【海外試乗】新型 マセラティ GT2ストラダーレ|マシンと一体になれる“公道仕様”の高性能ミッドシップスーパースポーツ
カテゴリー: マセラティの試乗レポート
2025/03/14

エンジンはMC20からの大きな変更はないが、トータルパフォーマンスは一気に向上
ところはスペイン、アスカリというプライベートサーキット。以前からスポーツカーのテストドライブによく供される1周5kmちょいのコースだったが、そのバラエティに富んだコーナーの最初のいくつかをクリアするうちに、見た目の印象そのままに、つまりは期待どおりのパフォーマンスの持ち主であることを確信した。
ドライバーの要求したすべての動きにまるでためらいなく反応する。前輪はすこぶる正確に動き、その位置も状態も両腕を通して手に取るように脳へと伝わってくる。同時に後輪にためられた力の量が足裏や尻腰にも如実に伝達する。つまり、ドライバーが介入することでマシンが一体となる感覚があるのだ。高性能ミッドシップカーの証しである。
ジェントルマンドライバーの最高峰“ファンテックGT2選手権”において初年度参戦ながらチャンピオンとなったマセラティ GT2。見た目にMC20との関連性はあらゆるディテールにおいて明らかで、見えない部分でも例えばカーボンファイバーモノコックボディを共有する。一方、GT2のエッセンスも積極的に取り入れた。フロントバンパーやボンネット、ルーバーフェンダー、サイドエアインテーク、リアディフューザー、巨大なスワン型リアウイングなど、GT2のデザインをベースにロードカー用へデザインし直している。これらカーボンファイバー主体の空力デバイス群により、エアロダイナミクスはもちろん、冷却性能も大いに引き上げられ、結果、総合性能の大幅アップを果たした。20インチ鍛造アロイホイールもGT2と酷似したトライデント風スポークデザインだ。
一方で、純マセラティ開発のV6ネットゥーノエンジンを主体とするパワートレインスペックに目を見張る変更はない。最高出力はわずかに10psアップの640psで、最大トルクは逆に10N・mダウンの720N・m。そもそも効率的で高出力なエンジンゆえ、空力などを踏まえた総合性能アップと乾いた雑巾を絞るかのごとき軽量化を考慮すれば、数値にこだわることなく総合パフォーマンスを上げることができたというわけだろう。


ドライバーの脳を刺激するスリルと速さ
サーキットを楽しむ。思っているよりも相当に速く走れてしまう、という印象を抱く。それゆえ自分の反応が多くのコーナーで遅れ気味になっていることがもどかしくて悔しい。必死になって頑張るほどマシンの方がノリノリになって一歩先をいく感覚だ。
ことにタイトコーナーからの立ち上がりや、高速コーナーでクリップにつくときの重心の預け具合が気持ち良い。軽いのに、ズシリ。高い空力性能のたまものだろう。そのサウンドは決して官能的ではないものの、有り余る力強さでもってネットゥーノはドライバーの脳を刺激する。
テストカーにはオプションのパフォーマンスパックが装備されていた。ミシュランのパイロットスポーツカップ2Rにコルサ・エボモード(4段階)に対応するe-LSD・MSP(マセラティスタビリティプログラム)・TCS・ABSセッティング、カーボンセラミックブレーキ、4点式シートベルトなどが備わる。コルサモードはMSPやTCSを全カットする最もスパルタンなレベル1から、ABS以外の反応を適度に抑えたレベル4まで用意されていた。筆者は安全を期してレベル4で走ったが、それでもしばしば後輪がブレークするスリルを味わった。

特注カラー=フォーリセリエで仕立てられたブルーのGT2ストラダーレを駆って、今度は一般道のワインディングを軽く攻めてみる。ドライブモードはスポルト。
ライドフィールはさすがに硬質だ。サーキットでは扱いやすく感じた正確な前輪の動きもややニンブルに思えたし、後輪へ常に蓄えられるパワーがスリリングな展開を予期させる。フラットライドであることも、そんな印象に輪をかけた。ダンピングのセッティングだけ変更することもできるが、少しばかり緩めたとて“コンフォート”とは言い難い。もちろんカップ2Rというタイヤのキャラや、やる気満々のガンダム風カーボンシートも硬質なライド感の原因だろう。
もっともその気になって、公道であることを忘れ、運転に没頭できたなら話は別。ミッドシップRWDの血気盛んなパフォーマンスに夢中となって、乗り心地のハードさなどさっさと忘れてしまうだろう。
バイパスでクルージング。80km/hを超えたあたりから、フラットなライドフィールが功を奏して乗り心地もよくなった。“ガンダム”ではなく“スポーツ”シートを選べば、一般道でもなんとか使えそうである。なんといってもマセラティの真骨頂は“グラントゥーリズモ”なのだから。





自動車評論家
西川淳
大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。
ベースモデルとなるマセラティ MC20の中古車市場は?

プレチャンバー燃焼システムを採用した新開発V6 3Lツインターボエンジンを搭載する、新世代ブランドアイコンとなる2シーターミッドシップのスーパースポーツ。マセラティとしておよそ半世紀ぶりの量産ミッドシップモデルとなる。
2025年3月上旬時点で、中古車市場には50台程度が流通。支払総額の価格帯は2050万~4000万円となる。スーパースポーツでは希少な右ハンドル仕様が15台程度流通している。
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