▲トヨタ センチュリー

日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMC、Boseがカーセンサーで気になる中古車を探して実際に見に行く本企画。

今回は1967~1997年に生産された初代 トヨタ センチュリーをチェック! 長く日本のVIPに親しまれる名車だが……改めてどんな車なのでしょう?
 

Bose

スチャダラパー

Bose

1990年にデビューし、1994年「今夜はブギー・バック」が話題となる。以来ヒップホップ最前線で、フレッシュな名曲を日夜作りつづけている。11月13日にスチャダラパー2年ぶりとなる新曲『ヨン・ザ・マイク feat. ロボ宙&かせきさいだぁ』が配信リリース! 詳しくは公式HPへ。愛車はフォルクスワーゲン ゴルフIIとフィアット ウーノターボ
 

実は秀逸なデザイン

トヨタが誇る、超高級車「センチュリー」。 多くのVIPから愛されたショーファードリブンだが、中古車でVIP仕様を楽しむオーナーも多い車だ。

編集部 今回お邪魔しているBU-BUコレクションは低価格で買える国産セダンを得意としているのですが、中でもトヨタ センチュリーに力を入れているそうです!

Bose へえ! センチュリーといえば日本が誇る名車。現行型は御料車(センチュリーロイヤル)のベースモデルにもなっている、スーパーVIPカーじゃん。中古車ではどんな人が買うんだろう。やっぱり社用車として使われるのかな。

BU-BUコレクション 川原店長(以下、川原店長) ほとんどが個人のオーナー車ですよ。鳳凰倶楽部というセンチュリーのオーナーズクラブもあります!……実は私が主宰なんです!

Bose センチュリーに強いお店が仕切るオーナーズクラブって最強だよ。しかも鳳凰! センチュリーといえば鳳凰のエンブレムが有名だもんね。

編集部 それでは実際に車も見てみましょう!

▲トヨタ センチュリー▲直線を基調にした初代センチュリー。最新型のセンチュリーにもデザインの面影が残されています

Bose これは初代のセンチュリーでしょう?

川原店長 そうです。1995年式なので、最終型ですね。

Bose 新型にも言えるけれど、センチュリーはデザインが秀逸だよ。世界のいろいろなメーカーがVIPに向けた超高級車を出しているじゃん。センチュリーはそのどれにも似て非なるものがある、日本ならでは美しさがある。そしてこの初代から最新モデルまで、一貫している“センチュリーらしさ”を感じるじゃない。50年にわたり貫いている美学。本当にカッコいいよね。

編集部 海外の高級ブランドを真似したのではない、日本のオリジナルという雰囲気ですね。

Bose 日の丸が似合う雰囲気だよね。品があると同時に威圧感も大きいから、後部座席からダース・べイダーとかが出てきそう(笑)。国産ショーファードリブンってかつてはトヨタ以外のメーカーも製造していたでしょう。そういう車を作ることはある意味メーカーの誇りだったと思うの。でも最終的にはセンチュリーが王座を確立する形になったよね。

編集部 他の自動車メーカーは悔しかったでしょうね……。
 

▲トヨタ センチュリー▲グリルやホイールには鳳凰のエンブレムが刻まれています

Bose レクサスのLSとかと違ってセンチュリーは基本的に国内専用車でしょう? でも外国人に受けそうなデザインじゃない? 逆に外国の人から「なんで日本人はセンチュリーに乗らないんだ?」って思われたりしそう。センチュリーからタランティーノとかが出てきたらカッコいいじゃん!

編集部 逆に今、日本のVIPからはアルファードのロイヤルラウンジなどが好まれたりしますね。

Bose 芸能人でもアルファードを使っている人は多いよ。テレビ局にアルファードがずらっと並んだり。確かに乗り込むときは背が高い方が楽だし、車内でスーツを着替えたりもできるから。でも僕が住んでいる鎌倉だと、今でも運転手さんがセンチュリーで迎えに来る光景を目にすることもあるよ。きっとセンチュリーだけがもつ世界観を大事にしている人なんだろうな。

編集部 このセンチュリーは車両本体価格が約50万円。Boseさん、移動車にどうですか(笑)。

Bose 今、マネージャーが車の買い替えを考えているみたいだから、センチュリーにしてくれないかな(笑)。
 

三角窓までパワーウインドウ! その発想が凄すぎる!!

Bose これまでセンチュリーをマジマジと見る機会なんてなかったけれど、じっくり眺めると不思議なパーツも付いているんだ。フロントライトの前にあるポッチはなんだろう。車幅灯にしては付いている場所が変だし……。

川原店長 それはオートヘッドライトのセンサーです。センチュリーは昭和50年代くらいから、ハイビームとロービームを自動で切り替える機能がついていたんですよ。

Bose え? 昭和50年代から?

川原店長 そうなんです。でも2代目でその機能はなくなりました。
 

▲トヨタ センチュリー▲隣りにあった1997年のフルモデルチェンジ後の2代目センチュリー。初代のデザインを多く踏襲している
▲トヨタ センチュリー▲1995年式の最終形の初代 センチュリー。これは標準ボディだがロングも生産されていた。オートヘッドライトのセンサーがついている

川原店長 今では軽自動車でもオートヘッドライトが付いていますが、センチュリーには昭和の時代からあったんです。他にもセンチュリーには面白い機能があるんですよ。例えばこれ、三角窓!

Bose 昔の車にはみんな付いていたけれど、何が面白いの?

川原店長 センチュリーの三角窓はパワーウインドウなんです。

▲トヨタ センチュリー▲すべての座席に付く三角窓。これがパワーウインドウになっています
▲トヨタ センチュリー▲パワーウインドウ操作スイッチ。説明が日本語で書かれているのが新鮮!

Bose 何これ、すごい!!!!!!

川原店長 しかも、運転手がすべての乗員のリクエストで窓の開閉をできるようにするために、運転席にはパワーウインドウボタンが8個付いているんですよ。

Bose これ、当時はとても贅沢な装備だったのだろうな。しかもこういうボタンって普通は“UP”“DOWN”“ON”“OFF”と英語で機能説明が書かれるけれど、センチュリーは日本語で書かれているんだ。“ドアガラス”“三角窓”という表示、すごく新鮮だな。

川原店長 現行型は英語で書かれているので、この表記はこの時代ならではですね。
 

マッサージチェアにカラオケ! 日本ならではのおもてなしに驚愕!

▲トヨタ センチュリー▲後部座席で足を伸ばして運転手さんに指示。そんな生活に憧れますね

編集部 Boseさん、センチュリーはショーファードリブンなんだから、後ろの席に座らせてもらいましょうよ。

川原店長 ぜひ座ってみてください。Boseさん、この機能はご存じですか?

Bose 助手席のヘッドレストが前に倒れて、背もたれがオットマンになって足を伸ばせるやつね。話を聞いたことはあるけれど、この目で見たのは初めてですよ。すごいな。

川原店長 この機能はセンチュリーの標準装備でした。Boseさん、後部座席中央を前に倒してみてください。
 

▲トヨタ センチュリー▲後部座席を快適にする機能がたくさん!

Bose 大きな肘掛け! 移動中、ゆったりくつろげるよ。しかし、いろんなスイッチがあるね。エアコンやオーディオのコントロールができるんだ。

川原店長 後部座席にはマッサージ機能も付いています。

Bose 本当だ、揺れてる、揺れてる! すごく日本的な発想だね。

川原店長 オーディオはマイクを付けるとカラオケを歌えるんです。

Bose カラオケ!!!!!! その発想はなかったな。でも時代を考えると取引先の社長とゴルフとかに出かけた後、一緒にカラオケを楽しんだりする需要があったのかもしれない。横のスペースは自動車電話を置く場所かと思ったけれど、マイクを置いていたのかもしれないね。
 

▲トヨタ センチュリー▲カラオケまでできるなんて! センチュリーのスペシャルさがわかる装備です

編集部 このセンチュリー、それこそBoseさんならマネージャーさんだったり、僕らだったら友達とかに買ってほしいですね! そうしたら絶対に後ろに座りたい!

Bose 間違いない! 絶対に後ろに座るよ。ドアに付いているのは灰皿だよね。大きな灰皿だなあ。しかも運転席、助手席、後部座席両側ドアと、1人1個灰皿があるんだね。このあたりにも時代を感じる。
 

▲トヨタ センチュリー▲インパネの薄さが今見るとカッコいい! オーナーズカーとしても楽しそう!!

Bose 運転席のデジタルメーターとかもカッコいいよ。排気量も4Lあるし、家族を後ろに乗せて運転するのも楽しいと思う。ひとつひとつのパーツがしっかり作られているし壊れる雰囲気は全くないけれど、そのあたりはどうなのかな?

川原店長 おっしゃるとおり、モノはしっかりできています。ただ、初代は最終型でも20年以上前のモデルですからね。パーツはめっきり少なくなりました……。ベルトやブレーキパッドなどの消耗品は今でもあるのですが、例えばパワーウインドウが壊れたというときにパーツ探しに苦労しますね。この車を仕入れたときも、パワーウインドウの部品がなかったので、モーターをバラして直しました……。そう考えると、本当に好きじゃないと維持して乗り続けるのは大変な車になりましたね。

Bose やっぱりそこまでやらないとダメなんだね。
 

▲トヨタ センチュリー▲センチュリーを愛する川原さんと、旧車ならではの楽しさと苦労話で盛り上がります

川原店長 私の仲間はパワーウインドウが壊れたときに、手巻きのウインドウにしました。もちろん純正で手巻きという設定はないので、オリジナルで作っています。

Bose 僕が乗っているフォルクスワーゲン ゴルフIIやフィアット ウーノもパワーウインドウは怖い部分。実際に走行中に突然ストンと落ちちゃったこともあるしね。だからその苦労がよくわかるよ。でもそれを乗り越えてでも、この時代の車に乗る楽しさは捨てられない。センチュリーも面白い選択肢だと思うな。
 

文/高橋 満(BRIDGE MAN)、写真/早川佳郎