5代目となる新型プリウス▲ハイブリッド車の先駆け的存在であるトヨタ プリウス。新型となる5代目は2023年1月に登場した

新型 トヨタ プリウスの燃費はどのくらい?

先進的なデザインで注目を集める新型プリウス。しかし、「肝心の燃費性能はどのように向上したのか?」「ハイブリッド車が一般化した現在において、その性能はどれほどのものなのか?」という人もいるだろう。

そこで新型プリウスの燃費性能を検証。旧型やライバル車と比べて本当に低燃費と言えるのか調べた。
 

 
 

旧型プリウス(50系)との燃費性能を比較

新型プリウスと旧型となる4代目の燃費性能を比べてみよう。結論から言うと、ハイブリッド車では新型の方が燃費性能で有利。対して、PHVでは燃費性能も電費性能も4代目がリードしている。
 

新旧プリウス▲5代目新型プリウス(左)と4代目旧型プリウス(右)の燃費を比較
新旧プリウスのハイブリッド比較表▲ハイブリッド車でのWLTCモード燃費の比較。ご覧のとおり新型は2WDでも4WDでも4代目より低燃費だ
新旧プリウスのPHV比較表▲PHVにおけるWLTCモード燃費・電費の比較。km/kWhは「1kWhで何km走れるか」という単位となっている

上記を見ると「新型は燃費があまり良くなっていない」という印象を受けるかもしれない。しかし、そう思うのは早計だ。両車の燃費性能の詳細を見れば、いかに新型が燃費性能に優れているかわかるはずだ。

新型と旧型の燃費性能の詳細

まず、新型の燃費性能をチェック。新型はグレードによってパワートレインが異なり、駆動方式とオプションの小口径タイヤを装備するか否かで、燃費性能が変動している。
 

新型プリウスの燃費表▲最も低燃費な1.8Lハイブリッドは法人グレードの「X」と、トヨタのサブスクサービス「KINTO」専用の「U」に設定。どちらも新車では一般販売されていない。2.0Lハイブリッドは上級グレードの「Z」とスタンダードの「U」に採用し、19インチタイヤが標準装備。17インチタイヤはオプション装備となる
新型プリウスPHVの燃費表▲PHVも19インチタイヤが標準で、17インチタイヤがオプション。基本的にタイヤのインチは大きいと走行安定性が高くなり、小さいと燃費性能が良くなる

対する4代目では、パワートレインはPHVを除いて同じ1.8Lハイブリッドシステムを搭載。ただ、グレードによって装着するタイヤのサイズが異なり燃費性能に違いが生まれている。
 

4代目プリウスの燃費表▲最も燃費が良い「E」は、新型と同様に法人グレード。タイヤはAプレミアム/A/S/Eでは15インチ、Aプレミアム/A/Sに設定されたパッケージオプション「ツーリングセレクション」では17インチを採用している
4代目プリウスPHVの燃費表▲PHVは15インチタイヤが標準。オプションで17インチタイヤが用意されている

もうすでにお気づきだと思うが、新型と4代目の燃費・電費に大きな差が生まれなかったのは装着するタイヤのインチが違うことに起因する。同じ17インチタイヤで比較すると、燃費性能の向上は一目瞭然だ。
 

17インチタイヤでの比較表▲17インチタイヤ装着車同士での燃費比較。新型はボディの大型化とパワートレインの大排気量化されていることを踏まえると、ハイブリッドシステムの進化は明白だ

つまり、新型プリウスの燃費性能は「仕様・装備によって4代目との差はわずかだが、燃費性能自体は大きく向上した」と言える。

これは「新型は燃費性能以上に走行性能や乗り心地にこだわった」とも捉えられるだろう。それでいながら、ハイブリッド車では4代目よりも低燃費としたのは見事だ。
 

5代目プリウスの走行シーン▲新型のPHVでは、駆動用の大容量バッテリーや高出力モーターによる新開発のプラグインハイブリッドシステムを搭載。1回の充電における走行距離(充電電力使用時走行距離)は87~105kmと、4代目の50~60kmから延長されており、使い勝手が良くなっている
4代目プリウス▲4代目は2015年12月から2022年11月まで生産。PHVは2017年2月に追加された。デビュー時にはハイブリッド車でJC08モード燃費34.0~40.8km/Lを達成。世界トップクラスの低燃費で話題を集めた。カーセンサー掲載台数はハイブリッド車が約5000台、PHVが約900台(2023年11月24日現在)。総額の価格帯はハイブリッド車が88.9万~442.4万円、PHVが125.8万~372.7万円だ
 

他車との燃費性能を比較

新型プリウスとよく比較される現行型4車種と燃費性能を見比べてみよう。具体的にはトヨタ アクア、トヨタ カローラ、日産 ノートオーラ、ホンダ シビックの最新モデルと比較。結果は下記のとおりだ。
 

プリウスと他車との比較表▲ライバル車種との燃費比較。ガソリン車やPHVなどパワートレインの違いだけでなく、GRスポーツやNISMOといったスポーツグレードも含む

比べてみると、燃費性能が高いのはアクア>プリウス>カローラ>ノートオーラ>シビックという順番だった。ただ、ボディの大きさではプリウス>シビック>カローラ>アクア≧ノートオーラという並びになる。

プリウスのサイズは全長4600mm×全幅1780mm×全高1420~1430mm。唯一燃費性能で優ったアクアは全長4050~4095mm×全幅1695mm×全高1485~1505mmだ。一回り以上もボディが大きいことを踏まえると、新型プリウスは十分以上に低燃費と言える。
 

トヨタ アクア▲コンパクト・ハイブリッドカーの先駆けであるアクア。2代目となる現行型は2021年7月に登場し、現時点で全乗用車の中で2位に輝く低燃費だ。アクセルペダルの操作だけで滑らかに加減速ができる「快感ペダル」の採用もトピックだった。カーセンサー掲載台数は約380台。車両平均価格は約210万円で、総額の価格帯は150.3万~312.8万円だ

トヨタ カローラ▲12代目となる現行型カローラは2019年9月に登場。TNGAのGA-Cプラットフォームが導入しながも、国内専用に設計されている。スタイルやデザインはスポーティだが、乗り心地はセダンらしく快適だ。カーセンサー掲載台数は約220台。車両平均価格は約195万円で、総額の価格帯は138万~288.8万円となっている

日産 ノートオーラ▲日産 ノートのプレミアムモデルであるオーラ。初代となる現行型は、2021年8月に登場した。ノートよりボディが大きく、内装の質感も向上。パワートレインには第2世代となる「e-POWER」が搭載され、電動四輪駆動システム「e-POWER 4WD」も設定されている。カーセンサー掲載台数は約670台。車両平均価格は約260万円で、総額の価格帯は195.9万~358.6万円だ

ホンダ シビック▲11代目となる現行型シビックは2021年9月に登場。日本ではハッチバックのみの展開となっている。乗員すべてが「爽快」になることを掲げて開発され、乗り味はマイルかつスポーティ。ハイパフォーマンスのタイプRに加え、ガソリン車にもMTが用意されている。カーセンサー掲載台数は通常モデルが約270台で、タイプRが約50台。総額の価格帯は通常モデルが256.9万~412.5万円、タイプRが620万~819.8万円だ
 

新型プリウスの燃費が良い理由は?

では、新型プリウスの燃費性能はなぜ高まったのか? 大きな理由は2つある。

空力性能の改善

新型は4代目より50mmほど背が低い。ボディ形状もフロントからリアにかけて緩やかなカーブとした。加えて、運転席に「除電スタビライジングプラスシート」を採用し、静電気による空気の乱れを抑制。風を受け流す工夫を随所に施すことで、燃費性能を高めている。
 

横からみた新型プリウスの走行▲車両の床下に配置されたエアスパッツやフロアカバーなどの形状も最適化されている

ハイブリッドシステムの向上

搭載されたのは第5世代ハイブリッドシステム。1.8Lシステムでは電動モジュールが刷新され、2.0Lシステムでは小型・軽量・高効率化技術が導入された。いずれのシステムでも運動性能と燃費性能を両立している。

4代目よりボディが大きくなった新型だが、エアロダイナミクスとハイブリッドシステムの高効率化によって、燃費性能に磨きがかかった。
 

新型プリウスのシリーズパラレルハイブリッドシステム▲2.0Lのシリーズパラレルハイブリッドシステム。低燃費ながら従来型と比べて1.6倍の出力となっている
 

新型プリウスの走行性能や安全性能は?

新型プリウスの走行性能と安全性能は、新型のキャラクターをよく表している。その特徴を紹介しよう。

新型プリウスの走行性能

新型プリウスの走行性能は非常に優れている。第2世代となるTNGAプラットフォームと高剛性なボディによって、操縦安定性が向上。サスペンションでは車両応答性を高め、乗り心地もフラットだ。コーナリングはスムーズで、ステアリングフィールも良い。

刷新されたハイブリッドシステムは高出力で、2.0Lモデルは0-100km/h加速で7.5秒を達成。PHVではモーター出力を強化し、0-100km/h加速が6.7秒とスポーツカー並みの加速力となった。しかも、PHVはEV走行距離が伸びており、静粛性も格段に高まっている。

電子制御ブレーキシステムの進化も見逃せない。油圧ブレーキと回生ブレーキの協調を高め、ブレーキングも自然。総じて走りの質感やスポーティさが高められており、「クラストップレベルの低燃費」という持ち味に、洗練・高品質といった魅力も兼ね備えられた。
 

新型プリウスのサーキット走行▲ZとGは標準仕様の19インチタイヤを装着すると、乗り味はスポーティ。対して、オプションの17インチタイヤを装備すると、マイルドな乗り心地になる

新型プリウスの安全性能

新型プリウスの安全性能は高い。最新の予防安全パッケージ「トヨタセーフティセンス」を標準装備。検知対象を拡大しながら、トヨタ車として初となる機能も採用している。

例えば、後続車の接近を感知してブザーで危険を知らせる「後方車両接近告知」を装備。他にも、後方車両が非常に接近するとドライバーに警察・ヘルプネットへの接続を提案する「周辺車両接近時サポート(録画機能・通報提案機能)」などが採用されている。

自動操作で駐車を支援する、トヨタ チームメイトの「アドバンスト パーク」も採用。縦列駐車においては前向きとバック両方の出庫と駐車に対応している。初代から先進を追求してきたプリウスだけあって、先進安全装備も充実した。
 

新型プリウスのアドバンスト パーク▲アドバンスト パークはZに標準装備。Uにはパーキングサポートブレーキ(周囲静止物)、パノラミックビューモニターとセットでオプション設定されている
 

新型プリウスの中古車価格・流通量は?

新型プリウスの中古車は、カーセンサーで約470台が掲載。新車の納車待ちが多発している中、デビュー約1年で流通した数と考えれば多めだろう。

掲載車両の内訳を見ると、2Lハイブリッド車のUが約50台で、上級グレードのZが約375台と最多。2023年3月に追加設定されたPHVは約15台と少なめ。新車では一般販売されていない1.8Lハイブリッド車はXが約20台、Uが約10台と希少だ。
 

新型プリウス▲カーセンサー掲載物件の平均走行距離は約1900kmで、走行距離1000km以下が約310台と6割以上を占める

登録済未使用車が約155台なのもポイント。気になるお値段は車両平均価格が約425万円。総額での価格帯は299万~648万円だ。

新車とさほど変わらない価格だが、納車待ちが短く済むのは大きな利点。幸い上級グレードのZが大半なので、条件に合う物件があれば積極的に狙うのもアリだ。
 

▼検索条件

トヨタ プリウス(5代目・現行型) × 全国
 

歴代プリウスの燃費

最後に歴代のプリウスと、その燃費性能を振り返っておこう。燃費表示のモードが世代によって異なるため、わかりづらいかしれないが、いずれのモデルでも世代トップレベルとなる燃費性能を誇っていた。

初代(10系) 
燃費(10.15モード):28.0~31.0km/L
 

新型プリウス▲初代は1997年12月から2003年8月まで発売。世界初の量産ハイブリッドカーとして話題を集めた。ハイブリッドシステムの「THS」や空力に優れたデザイン、軽量設計のアルミホイールなど燃費性能を追求。デビュー時には10.15モード燃費28.0 km/Lを実現した。カーセンサー掲載台数は2台と希少。価格は1台が総額34.8万で、もう1台が101.1万円となっている

▼検索条件

トヨタ プリウス(初代) × 全国

2代目(20系)
燃費(JC08モード):27.0~29.6km/L

 

新型プリウス▲2代目は2003年9月から2009年4月まで販売された。初代とは異なり、ボディはセダン風ハッチバックに変更。空力に優れたトライアングルモノフォルムを採用した。加えて、THS IIを搭載することで、世界トップレベルとなる10・15モード燃費35.5km/Lを達成した。カーセンサー掲載台数は約50台。車両平均価格は約37.8万円で、総額の価格帯は 19.8万~95.2万円だ

▼検索条件

トヨタ プリウス(2代目) × 全国

3代目(40系)
燃費(JC08モード):30.4~32.6km/L

新型プリウス▲3代目は2009年5月から2015年11月まで発売された。THS IIなど2代目に導入された技術が進化し、デビュー時に10・15モード燃費で38.0km/Lを達成。PHVモデルやステーションワゴンの「プリウスα」など、モデル展開が多角的されたことも特徴だった。カーセンサー掲載台数はハイブリッド車が約3100台、PHVが約100台。総額の価格帯はハイブリッド車が30万~358.8万円、PHVが58.8万~168万円となっている

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トヨタ プリウス(3代目) × 全国
文/綱島剛(DOCUMENT) 写真/トヨタ、日産、ホンダ、阿部昌也、尾形和美

※記事内の情報は2023年11月15日時点のものです。
 

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