サクラ

通勤と近場のレジャー用途ならEVは本当に最適なのか検証

軽自動車の電気自動車(以下EV)として2022年に登場した日産 サクラ。日常使いにわりきったスペックと、259万9300円~(補助金差し引き前の車両本体価格)という手に入れやすい価格でたちまち人気となり、国内販売では2年連続でEV販売台数ナンバー1を獲得しています。(2024年4月 日産調べ)

中古車流通台数も増え続け、お得な価格の物件が選べるなど非常に注目度の高いモデル。ただ、馴染みのないEVということもあり「本当に日常使いできるのか」「普通のガソリン車との使い勝手がどの程度違うか気になる」という声が多いのも事実。

そこで、「自宅マンションに充電器はあるけどEVは未体験」という一般人・栩原さんにサクラを10日間貸し出し。一充電あたりの走行距離180km(WLTCモード)のサクラとのカーライフをうそ偽りなく報告してもらいました!
 

栩原拓士

10日間サクラを使って検証した人

栩原拓士さん

千葉県千葉市在住、都内でアパレルの企画やデザイン、パターン(型紙)の作成などを行う会社を経営する。寝ても覚めても車のことばかりを考えているタイプの車好きではないですが、職人的な資質が必要な「パタンナー」という職業柄、モノの良し悪しに対するこだわりは強い。現在の愛車はフォルクスワーゲン ゴルフ(7代目)。車は日々の通勤と週末の買い物やレジャーに使う。

栩原さんにはサクラの「Gグレード」を10日間お貸し出し。

基本的には4基ある自宅マンションの普通充電器を使ってもらい、平日の通勤や週末のお出かけに使ってもらいました。
 

車種 ▲検証に使用したサクラ。赤と黒のツートーンがスポーティな雰囲気

1日目 サクラさん初めまして

あらためまして、サクラを10日間乗らせてもらった栩原です。平日は千葉市の幕張から都内まで電車、たまに車で通勤し、休日は家族&愛犬と外出をして遊ぶという生活をしています。

自宅から会社までは車だと45分くらい。普段は電車通勤が多いのですが今回はせっかくなので車通勤をメインに10日間過ごしました。

初日の車両の引き渡しの際に編集部から、各機能や操作方法についてレクチャー。普通に使う分には普段乗っている車との大差はなさそうなので安心しました。

見た感じの第一印象は、内外装ともにシュッとしていて清潔感があるなという感じです。

車種 ▲第一印象が◎だったサクラの内装

ただ、充電の手順や場所についてはまったくの未体験ゾーンなのでぶっちゃけ説明だけではなかなかイメージができません。最初のドライブは、受け渡し場所から会社まで一般道で10kmほどを走行。この時点でのバッテリーの残量は69%と表示されていました。

乗ってまず驚いたのが、静かなこととストレスのない加速性能。そして意外だったのが軽自動車らしからぬ乗り心地のよさ。私が普段乗っているフォルクスワーゲン ゴルフと比べても安っぽさはまったくなく、高級感すら感じるほど。それなのに車体がコンパクトで取り回しやすいという部分にすごく魅力を感じました。

アクセルペダルだけで加速と減速を調整できる「e-Pedal Step」も試してみましたが、こちらはカートみたいにキビキビ走れてなかなかご機嫌でした。
 

サクラ

終業後、近くで働いている娘をピックアップし、首都高の晴海インターから湾岸習志野インターまで高速道路で帰ることにしましたが、ここでもたまに乗るレンタカーのガソリン軽自動車とは比較にならない加速力に感心しちゃいましたね。

感覚的にはあっという間に制限速度に到達しますから。
 

サクラ

帰宅後は自宅マンションの充電設備で初めての充電。予約や利用料金の決済には「ユアスタンド」というスマホアプリを利用しました。

初めだけ操作にやや手間取りましたが、覚えてしまえばどうってことありません。この日は50km程度を走行し、バッテリー残量は69%から29%まで低下していました。
 

サクラ

2日目 サクラさんは背が高い

朝まで充電しバッテリーは満タンに。料金は1200円でした。

サクラを充電スタンドから普段駐車しているタワーパーキングへ移動しようと思ったのですが、サクラは全高が1.55mを超えるため、ここには停められないことが発覚……。今後は来客用駐車場を利用することになりました。古いタワーパーキングを利用するときは要注意です。

この日は娘と一緒に近所で開催されるドッグイベントへ参加しましたが、かさ張るペットカートを楽々収容できることにびっくりでした。

ラゲッジスペースに関しては、リアシートを立てた状態で折り畳み自転車を積むこともできます。「1~2名+荷物」という使い方が多い私のライフスタイルでは必要十分な容積ですね。

愛犬も広い室内で終始ご機嫌でした!
 

サクラ

午後はショッピングをして帰宅。試しに駐車操作支援システム「プロパイロット パーキング」(※)を使って車庫入れをしてみました。

うたい文句のとおり、ハンドル操作なしにバシッと枠内にちゃんと駐車できて感動モノです。便利かつ、未来的な体験としての面白さがありました。僕より駐車うまいかも!
 

サクラ

3~4日目 ちょっと攻めて、電池残量20%以下を体験してみた

3日目は土曜日。サクラで休日出勤。この日は充電を行わず。翌日、日曜日の朝の段階でメーターにはバッテリー残量が28%、航続可能距離46kmと表示されていました。会社までは30km強の距離なので、計算上は問題なく行けるはずと高速道路を利用することに。

バッテリー残量が20%になったところでメーターに「バッテリー残量低下 充電してください」という警告メッセージが大きく表示されたのでハラハラしますが、事前に「サクラのバッテリー残量計はとても正確」と聞いていたので、その言葉を信じて走り続けました。

その結果、15%の余裕を残し、会社近くのEV充電スタンド(普通充電器)付きコインパーキングへ。

サクラ

ここの駐車場では3時間までしか充電ができないらしく帰路が不安でしたが、仕事を終えてサクラに乗り込むと、バッテリー残量48%、航続可能距離78kmとの表示。これならば何の不安もなく通勤で使い続けられそう。

また、ラゲッジルームの容量が思いのほか広かったので愛用の折り畳み自転車を載せてみたところピッタリ収まりました。これで充電のために少し離れた駐車場に入れても、自転車移動も可能に。都会の真ん中を自転車で走るのも気持ちいいものです。

帰宅後は自宅マンション駐車場で4時間の充電を行い、バッテリー残量83%、航続可能距離129kmまで回復しました。
 

サクラ

5~7日目 プロパイロットの使いやすさに感激。雨の日も快適

月曜日の朝、通勤中の高速道路で初めて先進運転支援システム「プロパイロット」を(※)使用してみました。

私が所有する車にも中身の差はあるものの「アダプティブクルーズコントロール(ACC」や「レーンキープアシスト」などの先進運転支援システムが装備されています。機能的にはそれほど大きな違いはないのですが、サクラの方が操作がシンプルです。

こういう便利な先進機能こそ誰でも直感的に扱えた方がいいですよね。感心しちゃいました。この日は残量59%、航続可能距離91km。

6日目の火曜日、急速充電を試してみようと、会社近くの急速充電器のあるコインパーキングをナビで検索。都内ってかなりの数があるんですよね。が、現地に着いたところなんと故障中!

仕方がないのでいつもの駐車場に停めて3時間の普通充電を行い、残量53%、航続可能距離88kmまで回復。バッテリーに余裕があったので大丈夫でしたけど、アテにしていた、充電器が使えないと焦りそうですよね。充電器が少ないエリアの場合は、周りの台数や場所を考慮しておいた方が良さそうだなと思いました。

サクラ

水曜日は朝から自宅マンションで充電を行い、残量60%、航続可能距離95kmに。初めて雨天での使用でしたがフロントウインドが大きく、ワイパーも広範囲を拭き取ってくれるので、雨でも視認性はすこぶるいいです。

サクラはEVとしての先進性だけではなく、まず車としての基本がしっかりしているなあという印象でした。
 

8~9日目 通勤だけなら不便なし不満なし

会社近くの駐車場と自宅マンションの充電でバッテリーは満タン。残量99%、航続可能距離143kmと表示されました。この日も通勤往復で使用。翌日は娘を東京駅へ送ってから出勤。

会社に到着したときには残量48%、航続距離79kmと半分近くまで減りますが、仕事中に3時間充電を行えば残量64%、航続可能距離98kmまで回復します。通勤用途だけなら、サクラのバッテリー容量はまったく問題なさそうです。
 

サクラ

10日目 お別れ前にあえて窮地に身を置く

お付き合い10日目ともなると少しずつ自信がついてきたので、自分の気持ちがどうなるか実験するためにあえてギリギリまでバッテリーを使って走ってみることに。

残り20%になると警告が出てプレッシャーを受けますが、ナビ画面で現在の航続可能距離でたどり着ける充電スポットを検索できるんですね。これはかなり心強いです。正確なバッテリー残量計と相まって最終的に残り9%まで走ることができました。

サクラ

「EVだから困った…」ということはなかった

さて、10日間の総括です。結論、日常使いで何の問題もなく使えました。

自宅と会社の往復(片道30㎞強、通勤時間45分)と、近場のレジャー利用であれば困ることはありません。バッテリーを99%までチャージして航続可能距離が143km。数値だけ見ると、もう少し距離を走れるといいなというのが率直な印象ですが、通勤がメインだった10日間では不便はなかったです。

1度だけコインパーキングの急速充電器が故障していてアテが外れましたが、首都圏であれば近隣に多くの充電スポットがありますし、そもそも急速充電を体験してみたくてあえて自宅充電をしていなかった日。普通に使っている分には「電池ギリギリでドキドキ」という状況はこないと思いました。

自宅マンションの充電設備もまだ利用者が少ないためか、自分のタイミングで充電できないといったこともありませんでした。夜間の間に満タンになっているので、ガソリンスタンドに行く手間が省けるのがいいですね。

さらに実際に所有したことを考えると、維持や運用コストは各段に下がると思います。軽自動車なので税金も高速代も安いですから。これで中古車だと総額150万円くらいから購入可能なんですよね。はっきり言って欲しいです!

サクラはそもそも車の作りがイイ

「充電に関するコト」という点を抜きにすると、最も印象的だったのは高級感のある乗り味ですね。エンジン由来の音や振動がなく、静粛性が高いというのはあらかじめ予測してましたけど、ここまで車体がガッチリしていて走行感がスムーズとは思いもしなかったです。

ファブリックが張られたインテリアの質感も高く、運転するのがすごく楽しい。

ラゲッジスペースが広く、自転車やアウトドア用品も楽々積み込めるので、僕のように外遊びが好きな人でも不便なく使えるんじゃないでしょうか。

サクラ

日産サクラと栩原さんの10日間、いかがだったでしょうか? 軽自動車でEV特有の上質な走りを実現したサクラの魅力を堪能したようです。レポートのとおり、20kWhという限られたバッテリー容量をどう活用するかはオーナーのライフスタイルと工夫次第。

まずは、一度ご試乗をオススメします!

▼検索条件

日産 サクラ(初代) × ディーラー物件 × 全国
※日産公式サイトに遷移します。
提供/日産自動車株式会社
文/佐藤旅宇 写真/柳田由人

※運転支援機能のため、機能には限界があります。路面や天候等の状況によっては作動しない場合があるため、機能を過信せず安全運転を心掛けてください。詳しくは店頭又はwebサイトをご確認ください。
佐藤旅宇

ライター

佐藤旅宇

オートバイ専門誌や自転車専門誌の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はボルボ C30と日産ラルゴ・ハイウェイスターの他、バイク2台とたくさんの自転車。この2年で5台の車を購入する中古車マニア。