン2シーターがクローズアップされました。コペンは電動ハードトップ「アクティブトップ」を備え、約20秒でオープンスタイルに変貌します。

▲1991年5月に登場したビートは、世界初のミッドシップフルオープンモノコックボディとなるモデルで、駆動方式はMR。NAエンジンで64psを発生 ▲1991年5月に登場したビートは、世界初のミッドシップフルオープンモノコックボディとなるモデルで、駆動方式はMR。NAエンジンで64psを発生
▲ロングノーズ、ショートデッキのスタイルが特徴的なカプチーノ。ルーフのパネルを外すことで、Tトップ、タルガトップ、フルオープンを楽しめる ▲ロングノーズ、ショートデッキのスタイルが特徴的なカプチーノ。ルーフのパネルを外すことで、Tトップ、タルガトップ、フルオープンを楽しめる
▲軽自動車で初めて電動ハードトップを搭載したコペン。可愛らしい丸型ライトが特徴的で、このスタイルは現行型のコペンセロに受け継がれた ▲軽自動車で初めて電動ハードトップを搭載したコペン。可愛らしい丸型ライトが特徴的で、このスタイルは現行型のコペンセロに受け継がれた

世間ではオープンカーは特殊なモデルとされていますが、そのバラエティ豊かなラインナップからは「運転しながら四季を感じたい」という需要が一定以上あることが見てとれます。また限られたスペースの中にルーフ収納スペースを設置しオープンスタイルを実現するのは「軽だからって、車に乗る人たちを我慢させるのはプライドが許さない!」という軽自動車メーカーの気迫をも感じさせてくれます。

ルーフを開けた瞬間に訪れる無限の開放感。現在、軽自動車の主流は規格内でスペース効率を高めたモデルですが、屋根を取り払うことでスペースの呪縛から解放されるオープンモデルにも注目ですよ!!

text/高橋 満(BRIDGE MAN)