ランドクルーザー300 ▲新車を注文しても「納期は約4年」といわれていた現行型トヨタ ランドクルーザーが、ついに「注文停止」となり、オーダー済み車両の納期も「未定」となっている模様。そうなるともうさすがに他の車をとりあえず買いたくなるわけですが、「ランクル300の代わりになり得る車」はあるのでしょうか? 考えてみました!

ランクル300が欲しいけど、もはや亡命(とりあえず別の車を買い、それに乗りながら数年間待つ)しかない?

ランクル300こと現行型トヨタ ランドクルーザー新車の納期が今、ちょっと大変なことになっている。

2021年8月に発売された途端、膨大な数の受注を抱えたランドクルーザー300は「おおむね4年待ち」という状況になってしまったわけだが、その後は「未定」となり、2023年3月中旬現在は「注文停止」になっている。(※公式サイトの情報による)

つまりは買いたくても買えないわけであり、先行オーダーをした人のもとへも、現物はまだ届いていない場合があるという。(中古車は流通台数が少なく、しかも新車価格を大きく上回っている)

……こうなるともう「ランクル300難民」になるというよりは、「亡命=とりあえず別の車を買って、それに乗りながら数年間待つこと」を決意せざるを得ないのが実情であろう。
 

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ランドクルーザー300▲こちらが注文停止となっている、ランドクルーザー300こと現行型トヨタ ランドクルーザー

だがそこで問題となるのは、「じゃあ何を買えばいいのよ?」ということだ。

一般的な車であれば、似たようなモノがたくさんある「他の一般的な車」を買えばいいのだろう。だがランクル300の場合は、そう簡単にはいかない。

なぜならば「ランドクルーザー300が欲しい」というマインドは、

1 圧倒的なプレステージ性をもつ車が欲しい
2 圧倒的な悪路走破性能をもつ車が欲しい
3 SUVとしては圧倒的に広い室内空間が欲しい

というような詳細マインドが、ざっくり統合されたうえで発露したものであり、上記1~3の詳細ニーズを同時に満たせて、なおかつ同じぐらいの予算で買える車など、なかなかないからである。

だがそれは「なかなかない」だけであって、「まったくない」わけではない。

探せば、ランクル300の新車総額とだいたい同じか、それ以下の予算で買える「圧倒的なプレステージ性があって、圧倒的な悪路走破性能もあって、なおかつSUVとしては圧倒的に広い室内空間を備えている車」も、少数だが存在しているのだ。

ここでは、そんな「ランドクルーザー300から“とりあえずの亡命”を希望する人にオススメしたい5選」を提案させていただこう。
 

ランドクルーザー300▲その気になればこういった走りもできるランクル300が欲しいのはやまやまだが、こういう状態になると、他の選択肢を検討せざるを得なくなる
 

亡命先①:先代トヨタ ランドクルーザー(ランドクルーザー200)
→想定予算|総額720万~1100万円

非常にシンプルな話として、2007年9月から2021年8月まで新車として販売されていた「先代トヨタ ランドクルーザー(ランドクルーザー200)」の中古車を買えば、先述した1~3のニーズをおおむね満たすことができてしまうだろう。

といっても、先代の中でも初期のモデルは「圧倒的なプレステージ性」という面で若干の難がある。

しかし2015年8月のマイナーチェンジを経た個体であれば、つまりざっくり「2016~2021年式の先代ランドクルーザー」の、さらには走行距離少なめで、内外装コンディションも良好な中古車を狙えば、圧倒的ではないかもしれないが「まずまず以上のプレステージ性」を感じることができるはずだ。
 

ランドクルーザー300▲ランドクルーザー200こと先代トヨタ ランドクルーザー。写真は2015年8月以降の後期型
 

まぁ悪路走破性能も室内空間の広さも、そりゃ現行300シリーズと比べれば若干劣るわけだが、一般的なSUVと比べれば、先代200シリーズのそれは圧倒的である。そのため「細かいことはあまり気にしない」という姿勢で臨めば、何ら問題は生じないだろう。

ここへ“亡命”する際の必要予算は約720万~1100万円といったところなので、決して安くはない。というか、むしろ高い。だが「コンディションの良いランドクルーザー200」は数年先のリセール価格もめちゃめちゃ高いはずなので、実質的な負担額は比較的少ないと予想される。
 

ランドクルーザー300▲ランクル200後期型の運転席まわりはこのようなデザイン。センタークラスターにスイッチや表示類が集約され、メーターは全車オプティトロン(自発光式)に。中央には様々な情報を表示する4.2インチのマルチインフォメーションディスプレイが装備された

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亡命先②:メルセデス・ベンツ Gクラス(初代)
→想定予算|総額850万~950万円

プレステージ性と悪路走破性能、そして室内の広さに関して、トヨタ ランドクルーザーは地球上における「東半球の横綱」といえるSUVだが、「西半球の横綱」となるのがこちら、もともとはNATO軍に採用された軍用車の民生版であったメルセデス・ベンツ Gクラスである。
 

ランドクルーザー300▲こちらが先代メルセデス・ベンツ Gクラス。写真は2015年12月以降の、最終型に近い世代

ボディサイズはランクル300よりもいささか小さいため「室内の広さ」に関しては若干劣る。しかし「プレステージ性」についてはこちらの方が若干上であり、「悪路走破性能」は、おおむねイーブンであろうかと思われる。

であるならば「1勝1負1分け」ということで「両者の実力はおおむね同じ!」ということなり、「それならとりあえずGクラスに“亡命”しとけばいいじゃないか!」という理屈が成り立つわけだ。

しかし問題は「現行型のメルセデス・ベンツ Gクラスは中古車でも高い!」ということで、比較的お安い物件でも総額1100万円以上となり、流通の中心は「1500万円以上」である。これはさすがに“とりあえずの亡命”をするには高コストすぎる。

しかし「先代のGクラスでも良し!」とするならば、ランクル300の新車総額とおおむね似たような予算で、つまり総額850万~950万円ほどで、低走行な物件が狙えるのである。

もちろんこちらの場合も「初期年式」だとプレステージ性の面で少々弱いため、2015年12月以降の(要は2016年式以降の)キラキラしたビジュアルに変更された世代を選びたいところだ。その世代であれば、先代になったとはいえ、そのプレステージ性はランクル300の推定1.3倍ほどになるだろう。
 

ランドクルーザー300▲世代やオプションなどにより細かな部分は異なるが、先代Gクラス最終世代のインテリアはおおむねこのようなデザイン。その“高級感”はけっこうすさまじい

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亡命先③:ランドローバー ディフェンダー(3代目)
→想定予算|総額710万~850万円

メルセデス・ベンツ Gクラスと同様に「軍用車」をその源流とする英国のこちらも、ランクル300の納車待ちからの亡命先としてはかなり素晴らしい選択肢である。
 

ランドクルーザー300▲「無骨なオフローダー」を体現するエクステリアデザインから、「現代的なプレミアムSUV」と言える造形に生まれ変わった現行型ランドローバー ディフェンダー。写真は5ドアの「110」
 

ショートホイールベース+3ドアの「ディフェンダー90」は「室内の広さ」という点でランクル300に大きく劣るが、ロングホイールベース+5ドアである「ディフェンダー110」であれば、ボディサイズはランドクルーザー300とおおむね同じぐらい。

そして悪路走破性能もだいたい同じぐらいであり、プレステージ性は――評価する者によって異なるだろうが、筆者としては「ディフェンダー110の方が、ランクル300の1.2倍ぐらい!」と考えている。

室内の広さを重視したい場合は当然ながらロングホイールベースの110がオススメとなるが、「よく考えたらウチは3ドアでいいのかも!」という場合には、110以上にお安い総額で低走行な90を狙うことができる。このあたりは各位の使用環境次第だが、いずれにせよナイスな“亡命先”である。
 

ランドクルーザー300▲運転席まわりはこのようイメージ。4WDシステムは完全な電動式で、悪路向けの走行モードを選ぶと、副変速機は自動的にローレンジに入り、状況に応じてセンター/リアデフロックも作動

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亡命先④:米国トヨタ タンドラ(2代目)
→想定予算|総額670万~800万円

ランドクルーザー300の代替としては、「絶対に一般的なSUVフォルムじゃないとダメ!」ということはないはずだ。例えばの話として“ピックアップトラック”でもいいわけである。いや、インパクトやプレステージ性(好ましきワイルド感)という点においては、むしろピックアップの方が上であるとも考えられる。

その場合、日本のトヨタが正規販売している「ハイラックス」でもいいわけであり、ハイラックスも、なかなか良き車だ。

しかしランドクルーザー300と比べてしまうと、さすがにプレステージ性の面で大きく劣ることは否めない。

だが、米国トヨタが北米市場で販売している大型ピックアップ「トヨタ タンドラ」であれば、プレステージ性はランクル300に勝るとも劣らないものがある。
 

ランドクルーザー300▲米国トヨタが販売しているフルサイズピックアップ「タンドラ」の先代モデル。写真のグレードは「TRD Sport」

さすがに室内スペースはランクル300より狭いが、そこを良しと考えられるなら、北米トヨタの最上級ピックアップであるタンドラは、とりあえずの亡命先としては素晴らしいものがあり、もしかしたらピックアップならではの使い勝手とスタイルの良さにハマり、「亡命先に永住」ということになる可能性すらあるだろう。いやタンドラは本当にカッコいいので。

とはいえ、2022年にフルモデルチェンジを受けた最新のタンドラは中古車でも1000万円以上となるため、現実的には「先代タンドラの状態がいいやつ」がターゲットとなるだろう。その場合の予算目安は、先に記したとおり「総額670万~800万円ぐらい」といったイメージである。
 

ランドクルーザー300▲タンドラの運転席まわり。トヨタ車だが北米向けモデルであるため、ハンドル位置は全車左となる

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亡命先⑤:スズキ ジムニー(JB64型)+ポルシェ カイエン(2代目)
→想定予算|総額680万~750万円

ここまでは「ランクル300と同等か同等以上の実力を備えた1台のSUVで、いつまでたっても納車されないランクル300の代替とする」というニュアンスで話を進めてきた。

しかしよく考えてみれば、車というのは1台に限定する必要は特になく、2台を同時に所有したって構わないわけだ。

そしてもっと言ってしまえば、ランクル300のような大ぶりで高級なSUVは、いくら悪路走破性能が高かったとしても、実際のアウトドアシーンでは若干使いづらい部分もある。ボディがデカいため、細い山道を通るのがけっこう難しかったり、またそもそも高級でビカビカであるがゆえに「キズを付けたくない!」みたいな気持ちが働いてしまい、よりいっそう細い山道などが走りづらくなってしまうのだ。

とはいえ、ランクル300的な高級SUVには「行き帰りの運転がラク」「車内が広いから、大勢の人と多くの荷物を積むことができる」という美点があるのも確かではある。

であるならば――「大と小の2台」を同時に持てばいいのではないか? 自分1人か、もしくは2人程度でロンリーなアウトドアを本気で堪能したい場合は機動力の高い“小”を使い、家族や友人などとのんびりめの楽しいアウトドアを楽しみたいとき、あるいは都市部でフツーに用事を済ませたい際には、楽ちんな“大”を選ぶ――という使い分けだ。

そしてこの2台体制を敷く場合、“小”については「現行型スズキ ジムニー」しかないだろう。
 

ランドクルーザー300▲こちらが現行型となるスズキ ジムニー(JB64型)。車幅の狭さも含め、山岳路を走るうえでは世界的に見ても「ベスト」と言える選択肢だろう
ランドクルーザー300▲こちらがスズキ ジムニー(JB64型)の運転席まわり

現行型のスズキ ジムニーは機構面でも最強レベルのオフローダーだが、「そもそもボディが小さい(狭い)」ということが、さらにジムニーを最強たらしめている。「ジムニーで行けない場所などない!」と言ってもいいぐらいだろう。そしてその中古車は今、かなり状態の良いやつを総額180万円ぐらいから買うことができる。

で、人生にはさすがにジムニーだけではいろいろツラい局面もあるため、何らかの“大”も買うことになるわけだが……“大”に関しては、お好みに応じて何でもお好きなモノを買えば良いのではと思う。トヨタ RAV4あたりでもいいし。

とはいえ、本稿のテーマである「ランドクルーザー300を買った場合と同等または同等以上の満足感を得る」というためには、もう少しプレステージ性が高いモノを選んだ方がいい気もする。……ちょうどいいのは「先代ポルシェ カイエン」の中古車だろうか? 言わずと知れた素晴らしい走りを舗装路で披露するドイツ製プレミアムSUVであり、雪道なども、その気になればガンガン走れることができる。
 

ランドクルーザー300▲悪路を走れると同時に、舗装路では並のスポーツカー以上の走りも可能なポルシェ カイエン。写真は先代カイエンのGTS
 

よりプレステージ性が高い現行型カイエンはさすがにまだかなり高いが、先代であれば総額500万円前後で、なかなか状態の良い“後期型”を見つけることが可能だ。

コンディションの良い先代後期型ポルシェ カイエンと、現行型スズキ ジムニーという組み合わせ。それは「地球上で最高レベルに素晴らしい組み合わせ!」とまでは言わないが、「……かなりステキな組み合わせ!」であるとは言えるだろう。間違いなく。
 

ポルシェ カイエン▲こちらが2代目ポルシェ カイエンの運転席まわり。グレードにより細かな違いはあるものの、おおむねこのようなテイスト

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文/伊達軍曹 写真/尾形和美、トヨタ、メルセデス・ベンツ、ジャガー・ランドローバー、スズキ、ポルシェ
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。