【フェルディナント・ヤマグチ×編集長 時事放談】オートモビルカウンシル オーガナイザーに聞く、イベントが目指す姿とは?(後編)
カテゴリー: トレンド
タグ: クール / 高級 / エモい / 時事放談 / オートモービルカウンシル / フェルディナント・ヤマグチ / 編集部 西村泰宏
2022/04/15
みなさまごきげんよう。 フェルディナント・ヤマグチでございます。
4月15日から17日の日程で開催されるオートモビルカウンシル。
その実行委員会代表である関雅文さんは、長く三菱自動車で勤務した後、電通に転職。その後、起業しオートモビルカウンシルをスタートさせたそうです。
「私は業界に育ててもらった人間。だからこそ何らかの形で業界に恩返しがしたい。そして自分が育てたイベントを、日本の自動車産業を今以上に発展させたいという人に継承してもらいたい」
関さんの熱い思いに圧倒されるとともに、感動しました。
でも、関さんはなぜヘリテージカーのイベントをスタートさせたのでしょうか。今回はそのあたりから話を伺っていきましょう。
クラシックカーのショーは町おこしにピッタリなイベント!
前回に引き続き、オートモビルカウンシルのお話をできたらと思います。
前回は関さんの話があまりにおもしろくて、ほとんど喋らずに聞き入ってしました。今回は僕も話に参加しながらオートモビルカウンシルの魅力を紐解いていかせてください!
よろしくお願いします。ところでフェルさん、日本で町おこしをしようと思ったとき、何をするのが一番だと思いますか?
突然町おこしのお話ですか? なんだろう。人がたくさん集まるものがいいでしょうから、アートフェスとかかな。
惜しい(笑)。日本の町おこしで最も有効と言われているのは音楽フェスです。
あ、なるほど。確かに音楽フェスはあちこちでやっていますね。音楽ジャンルによっては若い子たちだけでなく年配の方も参加しやすいし。
アートフェスだと美術館のような箱が必要になりますからね。逆に音楽フェスは野外でのんびり聴くのが気持ちいい。
ではもう一つ質問です。ヨーロッパでは町おこしや村おこしをするのに何が最も適していると言われているかわかりますか?
ヨーロッパですか。なんだろう。一口にヨーロッパと言っても広いので、いろいろなものが考えられそうです。
フードフェスとか、ビールやワインのフェスとかが盛り上がるイメージですね。
実はヨーロッパでは、村おこしに最も有効だと言われているのはクラシックカーフェスなんです。
クラシックカーですか! 確かにヨーロッパは自動車が文化として根付いていますが、意外な気もしますね。
フェルさんがおっしゃるようにヨーロッパには古くからクルマが単なる工業製品ではなく文化として根付いています。そして古いクルマがたくさんあるので、人気のものを集めると、多くの人が集まるのです。
日本も自動車の歴史は長くなりましたが、文化になっているかというと少し違いますね。むしろ新しいクルマのほうに注目が集まります。
昔の雰囲気を楽しみたかったら当時のクルマに乗るしかない
ところで、ヘリテージカーというと一般的にはお金を持った人の趣味というイメージがありますよね。前回も諸先輩方から「もっと高いクルマを集めたほうがいい」という話があるとおっしゃっていました。
媒体でもどうしても高いクルマや、希少車がフィーチャーされる傾向がありますね。地方にある納屋から古いフェラーリが出てきたとか、格好のネタになります。
話としてはおもしろいもんね。でも関さんはそことは異なる視点でヘリテージカーを見ているように感じました。その理由をもう少し詳しく教えてもらっていいですか?
では、腕時計を例にお話しましょうか。機械式のアンティークウオッチは日本でも人気があります。
アンティークウオッチは手頃な価格帯のものも多数あります。一方で希少性が高いものだとかなり高額で取引されています。
そうですね。でも希少性や美術的な価値などを横に置けば、アンティークウオッチと同じものを今の技術で作ることはできます。
そうですね。それを欲しいと思うかは別ですが。
でもクルマという工業製品は、例えば1960年代のものとまったく同じものを作ろうと思っても作ることができません。
確かに。よく「昔のデザインのまま中身だけ最新のクルマがあればいいのに」という人がいるけれど、当時と現在では法規が異なるから同じ形のものを再現できない。
衝突安全性を高めるためにボディは大きくなったし、様々な制御を載せなければならないから重量も重くなりました。仮に当時と全く同じものを作ったとしても、それは現代の基準に合致していないので公道を走らせることができませんね。
そのとおりです。つまり昔の走りを味わいと思ったら、当時のクルマに乗るしかありません。例えば、現行型のカローラは最も軽いモデルでも1250kgあります。一方で、私が所有している1.3Lのクルマは1tよりはるかに軽い。
どれだけボディ剛性が高くなったり、エンジンのパワーが出せるようになったとしても、クルマにとって軽さは絶対的な正義ですからね。
現代のクルマと比べるとはるかに剛性が低いところも、別の見方をすれば当時のクルマでしか味わえない味だったりします。エンジン音やスピード感も異なりますし、この“運転している感覚”は値段なんて関係ない。だからオートモビルカウンシルには300万円以下のものから1億円を超えるものまで、“ヘリテージカー”として同列に展示しているのです。
ヘリテージカーを見ながら素敵な音楽を楽しめる!
いやあ、とてもおもしろい話を聞かせていただきありがとうございます。そんな関さんにちょっと意地悪な質問をしてもいいですか? 関さんは新しいクルマについてはどのように考えているのですか?
意地悪でもなんでもないですよ。僕は新しいクルマにすごく興味があります。
アナログ一辺倒というわけではないのですね。
今、小学生くらいの子供たちにとって、きっと現代のクルマが数十年後にヘリテージカーとなるはずです。例えば私にとってランエボなんかは“つい最近の新しいクルマ”ですが、40代くらいの人にとっては十分ヘリテージカーでしょう。
同じクルマでも人によって感じ方は変わってきますね。
そう。その人が生きてきた歴史の中で、自分たちが憧れたものがヘリテージカーになっていくのだと思います。私はそういう価値観をクルマの中に見出すきっかけを作れたらと思っているんです。
ヘリテージ=30年経たなきゃダメよ、というものではない?
違いますね。オートモビルカウンシルにはファンの方たちが入っているクラブがあって年に2回ツーリングをしているのですが、私はそこにテスラでいらっしゃる方がいたら大歓迎しますよ。いろいろな価値観があって、それを互いに認め合ってクルマを楽しめたら最高だと思います。
いやあ、関さんの話を伺ってオートモビルカウンシルに行くのが楽しみになりました。最後に今年の見どころを伺ってもいいですか?
多くのショップが様々なヘリテージカーを出展するのはもちろんですが、今年は世界三大ピアノと言われるベーゼンドルファーをセッティングしてピアノとバイオリンの生演奏を行ないます。
クルマのイベントでライブがあるのですか?
はい。他にもチェリストの溝口肇さん、ジャズギタリストの渡辺香津美さんの演奏もあります。
もしオートモビルカウンシルが一般的な自動車の即売会だったら、まずそんなプログラムはないでしょうね。
ですよね。オートモビルカウンシルは夢の3日間で、来場された方に「やっぱり自動車っていいな」と思ってもらえるようなイベントになっていると自負していますよ。この世界はどうしても男の趣味というイメージが強いのですが、私はぜひご夫婦で楽しんでもらいたいと思っているんです。
ショッピングを楽しめるマルシェがあるのも関さんのそんな思いからですか?
おっしゃるとおりです。オートモビルカウンシルは“自動車に文化を”と言っていますが、これもひとつの文化だと思っています。
カーセンサーも、そういうオートモビルカウンシルの雰囲気が素敵だなと思って協賛させてもらっています。
日本には音楽、アート、食など世界に誇る文化がたくさんあります。私たちが文化を作るのももちろん大切ですが、そういう文化の中に自動車が入っていくことも重要だと思うんですよね。そのためには自動車業界がもっと努力をしなければいけない。でも私はきっとできると信じています。そんなことを妄想しながらイベントを実行するのが私の楽しみです。
関さん、そしてフェルさん、西村さん。今回は長時間、楽しい話をありがとうございました。次回はフェルさんがオートモビルカウンシルの会場の様子をレポートしてくれます。みなさん、お楽しみに!
コラムニスト
フェルディナント・ヤマグチ
カタギのリーマン稼業の傍ら、コラムニストとしてしめやかに執筆活動中。「日経ビジネス電子版」、「ベストカー」など連載多数。著書多数。車歴の9割がドイツ車。
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