シボレー コルベット E-Ray▲ミッドシップスポーツへと進化した現行型に追加されたハイブリッドモデル。前輪をモーター、後輪をエンジンで駆動させるeAWDを搭載、ハイブリッドとAWDはコルベット初となる

多種展開するミッドシップに追加された電動化モデル

コルベットがミッドシップになった! と驚いたのもつかの間、今度はついにeAWDときた。今回の主役、E-Rayだ。その前に今どき剛毅なNAのV8フラットプレーンDOHC搭載Z06も日本市場へ投入されているし、先ごろはZ06用V8をツインターボ化してオーバー1000psを誇るZR1も発表された。社長自らステアリングを握り最高速度375km/hを記録し話題をさらった。

まだある。ZR1用エンジンにE-Ray用電気モーターフロントアクスルを加えた超弩級のハイブリッドグレード“ゾラ”も準備されているという噂。こちらは1200psを超えてくるらしい。もちろんフル電動モデルの可能性も残されている。

アメリカを代表するスポーツカーのパワートレイン選びは今や古典(OHVやNA)に最新(HV)にと、もうやりたい放題。ミッドシップスーパーカー界においてこれほどアグレッシブなグレード展開を見せるブランドは他にない。

そもそも8代目へとフルモデルチェンジする際、反対派も多かったというのに伝統のフロントエンジン・リアドライブを諦めてリアミッドシップとした時点で、パワートレインのマルチ化は容易に想像できた。否、むしろ、そのためのリアミッド化であった。

レース活動やパフォーマンスアップのため、というわかりやすい理由もさることながら、将来の電動化を見据えてバッテリーのような重量物を配置しやすいミッドシップレイアウトを採用したともいえる。そのことは最新のリアミッドシップカーに PHVモデルが多く、マセラティのように電動化を見越してリアミッドを新規投入したブランドがあることからも明らか。

それにしてもGMシボレーはどうして、さほど大きくないミッドシップのスーパーカー市場でここまで張り切れるのだろう? 答えはシンプル。相手はリアッドシップのスーパーカー市場ではなく、シボレー コルベット スティングレイというユニークなマーケットだから、だ。

コルベットは多いときで5万台以上、モデルチェンジの谷間を除けば少ないときでも2万台以上、年間で売れてきた。もちろんほとんどがアメリカ市場だ。数字が示す絶対的な自信とリサーチがミッドシップ化を促し、熱心なファンからの変わらぬ支持も得て成功を確信した結果、今度こそ真のグローバルプロダクトを目指すべくパワートレインの多種展開を図っている、とも取れる。
 

シボレー コルベット E-Ray▲専用チューンされたZERパフォーマンスサスペンションやカーボンセラミックブレーキを装着。ドライブモードには、最大で約4.8~6.4kmのEV走行(上限速度約72km/h)が可能なステルスモードが備わる
シボレー コルベット E-Ray▲ボディサイドにはE-Rayのエンブレムが備わる。日本には右ハンドルの最上級グレードである3LZが導入された

グランドツアラーとハンドリングマシンの両立

正直に言って、C8コルベットの完成度はどのモデルも高い。その代わり、歴代モデルがもっていたいかにもアメリカンスポーツらしい迫力に欠けるきらいがある。V8OHVを積みつつも+フロント電気モーター駆動としたE-Rayもまた、さらっと流して乗る分には扱いやすく、極めてフツウな乗用車感覚が勝っていて、ドキドキしなかった。

街中ではとにかく従順で、スーパーカーとしての迫力には欠けている。とにかく静かで洗練されたドライブフィールだ。ハンドリングは落ち着き払っていて、加速は十二分、快適なクルージングに徹するあたり、スポーツカーというよりもグランドツーリングカーといった方が良さそう。早朝、家のガレージを静かにスタートできる点も嬉しい(ちょっとした段取りが必要だけれども)。高速道路でのクルージングに至ってはさすがアメリカの伝統的なスポーツカーだ、大型クルーザーのようなグランドツアラーぶりである。

E-Rayがスポーツカーに豹変することなどあるのだろうか? 半信半疑で峠道にノーズを向けてみれば、これが素晴らしいハンドリングのスポーツカーに早変わりした。信じられないくらい自由自在にノーズが動き、コーナーでは驚異の踏ん張りを見せ、圧倒的な加速で立ち上がっていく。ヨーロッパ生まれのミッドシップPHVと比較しても遜色のないダイナミックパフォーマンスを見せた。
 

シボレー コルベット E-Ray▲最高出力502psの6.2L V8自然吸気エンジンで後輪を、162psのモーターで前輪を駆動。システム総合出力は664psとなる

アメリカンマッスルという言葉に代表されるアメ車の魅力といえばワイルドさ、しかもどこか融通の利かない感じが先にたつ。ところがどうだ。新型コルベットはキャラの選択肢も多く、完成度も高くて、おおむね従順だ。ミッドシップ化というドラスティックな変化だけを抽出すれば、なんだか歴史無視の乱暴なコンセプト変更にも思えたけれど、中身はやはり戦略的で、純アメリカンからの脱却さえうかがえる。それでいてアメリカ市場でも引き続き人気なのだ。

コルベットはアメリカの車好きにとって、シンボルでありソウルカーだ。そんな大切なモデルであっても未来を見据えた大胆なチェンジもいとわず、しかも既存のオーナーをも満足させている。スポーツカーとは何か、趣味の車とは何か、を、これほど多弁に語ってくれるモデルは他にないと思った。
 

シボレー コルベット E-Ray▲フロントインテークなどのアクセントパーツをボディ同色とし、デザインのまとまり感を高めている
シボレー コルベット E-Ray▲E-Ray専用デザインのパールニッケル鍛造アルミホイールを装着
シボレー コルベット E-Ray▲3LZではインテリアにマイクロファイバーやレザーなどを用い上質感を高めている。なお、フロントとリアのラゲージ容量は約355Lと、他グレードとほぼ同様のサイズを確保した
シボレー コルベット E-Ray▲日本仕様にはGT2バケットシートを標準装備
文/西川淳 写真/タナカヒデヒロ

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。

シボレー コルベット(現行型)の中古車市場は?

シボレー コルベット(現行型)

アメリカンスポーツを代表するコルベットの8代目となる現行型は、伝統のFRからミッドシップレイアウトに変更。6.2L V8エンジンをリアミッドに搭載、戦闘機やレーシングカーをモチーフとしたキャビンフォワードなスタイルとなる。リトラクタブルハードトップを備えたコンバーチブル、5.5L V8DOHCエンジンを搭載するハイパフォーマンスバージョンのZ06などをラインナップする。

2024年12月下旬時点で、中古車市場には60台程度が流通、支払総額の価格帯は1150万~2600万円となる。コンバーチブルは30台程度が流通しており、1300万~1700万円。
 

▼検索条件

シボレー コルベット(現行型)× 全国

▼検索条件

シボレー コルベット コンバーチブル(現行型) × 全国
文/編集部、写真/阿部昌也

【試乗車 諸元・スペック表】
●E-Ray 3LZ 4WD

型式 - 最小回転半径 -m
駆動方式 4WD 全長×全幅×全高 4.68m×2.03m×1.23m
ドア数 2 ホイールベース 2.73m
ミッション 8AT 前トレッド/後トレッド 1.68m/1.62m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
4WS - 車両重量 1810kg
シート列数 1 最大積載量 -kg
乗車定員 2名 車両総重量 -kg
ミッション位置 コラム 最低地上高 -m
マニュアルモード
標準色

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オプション色

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掲載コメント

※2024年モデル 15台限定

型式 -
駆動方式 4WD
ドア数 2
ミッション 8AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 -
オプション色 -
シート列数 1
乗車定員 2名
ミッション
位置
コラム
マニュアル
モード
最小回転半径 -m
全長×全幅×
全高
4.68m×2.03m×1.23m
ホイール
ベース
2.73m
前トレッド/
後トレッド
1.68m/1.62m
室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
車両重量 1810kg
最大積載量 -kg
車両総重量 -kg
最低地上高 -m
掲載用コメント ※2024年モデル 15台限定
エンジン型式 LT2 環境対策エンジン -
種類 V型8気筒OHV 使用燃料 ハイオク
過給器 - 燃料タンク容量 70リットル
可変気筒装置 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 6156cc 燃費(WLTCモード) -
燃費基準達成 -
最高出力 502ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
637(65)/5150
エンジン型式 LT2
種類 V型8気筒OHV
過給器 -
可変気筒装置
総排気量 6156cc
最高出力 502ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
637(65)/5150
環境対策エンジン -
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 70リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) -km/L
燃費基準達成 -