「平成カーラバーズ MEETING 2nd」で出会った“過去の不人気車に新たな価値を見いだす若者たち”が素敵だった
2019/11/30
昭和世代にとっての人気・不人気は、平成生まれの彼らには無関係?
平成生まれの、平成生まれによる、平成生まれのための自動車愛好任意団体「平成カーラバーズ」。同団体はまさに『平成カーラバーズ』と題したムック本を制作し、今年7月に上梓しているが、「平成生まれの車好き」が集うイベントも主催している。
2019年11月9日に横浜市で開催された「平成カーラバーズ MEETING 2nd」は、タイトルどおり平成カーラバーズにとって2回目の主催ミーティング。
「平成生まれの車好き」という共通項はあるものの、実際は多種多様な年代およびカテゴリーの車が集まったイベントだけあって、「参加者の傾向はこんな感じでした」みたいな形でイージーにまとめることはできない。
だが少なくとも感じられたのは、「お若い人々は、昔の人(=筆者のような昭和世代)がその不人気車に対して下した評価とはまったく別の『新たな価値』を、ちょっと古い車のなかに見いだしているのだな」ということだった。
「この車の魅力を見いだせた自分をホメてあげたい!」
……サターンといえば、昭和世代にとっては(関口さんには大変失礼だが)ある種「嘲笑の対象」ですらあった。
サターンというのは米GMが1985年に作った小型車ブランドで、1997年には小型車天国である日本に進出。最初は「日本車キラーか?」と言われたが、高品質な日本製小型車に慣れた日本のユーザーにはてんで売れず、2001年にはあっという間に撤退してしまった。
筆者はとある書籍の編集を担当した際、サターンについて「幻の日本車キラーは、自らをキルして早々に日本から撤退」という失礼な見出しを付けたものだ(すみません)。
だが00年式サターンSC2 3ドアクーペと「同い年」である19歳の関口さんには、そんな余計な先入観などいっさいなかった。関口さんにとってのサターンは、「ただただレアでカッコいい車」だったのだ。
「もともとはホンダのアコードワゴンが好きで、カーセンサーnetでそれを探してたんです。その途中でサターンとかいう車名が出てきて、聞いたこともないブランド名だったので『……なんだコレ?』みたいな感じで調べ始めたのですが、そうしたらサターンの魅力にハマってしまいまして(笑)」
サターンの魅力……ですかぁ。
「何言ってんですか! すっごく魅力的じゃないですか!」
そそそ、そうですか?
「そうですよ! 特にこのフロントバンパーからサイドを経てリアまでつながってるラインはセクシーだし、ステアリングホイールのデザインも個性的でカッコいいし! あとまあ実際はですね、ちょっとチープなところが逆にシブいと思ってますし、『この車の魅力をわかってあげられるのは、日本広しといえども自分ぐらいだろ!』みたいな、ある種の特殊な優越感……もあって好きなんですけどね」
購入時のボディカラーは地味なシルバーだったそうだが、ご自分の趣味に合わせて「北米仕様ホンダ フィットのブルーラズベリーメタリック」に全塗装した。
……なるほど確かに、関口さんに力説されているうちに、サターンSC2の造形がちょっと魅力的に見えてきた筆者ではある。少なくとも「売れ筋の国産ハイブリッド車を買いました」とか言われるより数百倍は感銘を受ける、個性的で頼もしい選択だ。
絶滅警報発令中の「スマート ロードスタークーペ」に恋をした24歳
前出のサターンと違いスマート ロードスターおよびロードスタークーペは、昭和世代である筆者も新車時から常々「カッコいい!」と思っていた1台だ。
だがこちらもサターンほどではないにせよ、てんで売れなかった。
スマート ロードスターおよびロードスタークーペというのは、第1世代スマートのスポーツモデル。2人乗りとなる超軽量ボディのリアに、通常のスマート以上に強化された698ccの直3ターボエンジンを搭載。峠の下りでは、ヘタな重量級スポーツカーをぶっちぎれるぐらいのハンドリング性能を有しているファンな車だ。
電動ソフトトップを備えているのが「ロードスター」で、2分割の脱着可能な樹脂製ハードトップを備えたのが「ロードスタークーペ」。筆者に言わせれば最高にカッコいい車なのだが、てんで売れずにソッコーで廃番となり、その中古車も昨今は絶滅傾向だ。
「で、その中古車を大学生活の終わり頃、スマートの専門店まで試乗しに行ったのですが……」
当時は美大に通っていて、現在はカーデザイナーをしている中野さんだけあって、スマートロードスターの造形美にはグッときたようだ。
「や、僕がグッときたのは『ロードスタークーペ』の方です。クーペの方が断然カッコいいと思ってますので、そこんとこはハッキリさせてください」
失礼しました……。で、ロードスタークーペを試乗し、大いに気に入った中野さんだったが、販売店に戻ると、スタッフから「すみません。その車はたった今、前から検討されていた別のお客さんに決まっちゃいまして……」と告げられたそうだ。
通常の車であれば「じゃあ同車種の別個体を買います」となるところだが、あいにくスマート ロードスタークーペは超レアな存在なため、「別の個体」というのがほとんどない。
そのため中野さんはスマート ロードスタークーペの購入をあきらめた……かというと、そんなことはなかった。
「スマートの専門店さんでしたので、『待っていれば、いつかはこのお店に戻ってくるだろう』と思い、待つことにしたんです。何台も何台も車を所有してらっしゃる人に買われたと聞きましたので、そういう人なら、比較的早いタイミングで手放すこともあるでしょうし」
そして実際、その個体はその販売店に戻ってきた。今年6月のことだった。
「で、買った……という次第です。この『シャンパンリミックス』というボディカラーは最高ですし、ゴーカート的なキビキビしたハンドリングも気持ちいいのひと言です。こんな素晴らしい車がなぜ売れなかったのか、僕には理解できませんね。ただ……」
ただ?
「雨の日は、どうしても2分割のルーフから雨漏りするんですけどね(笑)。おかげでカーペットは水びたしになってしまうのですが、『どうせなら!』ということでカーペットは取り払っちゃいました。でもまあ逆に『ロータス エリーゼみたいでカッコいい!』と思えなくもないので(笑)ノープロブレムです」
過去の人々が「販売台数」という形で下した評価など特に気にせず、自分ならではの「歴史に汚染されていないオリジナルな判断軸でその車を素直に評価できる」というのも、平成世代なカーラバーの特徴なのかもしれない。
自動車ライター
伊達軍曹
外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル XV。
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