【名車試乗】トヨタ セリカ 1600GT(TA22型)|半世紀の月日を感じさせないカッコよさ! 乗るとすぐに当時の記憶がよみがえってくる
2024/11/19
コンディション良好なダルマセリカ
初代トヨタ セリカ・TA22に乗るのは38年ぶりだろうか。
私事だが昔、通称“イナゴ”と呼ばれる1750㏄にスープアップされた名機2T-Gを載せたセリカ1600GTVに乗っていたことがある。
そして今回は、「株式会社KINTOの展開する旧車コミュニティである「Vintage Club by KINTO」でレストアされた、セリカ1600GTに試乗する機会をいただいた。
グレードこそ私が乗っていたモデルとは異なるものの、一目見た瞬間に当時の思い出がよみがえってくる。とても懐かしい。
その丸みを帯びたフォルムから、通称“ダルマ”と呼ばれていたモデルだが、ボディはきれいに塗装されており、コンディションは良さそうだ。細かな板金修理を施しているストレートボディである。
ドアの立て付けも悪くはないが、もう少しチリを合わせるとさらに良くなるだろう。
クロームメッキ類は、新車のときよりも良いのではと思えるほど美しく輝いている。
テールランプが2つに分かれているタイプなので、72年以降の後期モデルであることがわかる。
フロントとリアに取り付けられた筆記体の「GT」エンブレムも、なかなかいかしたデザインだ。
とにかくパッケージングはギュッと凝縮したデザインで、半世紀の月日を感じさせないほど素晴らしい。
エンジン始動の“儀式”を経て操る喜び
エンジンルームをのぞけば、そこにはDOHCの2T-Gが収まっている。2T-Gはトヨタが設計したOHVの2Tハイカムユニットに、ヤマハが設計したツインカムヘッドをセットアップして完成させた。
半球型の燃焼室は、パフォーマンスの高いエンジンの象徴だった。
またツインチョークのミクニソレックスと、効率の良さそうな通称“タコ足”と呼ばれるエキマニもエンジンルームを引き立たせる。
ダイヤフラムポンプが内蔵されているキャブレターが、高性能エンジンの証しである。
このようなエンジンに火を入れるときには“儀式”がある。特に冬場はエンジンのかかりが悪いので、チョークを引いて濃い燃料をシリンダーに入れる。もしくはアクセルを2回ほどダブって、濃い燃料を強制的に入れてエンジンを始動したものだ。
スポーツシートを調整して、エンジンを始動する。
スターターの回りがやや重いが、これは点火時期が少々早めのせいであろう。余談だが点火時期を早くする方が、高回転への移行のレスポンスがいい。
アイドリングは高めだが、エンジンの調子はすこぶる良好だ。ラリーにレースに、数々の伝説はこのエンジンから始まったのである。
専門的な話になるが、このセリカのミッションには、ポルシェタイプのサーボシンクロが採用されている。
このタイプの5速MTは、ストロークがやや大きめだが強力なシンクロでスパッと決まるのが特徴だ。このフィールで、当時の記憶が一気によみがえる。
年季が入っているが、シフトノブもオリジナルであろう。
いざ発進してみると、とても運転しやすい! 軽快でコーナーのターンインも楽しめる。
フロントのマクファーソンストラットサスは、しなやかにダンピングを抑制して乗り心地もいい。
リアはリジッド式だが、アライメント変化がなくこれまた安定感がある。AE86まで使われていた理由がわかるサスペンションと駆動形式だ。
どうやら後付けのクーラーも装着されていて少々の暑さならば凌げそうだが、キャブレターには昨今の日本の夏の暑さは厳しいだろう。
少し回転を高くしてカムが乗ってくる回転域まで回してみると、吸気とエンジンの音色が変わる。
「ここを使ってワインディングを走らせたい!」との衝動に駆られる。
いわゆる“重ステ”と呼ばれるステアリングは慣れが必要だが、少し細めのタイヤを装着すればかなり良くなるのではないかと感じた。
併せて、クラッチは減りを考慮して調整すると、さらにフィールが良くなりそうだということは申し上げておこう。
エンジン始動の儀式を経て、少し慣れの必要な車を操る喜びは、現在の車では決して得られない。そして、そこにカッコよさがあるのだ。
ぜひ、自在に乗りこなしてみてほしいと思う。
自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。
ダルマセリカをはじめ、往年の名車に乗れるサービス
「Vintage Club by KINTO」では、様々な往年の旧車を借りられるサービスを展開している。各車両の整備はトヨタ自動車やレストアを手がける新明工業が行う。
レンタルできるモデルは下記サイトを参照。
セリカ 1600GTについては、現在埼玉キャラバンとして、次の各トヨタディーラーにてレンタルを行っている。
11/6(水)~12/14(土):埼玉トヨタ株式会社 秩父店(埼玉県秩父市大野原1276-1)
12/19(木)~’25/1/31(金):埼玉トヨタ株式会社 杉戸店(埼玉県北葛飾郡杉戸町杉戸2503)
詳細、レンタルの予約は下記のリンクより。
また、今回のセリカ1600GTについては、上記レンタル期間終了後にVintage Clubを卒業することが決まっており、大切に乗り継いでくれる次期オーナーを募集している。
2024年11月25日(月)23時59分まで、下記のURLから申し込み可能なので、興味がある方はぜひチェックしてほしい!
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