スズキ ジムニー▲趣味人のための車といえるスズキ ジムニー。圧倒的な走破性能だけではなく、その愛くるしいルックスゆえ気になっている人も多いはずだが、現実的な話、実際の燃費はどれくらいなのだろうか?

走りもルックスも最高レベル。だからこそ気になるジムニーの燃費

世界トップレベルの悪路走破性を誇る軽自動車……といえば、スズキ ジムニーをおいて他にない!

初代は国産四駆黎明期の1970年にデビュー。モデルチェンジしながらも、ラダーフレーム構造のボディ、前後リジッド・アクスル式のサスペンション、副変速機付き4WDシステムといった本格四駆にふさわしい、タフな構造を堅持してきた。

2018年7月に登場した現行型JB64も同様、伝統的なメカニズムを維持。そのうえでブレーキLSDトラクションコントロールや先進予防安全技術である「スズキセーフティサポート」といった電子デバイスも積極的に採用され、歴代モデル以上の快適性と安全性を手に入れているのがJB64型の特徴だ。

動力性能も軽自動車としては申し分ないが、燃費についてはいまひとつ……という噂があるのも事実。

そこで、この記事では現行型・JB64型ジムニーの燃費性能について、競合モデル、先代との比較などを通して徹底検証! 中古車情報も併せて紹介しよう。
 

 

現行型・JB64型ジムニーのグレード別燃費をチェック

まずはJB64型ジムニーのカタログ燃費(WLTCモード)をチェックしてみよう。

下記表を見れば分かるように、ジムニーの燃費は全グレードとも5速MT車が16.6km/L、4速AT車が14.3km/Lとなっている。

装備内容は「XC」が最も豪華、次いで「XL」となるが、車両重量はどのグレードも5速MT車が1040kg、4速MT車が1050kg。そのため燃費性能にグレードごとの差異はない。
 

スズキ ジムニー

なお、表に記載の燃費は最新モデル(2024年5月時点)のものであり、同じJB64型ジムニーでも2022年6月以前の5速MT車は16.2km/L、2021年9月以前の4速AT車は13.2m/Lとなっている。

燃費が向上した理由は停車時アイドリングストップシステムが追加されたからだ。

つまりストップ&ゴーの機会が多い人は、新しい物件を選んだ方が燃費性能で有利と言える。
 

スズキ ジムニー ▲アイドリングストップ機構の効果は、走行シチュエーションによって異なる。ストップ&ゴーの多い市街地では効果を発揮しやすいものの、長距離移動メインの人にはあまり関係ないかも
 

【検証】現行型・JB64型ジムニーの実燃費は?

上記では、現行型・JB64型ジムニーのカタログ上の燃費をチェックしたが、運転の仕方や走行シチュエーションによって差異が生じやすいのは事実。

そこで、編集部では1週間ほどジムニーを使用して、実燃費を計測することに。結果は下記のとおり。
 

スズキ ジムニー※計測方法は満タン法

検証したモデル
スズキ ジムニー(JB64型) 
グレード:XC・5MT
※アイドリングストップシステム搭載モデル

前述のとおりXC・5MTのカタログ燃費は16.6km/Lだが、最終的な実燃費は13.8km/Lと、燃費達成率83.1%にとどまる結果となった。

ただし、今回の検証においては、日常使い時の激しい渋滞での走行が足を引っ張り、使用状況によってはもう少し良い結果になった可能性があることは申し添えておく。

 

スズキ ジムニー
 

ライバル、競合モデルとの燃費比較

続いてJB64型ジムニーと主な競合モデルのWLTCモード燃費を比較してみよう。条件を近くするために、今回は軽自動車&小型車のガソリン車、4WD仕様で比べてみた。

スズキ ジムニー

ご覧のとおり軽自動車はもちろん、1.2~1.5Lクラスの小型ガソリン車と比較してもジムニーの燃費はやや不利。さらに、同じ型式のエンジンを搭載するハスラーにも大きく差をつけられている。

これはジムニーのトランスミッションが4速ATなのに対して、競合モデルは燃費に有利なCVTを採用していること、ジムニーのシャシーや駆動系は耐久性・耐衝撃性・悪路走破性を重視しているがゆえに重いこと……などが主な要因だ。

スズキ ジムニー▲同社のハスラーはCVTを採用しているだけではなく、ハイブリッドシステムも搭載している

具体的な燃料代を試算してみる。ジムニー(4速AT・14.3km/L)で月間1000km、年間で1万2000km走るとすると、年間のガソリン代は14万2657円(レギュラーガソリン170円/Lで計算)。

対して、上記競合車の中で最も燃費の良いタフトの場合は9万6682円/年と、ジムニーよりも4万5975円/年少なくて済む計算だ。この差額を大きいと感じるか、楽しさの代償だから仕方ない! と思えるかは、その人次第だろう。
 

スズキ ジムニー ▲サスペンションの構造ひとつとってもジムニーは頑丈で、重量増につながっている

ちなみに、小型車であるダイハツ ロッキー&トヨタ ライズのガソリン代は11万7241円/年。ジムニーよりも安いが、各種税金、保険料は軽自動車の方が圧倒的に低い。

ロッキー&ライズの自動車税、重量税、自賠責保険料の合計額が6万2320円なのに対して、軽自動車は2万9230円。つまり、ランニングコスト全体で考えるとジムニーの方が安く済む可能性が高いのだ。

 

ジムニーの魅力と検討するときの注意点

競合車との比較でも分かるように、車を選ぶときに燃費性能を最重視するなら、ジムニーはあまりオススメできない。最近の軽自動車はハイブリッド化が進み、低燃費なモデルがたくさんあるので、そちらを選ぶのが正解だろう。

また、車両価格も他の軽自動車より高めだ。ただ、そうしたコストを上回る魅力がジムニーにはたくさんある。その中から3つ紹介しよう。

①デザイン性が抜群に良い!
スクエアなフォルムに丸いヘッドライト、いかにも四駆らしい外観に惹かれてジムニーを好きになった人は多いはず。四角いボディはオフロードでぶつけにくく、タイヤの位置を把握しやすい。デザインまで機能優先なのだ。

スズキ ジムニー ▲前後オーバーハングをギリギリまで切り詰めたデザインも悪路走破性向上のため

②圧倒的な悪路走破性能
デコボコ地形でサスペンションがよく伸び縮みするから、極悪地形も走破できる。洋の東西を問わず、新旧も問わず、あらゆる四駆に引けを取らない悪路走破性能の高さ……それこそがジムニー最大の魅力だ。

スズキ ジムニー ▲カスタマイズせずともオフロードコースや林道を安心して走れる

③使い勝手の良さ
コンパクトだから狭い道にも入っていける、荷物もそこそこ積める。全車ターボ仕様だから加速もキビキビ。現代のジムニーは日常での使い勝手も決して悪くない。

スズキ ジムニー ▲荷室のキャパシティも軽自動車としては十分。助手席を倒せば車中泊も可能

デザインの良さ、地形を選ばずにどんな所にも入っていける機動力、日常使いも不満のないマルチパーパス性。燃費性能については競合車に多少劣るが、上記のようなメリットは欠点を補って余りあるものだ。

つまり、多少燃費を犠牲にしたとしても、上記のようなメリットに魅力を感じることができる人には、ジムニーをオススメすることができる。

 

JB64型ジムニーの中古車価格や流通台数は?

新車だけでなく、中古車市場においても絶大な人気のJB64型ジムニー。現在の中古車市場には1900台前後の物件が流通している。2018年7月のデビューから約6年、流通量は非常に豊富と言えるだろう。

気になるのは価格だが、価格帯は140万~420万円と非常に幅広く、中古車平均価格は230万円前後となっている。新車価格が145.8万~200.2万円であることを考えると、かなり高めの水準だ。

スズキ ジムニー ▲新車人気は今なお高く、注文から納車までに1年以上かかるケースも

もともとジムニーはJB64型に限らず中古車市場での人気が高く、中古車相場が下がりにくい傾向にある。

モデルライフが長く、中古でも古さをあまり感じないこと、耐久性に優れているため、走行距離が多くてもメンテナンスさえしていれば長持ちすること、リセールバリューの高さなどが理由だ。

そうした元々の人気に加えて、JB64型は新車の納期が長くかかることも中古車人気を引き上げている要因のひとつだろう。

全流通台数の半数近くが2023~2024年という新しい年式、走行距離1万km未満の物件に集中していることも、中古車平均価格の高さにつながっている。

2023~2024年式のボリュームゾーンは230万円台だが、デビュー直後の年式なら190万円台にまで下がる。それでも新車の最上級グレードとほぼ同じ価格だが、“待たずに手に入る”というメリットはそれだけ大きい。

スズキ ジムニー ▲上級グレードの人気が高いのもJB64型ジムニーの特徴

グレード別分布では全流通量の8割以上が最上級グレードである「XC」、廉価グレードの「XG」は極めて少数だ。なお、2022年7月までの「XG」「XL」には先進予防安全技術である「スズキセーフティサポート」が装備されていない物件もあるので、安全性を重視する人は注意されたい。

ちなみに、トランスミッション別では4速AT車が全体の7割以上。オフロード走行を積極的に楽しむなら、また燃費を重視するなら5速MT車の方が有利だが、JB64型については街乗り重視・快適さ重視のオーナーが多いと推測できる。

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いまだに人気の先代・JB23型ジムニーの燃費は?

ここまでは現行型となるJB64型ジムニーについて解説してきた。

しかし、中古車市場では従来型ジムニーも大人気。ところで燃費性能の面では、従来型と現行型、どちらが優れているのだろうか?

先代となるJB23型と現行JB64型のカタログ燃費を比べてみると……。

実は先代が新車販売されていた当時の燃費計測モードは現在の「WLTCモード」とは異なる「JC08モード」なので、単純比較することはできない。JB23型(4速AT)のJC08モード燃費は13.6km/L。JB64型(4速AT)のWLTCモード燃費が14.3 km/Lだ。

スズキ ジムニー ▲JB23型ジムニーは1998年10月にデビューしたモデルで、約20年にわたって生産された

WLTCモード燃費はより実走行燃費に近いとされており、ざっくり、JC08モード燃費の8~9割程度になることが多い(車種によって異なる)。

それを考えると、燃費性能においては先代より現行型が大幅に有利と言って間違いないだろう。実際、JB64型では新たにATロックアップ機構やアイドリングストップ機構を採用し、燃費向上が図られている。

ただし、中古車として購入することを考えると先代JB23型は現行JB64型よりも、かなりお安く手に入る。中古車平均価格は180万円前後、中古車流通量も2200台前後と豊富で、手に入れやすい。燃費性能だけでなく、総合的なバリューで選ぶべきだろう。

スズキ ジムニー ▲JB23型の安全装備などは現行型・JB64型と違って最低限のものだ

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現行型・JB74型ジムニーシエラの燃費は?

ジムニーと比較検討する車種として有力候補になるのが、小型車版であるジムニーシエラだ。見た目はジムニーをワイドにした程度の違いだが、エンジンは1.5L自然吸気で全く別。動力性能は当然、ジムニーシエラの方が有利だが、燃費性能についてはどうか?

現行型・JB74型ジムニーシエラのWLTCモード燃費は5速MT車が15.4km/L、4速AT車が14.3km/Lとなっている。

5速MT車の燃費はジムニーの方が若干有利なものの、4速AT車では同等だ。ガソリン代もジムニーとほぼ同等の金額で済みそうだが、前述のように各種税金、保険料は軽自動車であるジムニーの方が小型車となるジムニーシエラより年間3万円以上も安い。

スズキ ジムニー ▲大きなオーバーフェンダーが装着されているジムニーシエラ

ちなみに, JB74型ジムニーシエラの中古車流通台数は1200台前後と、こちらも豊富。中古車平均価格は260万円前後となっている。

ジムニーと比較検討する際には、パワフル&トルクフルなこと、車幅がワイドになって走りに安定感がもたらされること……といったジムニーシエラならではのメリットと、車両購入費用、ランニングコストの違いを比べて総合的に判断すべきだろう。

スズキ ジムニー ▲トレッドもジムニーよりワイドになるため、走りも安定感がある

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※記事内の情報は2024年5月24日時点のものです。
 

文/田端邦彦 写真/尾形和美、スズキ、編集部
田端邦彦(たばたくにひこ)

自動車ライター

田端邦彦

自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。

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