ルノー カングー▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!

自然体。これこそがカングー最大の魅力

今回は、「アニバーサリー」で出合ったルノー カングーについて、テリー伊藤さんに語りつくしてもらいました。

~語り:テリー伊藤~

1997年に発表され、2002年から日本にも正規輸入されたカングー。

カングーが日本に上陸したとき、今のようなブームになることを誰が予想したでしょうか。

当時、カングーは車雑誌ではあまり取り上げられませんでしたが、カメラマンさん、スタイリストさん、花屋さんなど感度の高い人が飛びつき、やがてファッション誌の表紙を飾るまでになりました。

しかもカングーは、オシャレさを強調していないのがいいですよね。あくまで実用的で、利便性を追求した結果、「これに乗ると素敵な暮らしができそうだ」と思わせてくれる

ルノー カングー
ルノー カングー▲5ナンバーサイズの扱いやすさ、そしてユルイ雰囲気が、ライフスタイルにこだわる人から支持されました

ちょうどカングーが発売された頃、日本でも「自分らしい生活にこだわろう」と多くの企業がライフスタイル提案型の製品を市場に投入しました。でも、ほとんどが失敗に終わっています。

僕はそれらが失敗した理由を、企業側の押しつけを消費者が見抜いたからだと感じています。

「バカにするなよ! ライフスタイルと言っているけれどお前たちの戦略だろう」とね。

その点、カングーには押しつけ感が一切ない。

僕も初めてカングーを見たとき、すごく新鮮な気持ちになりました。外観はもちろん、運転席や荷室の天井に収納スペースがあるのも生活にしっくりなじむ家具のようで好感がもてます。

「やっぱりフランスのカーゴは日本の商用車とは一味違うな」と思ったのを覚えています。

ルノー カングー
ルノー カングー▲フルゴネットらしく車内には多くの収納が

カングーは日本にライバルが存在しない、独特の立ち位置です。

日産のNV200やホンダのN-VANが同じようなポジションに行けるかもと思いましたが、やはり難しかった。

僕は車のオシャレさを計るとき「代官山の蔦屋書店に似合うか」を基準にしています。カングーは蔦屋がよく似合います。

かつては高級車に乗る人がもてはやされましたが、今は人々の価値観が変わって高い輸入車に乗っていると冷めた目で見られるケースが増えたように思います。

「なんでそこにお金を使うの?」「だったら旅行とかもっと楽しいことにお金を使えばいいのに」ってね。

安いというのは、それだけで正義なんですよ。

車の場合、その境界線が300万円だと感じています。

カングーは、そんなオシャレで新しい感性をもった人のライフスタイルにハマったのでしょう。

ルノー カングー▲オシャレにしてやろうと狙っていないのがいいんですよ。カングーは蔦屋がとても似合います

テリー伊藤ならこう乗る!

今回出合った初代カングーは、5ナンバーサイズというのも大事なポイントです。

現行型は、欧州規格のパレットが積めるようにとボディサイズがかなり大型化しました。

カングーに限らず、ミニ、ポロ、そしてレガシィやカローラといった国産車も3ナンバーになってしまいました。まさに「ブルータス、お前もか」という感じです。

もちろん、衝突安全性をはじめとする各種レギュレーションに合わせるためには仕方のないことです。でも車がどんどん大きくなる時代だからこそ、あえて5ナンバーサイズで踏ん張っているのはカッコいい気がしますね。

今後手頃なサイズ感の車に乗りたいと思ったら、中古車しか選択肢がなくなるかもしれません。

今回の物件は相場的にはやや高め。その分、とてもキレイで走行距離も少ない。

カングーは人気があるため中古車相場はなかなか下がりません。それでも最近は、多くの中古車が100万円以下で見つかるようになりました。

ただ、安いカングーの中にはエンジンの熱でボンネットが焼けて塗装が落ちてしまっていたり、シートに破れが出始めているものもあります。

コアなファンは「それもひとつの味」と捉えてヤレ感を楽しんでいるそうですが、僕はキレイな状態で乗りたいので、アニバーサリーが扱うような、状態のいいものを選びたい。

ルノー カングー
ルノー カングー▲今回出合ったカングーは内外装ともにかなりキレイ

色は今回見た赤や黄色が人気です。僕ならそこはあえて外して、淡いグリーンに乗ります。

実は近所に新築の家があって、駐車場に淡いグリーンのカングーが止まっています。

もうね、できすぎなくらいいい雰囲気を醸し出しているんですよ。きっとクリスマスには玄関にリーフを飾ったり、自宅でイルミネーションを楽しんだりするのでしょう。僕もそんな幸せな雰囲気を楽しみたい

初代にこだわって長く乗りたい人は、低走行でボディもキレイな中古車が狙い目ですよ!

ルノー カングー▲こういう車に長く乗るのは楽しいもの!

GO OUTが好きで、オシャレなアウトドアライフを楽しむ人にカングーがハマるのは言うまでもありません。でも僕は、あえてカローラなどを選ぶ普通のおじさんに乗ってもらいたい。

きっと好感度が上がるし、暮らしもガラリと変わるでしょうからね

ルノー カングー▲シンプルで味のあるインパネ
ルノー カングー▲意外に思うかもしれないですが、カングーは走らせても楽しいモデルです
ルノー カングー▲シートバックテーブルはアウトドアでも活躍します

ルノー カングー(初代)

フランスでは“フルゴネット”と呼ばれる乗用車の後ろ側に大きな荷箱が与えられた貨物用途のモデルで、郵便車両として使われている。初代カングーのボディサイズは全長4035mm×全幅1675mm×全高1810mmというコンパクトで背の高いモデルで、両側スライドドアになるためミニバンのような利便性を兼ね備えている。日本導入当時は1.4Lエンジンでリアドアがはね上げ式だったが、2003年式から1.6Lになり観音開きタイプも導入された。台数は少ないが、キャンバストップが付いたものやMT車も流通している。
 

文/高橋満(BRIDGE MAN) 写真/柳田由人

テリー伊藤

演出家

テリー伊藤

1949年12月27日生まれ。東京都中央区築地出身。これまで数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在『サンデー・ジャポン』(TBS系/毎週日曜9:54~)、『爆報! THEフライデー』(TBS系/毎週金曜19:00~)、他に出演中。単行本『オレとテレビと片腕少女』(角川書店)が発売中。現在は多忙な仕事の合間に慶應義塾大学院で人間心理を学んでいる。You Tubeチャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』も要チェック!