アルピーヌ A110▲2019年末に追加されることがアナウンスされた、アルピーヌ A110の最上位モデルA110Sに試乗する機会を得た。自動車テクノロジーライターの松本英雄氏が、その様子をレポートする

さらにスポーティさに磨きがかけられた“S”

1970年台に活躍した伝説のラリーマシン、アルピーヌ A110。

その名称を継承し2018年に復活を遂げたニューアルピーヌ A110。ピュアモデルには、デビュー後間もなく富士スピードウェイと公道で試乗していた。

少し上から目線のコメントにはなってしまうが、とにかく“申し分のない”パッケージングだと感じた。


A110にはいくつかのグレードがラインナップされている。

後日あらためて試乗したA110 リネージは、ブラウン系のレザーで仕上げられたノーブルなインテリアとシートのマッチングが非常に良く、座ってすぐに質感の高さを感じさせるものだった。

また、このリネージには、少し幅が狭い専用ホイールが装着されていた。

ドライビングにおいて鳴らした経験がある人ならば、きっと最高の前後バランスだと思えるに違いないセッティングになっていた。

そして、A110シリーズに新たに追加されたのが、今回試乗したA110S。

カーボンのルーフやスポーティな素材のシートを採用しているが、見た目はピュアモデルと大差がない。

しかし、このA110Sの真価は、表面的な部分ではなく、出力が40psも向上した点にある。

また、出力アップに合わせて、サスペンションとタイヤも専用にセッティングされているという。

今回の試乗の舞台は筑波サーキット。ハイパフォーマンスぶりを、存分に味わうことができそうだ。

A110Sのパフォーマンスをより理解すべく、A110ピュアと乗り比べることができたので、その様子をレポートする。


アルピーヌ A110 ▲こちらが新しく追加されたA110S。カーボンルーフや専用アルミホイール、ブレンボ製の大型キャリパーなどが特徴(写真は試乗したものと同型の撮影用車両)
アルピーヌ A110 ▲ちなみにこちらが以前試乗したピュアモデル

アルプスで鍛えられた開発ドライバーの限界を引き出すモデル

いきなり結論を申し上げて恐縮だが、2つのモデルを乗り比べた結果、個人的にはA110ピュアの方が気持ち良く思いどおりに走らせられると感じた。

ただし、それは決してA110Sが劣っているというわけではなく、それほどまでにドライバーを選ぶストイックなモデルだということだ。

A110Sのドライバーズシートに座ると、ポジションが低いことが良くわかる。これが、リアルスポーツカーの証しと言える。

1周目はゆっくりと回り、2週目から徐々にスピードを上げ、6割くらいのペースで第1コーナーを抜けていく。

以前乗ったA110ピュアよりも、ずっと軽快な雰囲気が漂う。次のヘアピンへと続くわずかなストレートで、一気に加速する。これは速い。

ヘアピンコーナーで強めにブレーキングしても、バランスを崩すことはない。

コーナリングフォースが高くしっかりと曲がっていくが、少し油断して速度を上げるとリアが一気に流れるような挙動を示す。

アルピーヌ A110 ▲限界は高いが、繊細なコントロールが求められる

パイロンを設置して設けられたシケインセクションでも、グイグイ曲がって行く。

高速コーナーでは一気にペースを上げたが、とても気持ち良いフィーリングだ。まさにタイムアップを狙ったセッティングと言える。

続けてサーキットで最もRのきついヘアピンへ向かい、フルブレーキング。

7速DCTのシフトプログラムは、ブレーキングでのスピードダウンを十分に踏まえ、最適なタイミングでシフトダウンを行なうように組まれている。

コーナリング出口での挙動に乱れはなく、ロングストレートに向かって一気に速度を上げることができる。

シフトダウンとブレーキでスピードをコントロールし、長い旋回の続く最終コーナーに突入。スロットル開度を一定に保ちながら走り抜ける。

コーナー出口では、コース幅を目いっぱい使って加速。最高のエグゾーストノートだ!

アルピーヌ A110 ▲とにかく速い。タイムアタックで記録を出すための車といった感じだ

その後、何周か試乗を続けたが、ブレーキング時にリアがスッと流れる場面があった。油断も隙もあったもんじゃない。

決してタイヤのグリップが高いわけではないので、慎重なステアリングとアクセル操作が必要になってくる。

ポテンシャルが相当高く、あっという間に速度がのってしまうからこそ、タイヤだけに頼るドライビングではこの車は操れないだろう。

車の動きをしっかり把握しながら、アクセル・ブレーキ・ステアリングをコントロールするスキルが求められるモデルであることは間違いない。

アルピーヌというメーカーは、果たしてどこまで本気で車のパフォーマンスを上げようとしているのだろう。

アルプスのワインディングロードで鍛えられた、アルピーヌの開発ドライバーの限界を試そうとしている。それほどまでにストイックなモデルであると感じた。

腕に覚えのあるドライバーには、ぜひ試していただきたい。

Sが付くか付かないかで、ここまで違いを感じさせる。

A110Sは、1967年のポルシェ 911と911Sのような雰囲気を感じ取れた、人間味あふれるリアルスポーツカーだ。

アルピーヌ A110
アルピーヌ A110
アルピーヌ A110
アルピーヌ A110
文/松本英雄、写真/尾形和美、篠原晃一

【試乗車 諸元・スペック表】
●A110S

型式 7BA-DFM5P 最小回転半径 5.8m
駆動方式 MR 全長×全幅×全高 4.21m×1.8m×1.25m
ドア数 2 ホイールベース 2.42m
ミッション 7AT 前トレッド/後トレッド 1.56m/1.55m
AI-SHIFT - 室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
4WS - 車両重量 1110kg
シート列数 1 最大積載量 -kg
乗車定員 2名 車両総重量 -kg
ミッション位置 コラム 最低地上高 -m
マニュアルモード
標準色

ブルーアルピーヌM、ブラン イリゼM

オプション色

グリ トネール マット

掲載コメント

※2020年2月9日23:59まで先行予約を受け付け中

型式 7BA-DFM5P
駆動方式 MR
ドア数 2
ミッション 7AT
AI-SHIFT -
4WS -
標準色 ブルーアルピーヌM、ブラン イリゼM
オプション色 グリ トネール マット
シート列数 1
乗車定員 2名
ミッション
位置
コラム
マニュアル
モード
最小回転半径 5.8m
全長×全幅×
全高
4.21m×1.8m×1.25m
ホイール
ベース
2.42m
前トレッド/
後トレッド
1.56m/1.55m
室内(全長×全幅×全高) -m×-m×-m
車両重量 1110kg
最大積載量 -kg
車両総重量 -kg
最低地上高 -m
掲載用コメント ※2020年2月9日23:59まで先行予約を受け付け中
エンジン型式 M5P 環境対策エンジン -
種類 直列4気筒DOHC 使用燃料 ハイオク
過給器 ターボ 燃料タンク容量 45リットル
可変気筒装置 - 燃費(10.15モード) -km/L
総排気量 1798cc 燃費(WLTCモード) 12.8km/L
└市街地:8.3km/L
└郊外:13.8km/L
└高速:15.8km/L
燃費基準達成 -
最高出力 292ps 最大トルク/回転数
n・m(kg・m)/rpm
320(32.6)/2000
エンジン型式 M5P
種類 直列4気筒DOHC
過給器 ターボ
可変気筒装置 -
総排気量 1798cc
最高出力 292ps
最大トルク/
回転数n・m(kg・m)/rpm
320(32.6)/2000
環境対策エンジン -
使用燃料 ハイオク
燃料タンク容量 45リットル
燃費(10.15モード) -km/L
燃費(WLTCモード) 12.8km/L
└市街地:8.3km/L
└郊外: 13.8km/L
└高速: 15.8km/L
燃費基準達成 -
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。