メルセデス・ベンツ Sクラス▲車好きにとっての終着点。それがセダン。最もオーソドックスなスタイルにして、最もバリエーションが豊富なセダンの中から名車たちを紹介。今回はABSや助手席エアバッグなどを世界で初めて採用した歴史をもつなど、世界トップクラスの先進性と安全性を兼ね備えるラグジュアリーセダン、メルセデス・ベンツ Sクラスを取り上げる

絶版モデルでさえいまでも選べるレアなロングセラーモデル

2021年1月、7世代目となる新型メルセデス・ベンツ Sクラスが発表された。メルセデスのフラッグシップモデルであるSクラスのルーツは、1950年代のモデルにまでさかのぼるというが、正式にSクラスと名付けられたのは、1972年に登場したW116型だ。ちなみに、SはSuperの略といわれている。

メルセデス・ベンツがすごいのは、この初代Sクラス以前のフラッグシップモデル、通称フィンテール(日本ではハネベン)と呼ばれるW111型や、モータースポーツで活躍した300SEL AMG 6.8のベースとなったW109型などがいまも中古車市場に流通していること。

メルセデス・ベンツは1952年、当時ヤナセの子会社であったウエスタン自動車によって日本への輸入が始まっているが、ヤナセとウエスタン自動車、両社の充実したサービス体制によって、導入開始から約70年が経過したいまも、こうしたヘリテージモデルが現在へと大切に受け継がれているのだ。
 

メルセデス・ベンツ Sクラス W111▲Sクラスの前身であるフィンテールことW111型。特徴的なリアのフィンテールは当時のアメ車に影響されたもの
メルセデス・ベンツ Sクラス W116▲初めてSクラスという名前が付いたW116型。2.8L直6や4.5L V8だけでなく当時最大級の6.9L V8エンジンを搭載し、乗客保護の装備も多数用意されていた

現代でも通用する確かな品質、12年間製造された王道モデル

メルセデス・ベンツ Sクラス W126▲高価化も高品質をアピールした王道モデル。Sクラス史上最も累計販売数が多いモデルであり、当時日本ではバブル期だったこともあって、年式の割に流通量は比較的豊富

1980年には、2世代目となるW126型がデビュー。標準ボディのSE、ロングボディのSEL、またクーペ仕様などもあった。1991年まで長期にわたって生産されていたことと、当時の日本がバブル経済真っただ中ということもあって、5.6L V8エンジンを搭載した上位グレードである560SELなどが人気を博した。大事にされてきた車両が多く、いまでも比較的安価に程度のいいものが見つかる。
 

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メルセデス・ベンツ Sクラス(1980~1991年) × 全国
 

熟成されたスクエアデザインをもつ、最後の"オーバースペック"モデル

メルセデス・ベンツ Sクラス W140▲ダブルウィッシュボーンサスや車高調整機能などを備えるW140型。V12エンジンを搭載したモデル600SELをラインナップするなど、最後のオーバースペックモデルといわれている

1991年に登場した、3世代目となるW140型はきゃしゃだったW126から一転、大きく重く重厚なボディスタイルとなった。この世代よりV12エンジン搭載モデルもラインアップに加わった。中古車市場では100万円台の予算でも程度のいいものが見つかる。
 

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メルセデス・ベンツ Sクラス(1991~1998年) × 全国
 

丸みを帯びてサイズダウン、エレガント系準レトロモデル

メルセデス・ベンツ Sクラス W220▲先代W126型からボディサイズは絞ったものの、居住空間の広さは大幅に向上したのがW220型。また、Sクラス初となる4MATIC(四輪駆動システム)が採用されたモデルでもある

1998年には、4世代目のW220型にモデルチェンジ。先代からはひと回り小さく、エクステリアの威圧感を抑えたエレガントなデザインとなった。後期型では、当時世界初となる7速ATを搭載している。この世代の中古車は流通量も多く、100万円以下のものも多数。ただし、エクステリアなどを改造した物件も多く、程度の見極めには注意を。
 

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メルセデス・ベンツ Sクラス(1998~2005年) × 全国
 

巧みな曲線デザインでSクラスらしい優雅さを磨き上げたモデル

メルセデス・ベンツ Sクラス W221▲メルセデス・ベンツで初めて衝突回避ブレーキを含むプレセーフ概念を取り入れたW221型。コラムシフトやコマンドシステムを搭載するなど一気に近代化したモデルとも言える

2005年、5世代目のW221型へとモデルチェンジ。ボディサイズは再び拡大され、抑揚のあるデザインとなった。この世代の中古車も100万円台で多く見つかるが、W220型と同様にエクステリアに手を加えられた物件が多く流通している。250万円くらいの予算があれば、後期型フルノーマルの程度良好なものも見つかる。

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メルセデス・ベンツ Sクラス(2005~2013年) × 全国
 

先鋭ルックスにハイブリット仕様と、一気に現代化した先代モデル

メルセデス・ベンツ Sクラス W222▲全車LEDのヘッドライトを装備。また、ステレオカメラで路面状況を認識し、サスペンションの減衰力を自動調節するマジックボディコントロールを新たに採用

2013年には、6世代目のW222型がデビュー。この代よりヘッドライトがLEDになった。また、3.5L V6+モーターの「S400ハイブリッド」、2015年には、2.2L 直4ディーゼル+モーターの「S300h」とハイブリッドモデルの国内導入が開始されている。この日本市場初のディーゼルハイブリッド車は、小排気量ながら500N・mものトルクを発揮。モーターのアシストもあってSクラスらしくスムーズな走りを実現するとともに、燃費は20.7km/L(JC08モード)を達成している。

2017年8月以降の後期型では、最新の9速ATが搭載され、さらにエネルギー効率を高められた。中古車市場では4.7L V8を搭載したS550とS400ハイブリッドが豊富。S300hは走行距離が多めの物件率が高いので、整備履歴のはっきりしたものを選びたい。
 

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メルセデス・ベンツ Sクラス(2013~2020年) × 全国
 

Sクラスは、いつの時代もその時点における最新の技術を採用してくる、世界の高級車の指標となるモデルだ。中古車であってもそのすごさは健在。Sクラスがもつ高級感という本来の性能を味わうためには、品質状態にこだわった物件選びをしたい。
 

必見!2021年発売の最新モデルが早くも中古市場に

メルセデス・ベンツ Sクラス W223▲今年発売した最新のSクラスには、個人を識別する指紋認証やAI音声操作を可能とした最新のMBUXシステムを搭載。また、全車に4MATICと後輪操舵を採用することで小回りと走りを格段に向上させている

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メルセデス・ベンツ Sクラス(2021年~)× 全国
 
文/藤野太一、写真/ダイムラー