▲“アンチ”の多くは、スカイラインを長く愛してきた人たち。思い入れがあるだけに大きく変わった現行型を見て「違う!」と感じていたという。いわゆる「乗らず嫌い状態」だった現行型スカイラインに試乗して、彼らの印象はどう変化するのだろうか ▲“アンチ”の多くは、スカイラインを長く愛してきた人たち。思い入れがあるだけに大きく変わった現行型を見て「違う!」と感じていたという。いわゆる「乗らず嫌い状態」だった現行型スカイラインに試乗して、彼らの印象はどう変化するのだろうか

これまでの常識を打ち破る“アンチ”が集まる試乗会が開催!

FacebookやTwitterなどSNSの普及により、ユーザーは企業への要望などが言いやすくなった。しかし、企業にとっては、ユーザーからのコメントは嬉しい内容ばかりとは限らない。中にはネガティブなコメント(=ネガコメ)が投稿されることも。ネガコメは他のユーザーの目に留まりやすく、やがて「俺も!」と同調する意見が集まり、最終的には炎上、なんていうのは最近ではよくある話だ。

ネガコメは、コアなファンが多いものに集まりやすい。車だと代表的なのは日産 スカイラインだろう。より進化した現行型(V37)だが、その変化した姿を見てファンは「なんでハイブリッドなんだ!」「なぜインフィニティエンブレムが?」「こんなに高いのはスカイラインじゃない!」と日産の公式Facebookにコメントをバンバン書き込んでいる。

普通なら担当者は頭を抱えて沈黙を貫きそうなものだが、日産は意外な行動に出た。「ネガコメを書いている人は新型スカイラインに乗ったことある? まずは乗ってみてよ!」と、日産の公式Facebookで現行スカイラインの“アンチファン”を募って試乗会を開催した。その名も「新型スカイライン乗らず嫌い試乗会byにっちゃん」(にっちゃんとは日産のSNSでのプロジェクト名)。こんなおもしろい話は見過ごせない! 我々も会場に潜入した。

半信半疑で乗ってた結果、ファンの意見は……

会場となった日産の施設「追浜GRANDRIVE」には、8組の“アンチ現行スカイライン”の方々が集まった。日産からはスカイライン開発責任者の長谷川聡氏、スカイラインプロジェクト統括グループ主担の村松友幸氏、そしてスカイラインはもちろんGT-RやフェアレディZの開発にも関わったテストドライバーで、厚生労働省から「現代の名工」にも選ばれた加藤博義氏。なんという、そうそうたる顔ぶれ!

参加者は過去にハコスカやケンメリ、ジャパン、R32、R33などに乗っていた人が多かった。思い入れのある車について言いたいことをメーカーの技術者たちに直接言えるためか、試乗前のオリエンテーションから参加者はアクセル全開。「なぜハイブリッド!?」「ダイレクトアダプティブステアリング(DAS)でスポーティな走りは楽しめるの!?」と、容赦ない質問の雨あられ! それに対して長谷川氏、村松氏、加藤氏の3名は丁寧に返答していく。

そして、加藤氏が「好みもあると思うけれど、まずは乗り比べてみてください」と締めくくり、試乗会がスタート。多くの参加者は開発陣の話を聞いても、まだまだ半信半疑だ。しかし実際にスカイラインに試乗し、搭載された最新技術や0-100km/h走行を体験すると……。

「ハイブリッドでこんなにスポーティな走りが味わえるなんて!」「加速力に驚いた」「ステアリングに不快なバイブレーションが来ないDASはロングドライブでも疲れないかも」と興奮気味! 特に、DASをSTANDARDからSPORTに切り替えたときの激変ぶりには全員が驚いていた。

もちろんすべての参加者が現行スカイラインに肯定的になったわけではない。それでも参加者が漠然と抱いていた「現行型スカイラインは駄目!」というイメージは大きく変化したはず。やはり車は乗ってナンボ。見ているだけでは、良さも悪さもわからない。とはいえ、こんなにも参加者の意見が変わるとは我々も驚きだった。

▲左から村松氏、長谷川氏、加藤氏。「俺なんかスカイラインの開発に関わってから20年以上、毎回“これはスカイラインじゃない”と言われているよ」と加藤氏。オリエンテーションでは懐疑的な質問が多かったが、試乗後は「どのような仕組みなのか」「この機能はどう使えばいいか」という好意的な質問が多かった ▲左から村松氏、長谷川氏、加藤氏。「俺なんかスカイラインの開発に関わってから20年以上、毎回“これはスカイラインじゃない”と言われているよ」と加藤氏。オリエンテーションでは懐疑的な質問が多かったが、試乗後は「どのような仕組みなのか」「この機能はどう使えばいいか」という好意的な質問が多かった
▲ミリ波レーダーで2台前を走る車両をモニタリングする前方衝突予測警報を体験。運転中にヒヤッとしたことがある参加者は「ドライブは無事に家に帰ることが大事。こういう装備が進化するのは嬉しい」と話していた。同乗参加した奥さまの「警告音が心地いいので、もう少し驚く音でもいいかも」という意見には、加藤氏も「そういう考え方もあるのか」とうなった ▲ミリ波レーダーで2台前を走る車両をモニタリングする前方衝突予測警報を体験。運転中にヒヤッとしたことがある参加者は「ドライブは無事に家に帰ることが大事。こういう装備が進化するのは嬉しい」と話していた。同乗参加した奥さまの「警告音が心地いいので、もう少し驚く音でもいいかも」という意見には、加藤氏も「そういう考え方もあるのか」とうなった

▲公道ではできない0-100km/h加速で、ハイブリッドならではの加速や世界初搭載となるDASのフィーリングも体験。特にDASによるハンドリングの良さには、多くの参加者が驚いていた。試乗後は日産の社員でも滅多に体験できない加藤氏による同乗走行も。「一生の記念になります!」と参加者は大興奮だった ▲公道ではできない0-100km/h加速で、ハイブリッドならではの加速や世界初搭載となるDASのフィーリングも体験。特にDASによるハンドリングの良さには、多くの参加者が驚いていた。試乗後は日産の社員でも滅多に体験できない加藤氏による同乗走行も。「一生の記念になります!」と参加者は大興奮だった

▲「幼少時に父親が乗っていた」「自分で買ったことがある」など、参加者には歴代のスカイラインに触れてきた人が多かった。スカイラインに特別な思いがあるからこそ、変わってほしくないという気持ちが湧き上がるのだろう。しかし最新モデルに試乗することで印象が変わったという。右下のM・ベンツ EクラスオーナーはDASを体験して「本気で乗り替えたい」と話していた ▲「幼少時に父親が乗っていた」「自分で買ったことがある」など、参加者には歴代のスカイラインに触れてきた人が多かった。スカイラインに特別な思いがあるからこそ、変わってほしくないという気持ちが湧き上がるのだろう。しかし最新モデルに試乗することで印象が変わったという。右下のM・ベンツ EクラスオーナーはDASを体験して「本気で乗り替えたい」と話していた

▲ハコスカに3年、R32に7年間乗っていたという現レクサス ISオーナー。「スカイラインは小型でキビキビ走る印象だったが現行型は大きくなりシャープさが薄れた」と語っていた。しかし、試乗後は「ハイブリッドは走りに違和感があると思っていたがそれがない。ビックリです。サイズ感は……やっぱり少し大きいかな(笑)」と走りの良さに目を丸くしていた ▲ハコスカに3年、R32に7年間乗っていたという現レクサス ISオーナー。「スカイラインは小型でキビキビ走る印象だったが現行型は大きくなりシャープさが薄れた」と語っていた。しかし、試乗後は「ハイブリッドは走りに違和感があると思っていたがそれがない。ビックリです。サイズ感は……やっぱり少し大きいかな(笑)」と走りの良さに目を丸くしていた

▲「頭文字D」で車に目覚めたという20歳の参加者の憧れは、R34 GT-R。現行型はラグジュアリーな大人の車になり遠い存在なので価格を見ていないと話していた。しかし、乗ってみると「ラグジュアリーだけどスポーティさも詰まっているんですね。ハイブリッドだし、つまらないと思っていたけれど、走ったらメチャメチャ楽しい!」と目を輝かしていた ▲「頭文字D」で車に目覚めたという20歳の参加者の憧れは、R34 GT-R。現行型はラグジュアリーな大人の車になり遠い存在なので価格を見ていないと話していた。しかし、乗ってみると「ラグジュアリーだけどスポーティさも詰まっているんですね。ハイブリッドだし、つまらないと思っていたけれど、走ったらメチャメチャ楽しい!」と目を輝かしていた

▲こちらの方は「父親がハコスカ、ケンメリ、R32、R33に乗っていたため、スカイラインには特別な思いがある」とのこと。長谷川氏には「なぜ丸目のテールランプをやめたのか」と迫っていた。「手頃な価格でスポーティな走りを味わえるのがスカイラインの良さだったのに……」と話していたが、試乗後は「DASやハイブリッドの性能を考えると今の新車価格は妥当」と、考え方が180度変わっていた。 ▲こちらの方は「父親がハコスカ、ケンメリ、R32、R33に乗っていたため、スカイラインには特別な思いがある」とのこと。長谷川氏には「なぜ丸目のテールランプをやめたのか」と迫っていた。「手頃な価格でスポーティな走りを味わえるのがスカイラインの良さだったのに……」と話していたが、試乗後は「DASやハイブリッドの性能を考えると今の新車価格は妥当」と、考え方が180度変わっていた。
text&photo/高橋 満(BRIDGE MAN)